ホワイト500とは?認定要件・申請方法・メリットを完全解説

最終更新日:2025年9月29日

近年、企業の持続的な成長戦略として「健康経営」への注目が急速に高まっています。従業員の健康を単なる福利厚生ではなく、企業の生産性や価値向上に直結する重要な経営資源と捉えるこの考え方は、多くの企業で実践され始めています。その中でも、特に優れた健康経営を実践する企業として経済産業省から認定される「健康経営優良法人(大規模法人部門)」、さらにその上位500社のみに与えられる称号が「ホワイト500」です。

本記事では、企業の経営者や人事担当者の皆様に向けて、「ホワイト500」とは何か、その認定が企業にもたらす価値から、具体的な認定要件、そして申請に向けた実践的なポイントまでを網羅的に解説します。この記事を通じて、貴社の健康経営推進の一助となれば幸いです。

目次

ホワイト500とは?

健康経営優良法人認定制度の全体像

健康経営とは、「企業が従業員の健康保持・増進に取り組むことが、将来的に企業の収益性等を高める投資である」との考え方に基づき、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することです 。少子高齢化に伴う労働力人口の減少や、従業員の多様化が進む現代において、従業員一人ひとりが心身ともに健康で、いきいきと働ける環境を整えることは、企業の持続的な成長に不可欠な要素となっています。

この健康経営の普及促進を目的として、経済産業省が設計したのが「健康経営優良法人認定制度」です。本制度は、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を「見える化」し、社会的に評価することで、企業の取り組みを後押しするものです 。認定制度は、企業の規模に応じて「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2つの部門に分かれています。

部門対象特徴
大規模法人部門従業員数が一定規模以上の企業・団体上位500法人は「ホワイト500」として認定される
中小規模法人部門従業員数が一定規模未満の企業・団体上位500法人は「ブライト500」として認定される

ホワイト500の位置づけと目的

「ホワイト500」は、健康経営優良法人(大規模法人部門)に認定された企業のうち、健康経営度調査の結果が上位500位以内である企業に与えられる冠です。これは、数ある大規模法人の中でも、特に先進的かつ模範的な健康経営を実践しているトップランナーであることを示す、極めて栄誉ある称号と言えます。

ホワイト500の目的は、単に優良な企業を表彰するだけでなく、健康経営のロールモデルを社会に広く示すことにあります。ホワイト500認定企業の先進的な取り組みが他の企業にも波及し、日本全体の健康経営のレベルを引き上げ、ひいては国民の健康寿命の延伸や持続可能な社会の実現に貢献することが期待されています。

なぜ注目される?ホワイト500認定の3つの主要メリット

ホワイト500の認定は、企業に多岐にわたるメリットをもたらします。ここでは、特に重要な3つのメリットを解説します。

メリット1:企業価値とブランドイメージの向上

ホワイト500認定は、従業員の健康に配慮する「ホワイトな企業」であることの客観的な証明となります。これにより、企業のブランドイメージが向上し、顧客や取引先からの信頼獲得につながります。また、近年、投資家が企業の非財務情報を重視する「ESG投資」の流れが加速しており、健康経営への取り組みは、企業の持続可能性を示す重要な指標として評価されます。実際に、ホワイト500認定企業は株価パフォーマンスが良好であるという調査結果も報告されています。

メリット2:人材獲得競争力の強化と定着率の向上

労働力人口が減少する中、優秀な人材の確保は多くの企業にとって喫緊の課題です。求職者、特に若い世代は、給与や待遇だけでなく、働きがいや働きやすさを重視する傾向が強まっています。ホワイト500認定は、従業員を大切にする企業文化の証であり、採用活動において大きなアピールポイントとなります。また、従業員の心身の健康を維持・増進する取り組みは、エンゲージメントや満足度を高め、離職率の低下にも貢献します。

メリット3:生産性の向上と組織の活性化

従業員の健康状態は、仕事のパフォーマンスに直接影響します。健康経営への取り組みを通じて、従業員が心身ともに健康な状態を維持することで、集中力や創造性が高まり、組織全体の生産性向上が期待できます。また、欠勤率の低下や、出勤していても心身の不調で本来のパフォーマンスが発揮できない状態(プレゼンティーイズム)の改善にもつながります。これらの効果は、結果として企業の医療費負担の軽減や、業績向上にも貢献するでしょう。

ホワイト500の認定要件

ホワイト500の認定を受けるためには、経済産業省が実施する「健康経営度調査」に回答し、定められた基準をクリアする必要があります。ここでは、認定の鍵となる健康経営度調査の概要と、具体的な評価項目について詳しく解説します。

認定の鍵を握る「健康経営度調査」

健康経営度調査は、法人の健康経営の取り組み状況と、その経年変化を把握するための調査です。回答内容は詳細に分析され、各法人の健康経営のレベルを評価するフィードバックシートとして提供されます。この調査結果が、健康経営優良法人の認定、そしてホワイト500の選定における唯一の評価基準となります。

