採用につながる求人票の作り方|5000枚の求人票から見た勝ちパターン徹底解説
企業の成長を支える最も重要な資産は「人材」です。そして、その優秀な人材と企業が出会う最初の接点、それが「求人票」です。多くの企業が多大なコストと時間をかけて採用活動を行っていますが、その入り口である求人票の作成を、単なる事務作業として捉えてはいないでしょうか。
現代の採用市場において、求人票はもはや単なる募集要項ではありません。それは、未来の仲間となる可能性を秘めた候補者に対する、企業の最初のプレゼンテーションであり、自社の魅力を伝えるマーケティングツールなのです。候補者は求人票を通じて、仕事内容だけでなく、企業文化、ビジョン、そしてそこで働く人々の姿を想像します。この最初の印象が、応募という次のステップに進むかどうかを大きく左右します。
しかし、数多くの求人票が、その重要性に見合った工夫をされることなく、情報の渦の中に埋もれてしまっているのが現状です。5,000枚以上の中途採用求人票を分析した結果、採用に成功している企業には、求人票作成における明確な「勝ちパターン」が存在することが明らかになりました。
本記事では、人事担当者や経営者の皆様が、その「勝ちパターン」を自社で再現できるよう、求人票作成のノウハウを体系的に、そして実践的に徹底解説します。具体的なOK例とNG例を豊富に交えながら、明日からすぐに使えるフレームワークやチェックリストを提供することで、貴社の採用力を飛躍的に向上させることを目指します。
目次
- 知っておくべき求人市場の現実
- 求人票作成の5段階フレームワーク
- プレアクセス戦略:まず見つけてもらう技術
- オンアクセス戦略:読ませて惹きつける技術
- 絶対に避けるべき4つのNG求人票
- FABE分析で企業の魅力をベネフィットに変える
- 今日から使える実践チェックリスト
- まとめ
知っておくべき求人市場の現実
効果的な求人票を作成するためには、まず我々が戦っている採用市場の現状を正しく理解する必要があります。感覚的な採用活動から脱却し、データに基づいた戦略を立てることが、成功への第一歩となります。
常時550万件以上の求人が存在する競争環境
現在、主要な求人媒体にはどれほどの求人情報が掲載されているかご存知でしょうか。例えば、国内最大級の求人検索エンジンIndeedには、常時約550万件もの求人が掲載されています(2024年8月時点)。これは、自社の求人が、数百万件もの競合の中から候補者に見つけてもらわなければならない、という厳しい現実を示しています。
| 求人媒体 | 月間求人数(概算) |
| Indeed | 約552万件 |
| ハローワーク | 約250万件 |
この数字は、もはや「良い求人を出せば自然と応募が来る」という時代が完全に終わったことを物語っています。候補者という大海の中から、自社という一滴を見つけてもらうためには、戦略的なアプローチが不可欠なのです。
求職者の行動パターンを理解する
情報過多の状況において、求職者の行動も変化しています。彼らは、一つひとつの求人票を隅から隅まで熟読するわけではありません。多くの場合、スマートフォンの画面をスクロールしながら、タイトルや最初の数行を流し読みし、興味を引くキーワードがなければ、わずか数秒で次の情報へと移ってしまいます。
この「最初の数秒」で候補者の心を掴めるかどうかが、求人票の成否を分けるのです。つまり、求人票は「読んでもらう」のではなく、「見つけてもらい、クリックしてもらい、一瞬で興味を惹きつける」ものとして設計する必要があります。この候補者の行動変容を理解することが、効果的な求人票作成の出発点となります。

求人票作成の5段階フレームワーク
採用成功の再現性を高めるためには、個人の感覚に頼るのではなく、体系化されたアプローチが必要です。ここでは、5,000枚以上の求人票分析から導き出された、効果的な求人票作成のための「5段階フレームワーク」をご紹介します。このフレームワークは、求人票作成のプロセスを5つのステップに分解し、各段階で何をすべきかを明確にします。
このフレームワークの根幹をなすのが、「プレアクセス」と「オンアクセス」という2つの概念です。
プレアクセス
候補者が求人票の本文にアクセスする「前」の段階。数多ある求人の中から自社の求人を見つけてもらうフェーズ。
オンアクセス
候補者が求人票の本文にアクセスした「後」の段階。内容を読み進めてもらい、応募意欲を喚起するフェーズ。
これらを踏まえ、5つのステップを見ていきましょう。

STEP0:法令遵守の基盤整備
すべての基本となるのが、労働関連法規や男女雇用機会均等法などのルールを遵守することです。年齢や性別による差別的な表現を避けるなど、企業の信頼性を担保するための最低限の土台となります。2024年4月からは、職業安定法施行規則の改正により、明示すべき労働条件が追加されていますので、常に最新の情報を確認することが重要です。
STEP1:プレアクセス戦略
競争の激しい市場で、まずは候補者に「認知」されるためのステップです。検索キーワードの最適化や、魅力的なタイトルの作成を通じて、数百万件の中から自社の求人票を見つけてもらい、クリックしてもらうことを目指します。
STEP2:オンアクセス戦略
求人票がクリックされた後、候補者の「懸念を払拭」し、興味を惹きつけるステップです。求人票の情報を充実させ、候補者が抱きがちな不安や疑問を先回りして解消することで、続きを読む動機付けを行います。
STEP3-5:魅力訴求の段階
オンアクセス戦略の後半部分であり、候補者の心を掴み、応募へと導くための魅力訴求のステップです。企業の魅力を「外的報酬」と「内的報酬」に分けて言語化し、最終的に候補者自身のキャリアとの結びつきを感じさせることで、応募を決定づけます。
プレアクセス戦略:まず見つけてもらう技術
プレアクセス戦略の目的はただ一つ、「数百万件の中から自社の求人を見つけてもらい、クリックしてもらうこと」です。ここでは、そのための具体的な2つの技術を解説します。
検索キーワード戦略の重要性
候補者は、自身の経験や希望する職種、スキルなどをキーワードとして入力し、仕事を探します。したがって、彼らがどのようなキーワードで検索するかを予測し、そのキーワードを求人票のタイトルや本文に戦略的に盛り込むことが極めて重要です。
ターゲットを具体化する
まず、「どのような経験・スキルを持つ人材に来てほしいか」というターゲット像(ペルソナ)を明確にします。
キーワードを洗い出す
そのペルソナが検索時に使いそうなキーワードを、職種名、役職名、スキル名、業界用語、希望条件(例:「リモートワーク」「フレックス」)など、様々な角度から洗い出します。
媒体の機能を活用する
各求人媒体が提供する「スキルタグ」や「特徴タグ」なども最大限に活用し、検索結果での露出機会を増やしましょう。
求人タイトルの黄金ルール「30文字の法則」
検索結果一覧で、候補者の目に最初に飛び込んでくるのが「求人タイトル」です。ここでクリックされるかどうかが勝負の分かれ目となります。多くの媒体では、タイトルは30文字前後で表示され、特にスマートフォンでは冒頭の10〜15文字しか表示されないこともあります。
この「30文字の法則」を制するためのポイントは以下の通りです。
1.最も重要な情報は冒頭15文字に
ターゲットに最も響くキーワードやベネフィットを、必ずタイトルの前半に配置します。
2.求職者目線の言葉を選ぶ
「社内用語」や専門的すぎる言葉は避け、候補者が直感的にメリットを理解できる言葉を選びます。
3.具体性と魅力を両立させる
職種名だけでなく、仕事の魅力や働くメリットを簡潔に表現します。
【OK例&NG例】求人タイトルの比較
具体的に、タイトルの違いがどのように印象を変えるかを見てみましょう。
| NG例 | OK例 | |
| タイトル | 営業スタッフ募集 | 【未経験歓迎】法人向けITソリューション営業/年間休日125日・リモート可 |