評価は、大きく分けて以下の5つの大項目で行われます。これらの項目は、健康経営を実践する上で不可欠な要素を網羅しており、それぞれに詳細な設問が設けられています。

1.経営理念・方針

2.組織体制

3.制度・施策実行

4.評価・改善

5.法令遵守・リスクマネジメント

ホワイト500を目指すには、これら5つの項目すべてにおいて高い水準で要件を満たすことが求められます。

【詳細解説】5つの評価項目と具体的な認定基準

ここでは、健康経営優良法人2025(大規模法人部門)の認定要件に基づき、5つの評価項目の具体的な内容と基準を解説します。

大項目主な評価内容認定要件(ホワイト500)
1. 経営理念・方針健康経営の戦略策定、社内外への情報開示、経営層の関与必須
2. 組織体制健康経営推進体制の構築、産業医・保健師等の専門家の関与必須
3. 制度・施策実行従業員の健康課題に応じた具体的な取り組みの実施(生活習慣病、メンタルヘルス、女性の健康等)必須2項目+13項目以上
4. 評価・改善取り組みの効果検証と、それに基づく改善活動(PDCA)必須
5. 法令遵守・リスクマネジメント労働関連法規の遵守、従業員のプライバシー保護等(自主申告)必須

項目1:経営理念・方針

この項目では、経営トップが健康経営の重要性を認識し、その理念を明確に示しているかが問われます。具体的には、健康経営に関する方針をアニュアルレポートや統合報告書、自社のウェブサイト等で社外に公表していること、また、その方針が従業員にもしっかりと周知されていることが必須となります。トップダウンでの強力なリーダーシップが、健康経営推進の第一歩です。

項目2:組織体制

健康経営を実効性のあるものにするためには、それを推進するための組織体制が不可欠です。役員クラスの責任者を設置し、専門の部署や担当者を配置しているか、また、産業医や保健師、保険者(健康保険組合等)と密に連携し、専門的な知見を活かした取り組みができているかが評価されます。全社横断的な推進体制の構築が求められます。

項目3:制度・施策実行

この項目は、従業員の心身の健康課題に対応するための具体的な取り組みを評価するもので、最も多くの設問が含まれています。評価は、「従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討」「健康経営の実践に向けた土台づくり」「従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策」の3つのカテゴリに分かれています。定期健診受診率100%の達成や、50人以上の事業場におけるストレスチェックの実施といった必須項目に加え、生活習慣病予防、メンタルヘルス対策、女性の健康支援、長時間労働対策など、幅広い選択項目の中から13項目以上を実施する必要があります。自社の課題に合わせた、多角的で実効性のある施策展開が重要です。

項目4:評価・改善

健康経営は、施策を「やりっぱなし」にするのではなく、その効果を客観的に評価し、継続的に改善していくことが求められます。実施した施策によって、従業員の健康状態や意識、行動がどのように変化したのかをKPI(重要業績評価指標)等を用いて検証し、その結果を次の施策に活かす、いわゆるPDCAサイクルが回っているかが評価のポイントです。

項目5:法令遵守・リスクマネジメント

企業として、労働基準法や労働安全衛生法といった関連法規を遵守していることは、健康経営の大前提です。この項目は、定期報告や自主申告によって確認されます。従業員の健康情報を扱う上でのプライバシー保護への配慮なども含まれます。

ホワイト500独自の追加要件

上記の5つの要件をすべて満たした上で、さらにホワイト500に認定されるためには、より高いレベルの取り組みが求められます。具体的には、健康経営度調査の評価結果が偏差値として算出され、その上位500社に入ることが絶対条件です。加えて、トップランナーとして、健康経営の取り組みが企業業績に与える影響(投資対効果)を分析し、それを社外に公表するといった、より戦略的で先進的な情報開示が求められる傾向にあります。

申請から認定までの流れ

ホワイト500認定への道は、戦略的な準備と計画的な申請プロセスから始まります。ここでは、申請の全体像から、成功確率を高めるための具体的な対策までをガイドします。

申請プロセスの全体像とスケジュール

健康経営優良法人の申請プロセスは、毎年おおむね同じスケジュールで進められます。最新の情報は必ず経済産業省や「ACTION!健康経営」ポータルサイトで確認が必要ですが、一般的な流れは以下の通りです。

時期内容
8月下旬~10月中旬健康経営度調査の受付期間
3月上旬「健康経営優良法人」認定法人の発表
3月下旬以降評価結果(フィードバックシート)の送付

申請は、専用のウェブサイトを通じて行います。過去に申請したことがある企業には、受付開始時に登録メールアドレスへ案内が届きます。初めて申請する非上場企業の場合は、まずサイトで新規IDを発行し、申請手続きを進める必要があります。上場企業で初めて申請する場合は、郵送での案内が基本となります。

なお、大規模法人部門の認定申請には、88,000円(税込)の申請料が必要です(2025年度時点)。

成功に導く「健康経営度調査」対策のポイント

健康経営度調査で高い評価を得ることが、認定への直接的な道筋です。そのためには、以下の3つのポイントが重要になります。

1.事前の情報収集と計画策定
調査票の設問は多岐にわたるため、回答に必要な情報をどの部署が持っているかを事前に洗い出し、協力体制を築くことが不可欠です。人事、総務、健康管理室、経営企画など、関連部署を巻き込んだプロジェクトチームを組成し、スケジュールと役割分担を明確にしましょう。