| 分析 | NG: 職種が曖昧で、何の営業かも不明。働くメリットが全く伝わらず、他社との差別化ができていない。 | OK: 「未経験歓迎」でターゲットを明確化。「法人向けITソリューション営業」で仕事内容を具体化。「年間休日125日・リモート可」で働くメリットを提示し、魅力と具体性を両立している。 |
このように、タイトルを戦略的に設計するだけで、候補者に与える印象は劇的に変わります。プレアクセス戦略は、この地道な最適化の積み重ねが成功に繋がるのです。
オンアクセス戦略:読ませて惹きつける技術
プレアクセス戦略を突破し、候補者が求人票をクリックしてくれたとしても、まだ安心はできません。ここからが、候補者の心を掴み、応募へと導くための本番、「オンアクセス戦略」です。このフェーズの目的は、候補者に内容を読み進めてもらい、「この仕事は自分に合っているかもしれない」「もっと詳しく知りたい」そして最終的には「応募したい」と思わせることにあります。
多くの候補者は、最初の数秒でその求人票を読み進めるかどうかを判断します。そのためには、まず情報の「量」で誠意を見せることが重要です。求人媒体の入力欄は、最低でも7割以上を埋めることを目標にしましょう。空白の多い求人票は、情報不足であると同時に、採用への熱意が低いと見なされ、候補者の離脱を招きます。
その上で、情報の「質」を高めていく必要があります。ここでは、候補者を惹きつけるための2つの重要な考え方、「外的報酬と内的報酬」および「7Pフレームワーク」を解説します。
外的報酬と内的報酬を理解する
候補者の働く動機は、単純なものではありません。その動機を深く理解し、効果的にアピールするために、報酬の概念を「外的報酬」と「内的報酬」の2つに分けて考えます。
外的報酬
企業から物理的・金銭的に与えられる報酬です。給与、賞与、昇進、福利厚生、働く環境(オフィスやPCなど)がこれにあたります。これらは、候補者が企業を選ぶ上での基本的な判断基準となり、不足していると「不満」の原因となります。
内的報酬
仕事そのものや、チーム・組織との関わりの中から生まれる精神的な報酬です。仕事のやりがい、自己成長の実感、キャリアアップへの意欲、良好な人間関係などがこれにあたります。これらは、候補者のエンゲージメントを高め、長期的な活躍を促す「満足」の源泉となります。
| 報酬の種類 | 内容 | 候補者への影響 |
| 外的報酬 | 給与、昇進、役職、福利厚生、労働環境など、会社から与えられるもの | ないと不満を抱くが、あるだけでは強い動機にならない(衛生要因) |
| 内的報酬 | 仕事のやりがい、成長機会、キャリアへの意欲、良好な人間関係など、仕事や組織から生まれるもの | あると満足し、強い応募動機や入社後の活躍に繋がる(動機付け要因) |
求人票においては、まず外的報酬を明確に提示して候補者の懸念(不満)を払拭し、その上で、他社との差別化の源泉となる内的報酬の魅力を具体的に語ることが、候補者の心を強く惹きつける鍵となります。
7Pフレームワークで魅力を網羅する
「自社の魅力は何か?」と問われても、漠然としていて言語化に窮することがあります。そこで役立つのが、企業の魅力を7つの要素(7P)に分解し、網羅的に分析する「7Pフレームワーク」です。
このフレームワークを用いることで、自社の魅力を多角的に洗い出し、候補者の多様な価値観に対して、どの要素が特に響くかを戦略的に考え、訴求することが可能になります。
| 7Pの要素 | 内容 | 訴求ポイントの例 |
| Privilege(特権) | 給与、福利厚生、勤務地、勤務時間などの労働条件 | 「業界最高水準の給与」「独自のユニークな福利厚生」「フルフレックス・フルリモート」 |
| Profession(専門性) | 仕事内容、キャリアパス、やりがい、目標 | 「最先端技術に触れられる」「未経験からマネージャーを目指せるキャリアパス」 |
| People(人々) | 働く仲間、上司・部下の関係性、組織文化、雰囲気 | 「多様なバックグラウンドを持つメンバー」「フラットな組織文化」 |
| Philosophy(哲学) | クレド、バリュー、行動指針、仕事における価値観 | 「『顧客第一』を徹底する文化」「失敗を恐れず挑戦を推奨する価値観」 |
| Purpose(目的) | 企業の存在意義、経営理念、ミッション、ビジョン | 「社会課題の解決を目指す事業」「業界の変革をリードするビジョン」 |
| Product(製品) | 市場、事業内容、プロダクトやサービスの強み・課題 | 「市場シェアNo.1のプロダクト」「グローバルに展開するサービス」 |
| Phase(段階) | 会社の事業成長フェーズ、組織規模、売上、組織体制 | 「急成長中のスタートアップ」「安定した経営基盤を持つメガベンチャー」 |
これらの7つの視点から自社の情報を整理し、ターゲットとする候補者層に合わせ、特に響くであろうPを重点的にアピールすることが、オンアクセス戦略の質を高めることに繋がります。
絶対に避けるべき4つのNG求人票
魅力的な求人票を作成する上で、成功パターンを学ぶことと同じくらい重要なのが、候補者から敬遠される「NGパターン」を理解し、避けることです。知らず知らずのうちに、候補者の応募意欲を削いでしまっているかもしれません。ここでは、多くの企業が陥りがちな4つの共通したNG事例と、その具体的な解決策をOK例・NG例の比較を交えて詳しく解説します。
NG1:業務範囲が広すぎる【NG例&解決策】
「事業企画からマーケティング、営業、顧客サポートまで幅広くお任せします」といった求人票は、一見すると多様な経験が積める魅力的なポジションに見えるかもしれません。しかし、候補者の視点から見ると、「メインのミッションは何なのか?」「結局、何でも屋になって専門性が身につかないのではないか?」といった疑念や不安を抱かせる原因となります。
特に、キャリア形成を真剣に考えている優秀な人材ほど、自身の専門性をどう高めていけるかを重視します。業務範囲が曖昧な求人票は、そうした人材からの応募を遠ざけてしまうリスクを孕んでいます。
【解決策】
期待役割を明確化する
「どのような経験を持つ人材に、何を最も期待しているのか」という中心的なミッションを明確に定義し、具体的に記述します。キャリアパスを提示する
幅広い業務に携われることが本当に魅力なのであれば、それが将来的にどのような専門性やキャリアに繋がるのか、具体的なキャリアパスの例(例:プロダクトマネージャー、事業責任者など)を提示することで、成長機会としての魅力を訴求します。
| NG例 | OK例 | |
| 業務内容 | 事業企画、マーケティング、営業、アライアンス、顧客サポートなど、新規事業に関わる業務全般を幅広くお任せします。 | 【主なミッション】 新規SaaSプロダクトの市場拡大に向けた法人営業を主導していただきます。 【具体的な業務内容】 – ターゲット企業へのアプローチ戦略の立案と実行 – 顧客ヒアリングを通じたプロダクト改善へのフィードバック – マーケティングチームと連携したセミナーやイベントの企画 ※将来的には、ご志向に応じてプロダクトマネージャーや事業開発責任者へのキャリアパスも可能です。 |
| 分析 | NG: 「何でも屋」の印象が強く、候補者は自身の役割を具体的にイメージできません。何を評価されるのかも不明確です。 | OK: 中核となるミッション(法人営業)を明確にしつつ、関連業務にも触れることで、役割の具体性と広がりを両立させています。キャリアパスを提示することで、将来への期待感も醸成しています。 |
NG2:給与レンジが広すぎる【NG例&解決策】