2.設問の意図の正確な理解
各設問は、単に制度の有無を問うだけでなく、その運用実態や従業員への浸透度まで評価しようとしています。経済産業省が公開する「健康経営度調査票(見本)」や「回答の手引き」を熟読し、各設問が何を評価しようとしているのか、その背景にある意図を正確に理解することが、的確な回答につながります。

3.エビデンス(根拠資料)の準備
回答内容の信頼性を担保するため、規程類、会議の議事録、研修の実施記録、アンケート結果、社内広報物など、取り組みを客観的に証明できるエビデンスを整理・準備しておくことが重要です。これにより、調査への正確な回答が可能になるだけでなく、監査等にも対応できます。

申請における注意点と成功の秘訣

申請プロセスでは、些細なミスが評価に影響することもあります。以下の点に注意し、万全の体制で臨みましょう。

よくある不備
回答内容とエビデンスの不整合、単純な入力ミス、必須項目の未回答など、基本的なミスで評価を落とすケースが見られます。複数人でのダブルチェック体制を徹底しましょう。

成功の秘訣
認定企業に共通しているのは、健康経営を単なる一過性のプロジェクトではなく、経営戦略の一部として位置づけ、PDCAサイクルを回しながら継続的に取り組んでいる点です。経営トップの強いコミットメントのもと、自社の健康課題をデータに基づいて分析し、それに対する具体的な施策を打ち、効果を検証し、改善していく。この一連のプロセスをストーリーとして語れることが、高い評価につながります。

外部リソースの活用
自社だけでの対応が難しい場合は、健康経営を支援する外部の専門家やコンサルティングサービスを活用することも有効な選択肢です。客観的な視点からのアドバイスや、他社事例の知見を得ることで、より効果的な取り組みが可能になります。

ホワイト500認定企業の取り組み事例

理論だけでなく、実際にホワイト500に認定された企業がどのような取り組みを行っているのかを知ることは、自社の戦略を立てる上で非常に参考になります。ここでは、業種の異なる3社の事例を紹介します。

事例1:三井不動産株式会社

8年連続でホワイト500に認定されている三井不動産は、経営課題として社員の健康と安全を最優先に掲げています。人事管掌取締役を責任者とし、健康管理センターの設置、定期的な経営層への報告と改善策の協議など、全社的な推進体制を構築しています。特筆すべきは、健康管理センターにマッサージや仮眠スペースを設けるなど、従業員の心身の回復を具体的に支援している点です。また、婦人科検診の費用補助や健康アプリの導入、スポーツイベントの開催など、多角的なアプローチで従業員の健康をサポートしています。

事例2:株式会社日立ソリューションズ

「従業員の安全と健康はすべてに優先」という基本理念のもと、健康経営を推進しています。産業医によるフィジカル・メンタルの両面からの手厚いサポートが特徴で、特に高血圧や糖尿病などの生活習慣病予防に注力しています。また、管理職向けの安全衛生教育や、全社的なメンタルヘルス研修を階層別・年代別に実施することで、組織全体の健康リテラシー向上を図っています。在宅勤務者向けの健康セミナーを開催するなど、多様化する働き方に合わせたケアも提供しており、これらの取り組みにより、従業員の健康指標が年々改善していることがデータで示されています。

事例3:ミズノ株式会社

スポーツ用品メーカーであるミズノは、自社の強みを活かした健康経営を実践しています。社長自らが健康経営宣言を行い、「生活習慣病予備軍の比率低減」「重大疾病の早期発見」「メンタルヘルス休業者の人数減」「喫煙比率の低減」という具体的な4つの目標を掲げています。全社員参加型のウォーキングイベントや、オリジナルの「ミズノ体操」の実施奨励など、運動機会の創出に力を入れているのが特徴です。また、従業員の健康状態を可視化するデータベースを構築し、数値が改善すれば自社オンラインショップで使えるポイントを付与するなど、楽しみながら健康増進に取り組めるユニークな制度も導入しています。

まとめ

本記事では、「ホワイト500」の概要から認定のメリット、具体的な要件、申請のポイント、そして先進企業の取り組み事例までを包括的に解説しました。

ホワイト500の認定は、単なる称号の獲得に留まらず、企業価値の向上、人材獲得力の強化、そして組織全体の生産性向上といった、経営に直結する多くのメリットをもたらします。その道のりは、経営トップの強いリーダーシップのもと、全社一丸となって継続的にPDCAサイクルを回していく、まさに「経営そのもの」であると言えるでしょう。

これから健康経営に取り組む企業、あるいは既に取り組んでいるものの、さらなるステップアップを目指す企業の経営者・人事担当者の皆様にとって、ホワイト500は一つの明確な目標となり得ます。本記事で紹介した情報を参考に、自社の状況に合わせた健康経営戦略を策定し、従業員がいきいきと活躍できる、持続可能な組織づくりへの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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