「年収400万円〜1,000万円」のように、給与レンジが極端に広い求人票も、候補者に不信感を与える典型的なNGパターンです。候補者は、「自分のスキルや経験は、このレンジの中で一体いくらで評価されるのだろうか?」と不安になります。最悪の場合、「どうせ下限に近い金額で提示されるのだろう」と判断し、応募をためらってしまうことさえあります。
企業側としては、幅広い層の人材にアプローチしたいという意図があるのかもしれません。しかし、年収400万円の人材と1,000万円の人材に求める役割や責任が同じであるはずがなく、その違いが求人票に明記されていない限り、誠実さに欠ける印象を与えてしまいます。
【解決策】
クラス分け求人を作成する
同一ポジションであっても、経験やスキルレベルに応じて「メンバークラス」「リーダークラス」「マネージャークラス」のように求人を分割して作成します。これにより、各クラスで求められる要件と、それに対応する妥当な給与レンジを明確に提示することができます。
| NG例 | OK例 | |
| 給与 | 年収 4,000,000円 〜 10,000,000円 ※経験・スキルを考慮の上、決定します。 | 【A】セールスマネージャー候補 年収 7,000,000円 〜 10,000,000円 (募集要件:法人営業経験5年以上、3名以上のマネジメント経験) 【B】セールスメンバー 年収 4,000,000円 〜 6,500,000円 (募集要件:法人営業経験1年以上) |
| 分析 | NG: レンジが広すぎて、評価基準が全く不明です。候補者は自分の市場価値と照らし合わせることができず、応募を躊躇します。 | OK: 役割と責任に応じて求人を分割し、それぞれに適切な給与レンジと明確な募集要件を設定しています。これにより、候補者は自身の経験に合ったポジションに応募しやすくなり、企業との期待値のズレも少なくなります。 |
NG3:抽象的で情報量が不足【NG例&解決策】
「風通しの良い社風です」「裁量権を持って働けます」「アットホームな職場です」——こうした言葉は、多くの求人票で目にする常套句ですが、これだけでは企業の魅力は全く伝わりません。なぜなら、これらの言葉の定義は人によって異なり、その言葉を裏付ける具体的な事実がなければ、ただの耳障りの良いスローガンに過ぎないからです。
候補者は、その言葉の裏付けとなる具体的な情報や「手触り感」のあるエピソードを求めています。情報量が少なく、抽象的な言葉ばかりが並ぶ求人票は、採用への熱意が低いと見なされ、読み飛ばされてしまいます。
【解決策】
徹底的に具体化・定量化する
抽象的な言葉を、具体的な制度、文化、エピソード、数字に落とし込みます。「風通しが良い」のであれば、「毎週の全社ミーティングで、新入社員も役員に直接質問できる場がある」など、働く姿が目に浮かぶように記述します。6つの要素を盛り込む
業務内容を具体化する際は、最低でも以下の6つの要素を盛り込むことを意識してください。1.具体的な業務内容(何を、どうやって)
2.仕事の流れ・進め方(1日のスケジュール、プロジェクトの流れ)
3.案件・取引先イメージ
4.関わる人たち・チーム構成
5.期待役割
6.ミッション
| NG例 | OK例 | |
| 社風・文化 | チームワークを重視する、風通しの良い社風です。若手でも裁量権を持って活躍できます。 | 【チーム体制】 プロダクト開発チームは、プロダクトマネージャー1名、デザイナー2名、エンジニア5名の計8名で構成されています。平均年齢は32歳です。 【仕事の進め方】 2週間のスプリント単位で開発を進めており、毎朝のスタンドアップミーティングで進捗を共有します。スプリントの最後には、チーム全員で「ふりかえり(KPT)」を行い、プロセスの改善案を職種に関係なく出し合っています。 【文化】 半期に一度、「失敗共有会」というイベントがあり、挑戦した上での失敗を称賛し、学びを共有する文化が根付いています。これにより、若手メンバーも萎縮することなく新しい技術に挑戦できます。 |
| 分析 | NG: すべての言葉が抽象的で、どの会社にも当てはまりそうです。候補者は働く姿を全くイメージできません。 | OK: チーム構成や仕事の進め方を具体的に記述することで、候補者は入社後の働き方をリアルに想像できます。「失敗共有会」という具体的な制度を挙げることで、「風通しの良さ」や「裁量権」に圧倒的な説得力を持たせています。 |
NG4:会社本位で求職者目線がない【NG例&解決策】
自社の歴史、技術の優位性、プロダクトの素晴らしさを熱心に語る——。これは一見、正しいアピールのように思えます。しかし、そのアピールが「だから、候補者にとってどんな良いことがあるのか?」という視点に欠けている場合、それは単なる企業の自己満足であり、候補者の心には響きません。
求人票は、製品のパンフレットやサービス資料ではありません。候補者は、「この会社に入社することで、自分のキャリアはどうなるのか?」「どのような成長ができるのか?」という自分自身の未来に関心があります。企業の強みを、候補者個人のメリット(ベネフィット)に翻訳して伝える視点が不可欠です。
【解決策】
ベネフィット思考への転換
「当社の特徴は〜です」で終わるのではなく、「だから、あなたのキャリアにとって〜という価値があります」という形で、企業の強みと個人のキャリアを結びつけて訴求します。この具体的な思考法が、次章で解説する「FABE分析」です。
| NG例 | OK例 | |
| アピール | 当社は1998年に創業し、独自の「半導体製造技術」を磨き続けてきました。この技術は世界でもトップクラスであり、今後さらなる需要拡大が見込まれています。 | 【得られる経験とキャリア】 当社が持つ世界トップクラスの「半導体製造技術」のノウハウを、第一線で活躍するエンジニアから直接学ぶことができます。 この経験を通じて、あなたは市場価値の高い専門性を身につけることができ、将来的には、AIや自動運転といった最先端分野の製品開発に不可欠な技術者としてキャリアを切り拓くことが可能です。 「我々はこんなにすごいんです!」で終わるのではなく、「だからあなたのキャリアにこんなに良いことがあるんです」と語りかけることが重要です。 |
| 分析 | NG: 企業のすごさは伝わりますが、それが候補者にとってどのような意味を持つのかが全く分かりません。候補者は置いてきぼりです。 | OK: 企業の強み(世界トップクラスの技術)を、候補者が得られる経験(ノウハウを学べる)と、その先の未来(市場価値の高い専門性、キャリアの可能性)に結びつけています。候補者は、入社後の自分の成長を具体的にイメージできます。 |
FABE分析で企業の魅力をベネフィットに変える
前章のNG例4でも触れたように、企業の強みを候補者目線の「ベネフィット」に転換することは、魅力的な求人票を作成する上で最も重要なプロセスの一つです。この「翻訳」作業を体系的に行うための強力な思考フレームワークが「FABE分析」です。
FABE分析とは何か
FABE分析は、元々マーケティングや営業の世界で使われるフレームワークで、顧客に商品の価値を効果的に伝えるために用いられます。これを採用活動に応用し、顧客を「候補者」と置き換えることで、求人票のメッセージを飛躍的に強化することができます。
FABEは、以下の4つの要素の頭文字を取ったものです。
| 要素 | 名称 | 説明 |
| Feature | 特徴 | 企業、事業、製品、制度に関する客観的な「事実」。 |
| Advantage | 優位性 | その特徴が、競合他社と比較してどのように「優れているか」。 |
| Benefit | 便益(ベネフィット) | その優位性が、候補者にとってどのような「メリットや価値」をもたらすか。 |
| Evidence | 証拠 | そのベネフィットを裏付ける「具体的な事例、データ、体験談」。 |
多くの求人票は、Feature(特徴)やAdvantage(優位性)を語るだけで終わってしまっています。しかし、候補者の心を本当に動かすのは、Benefit(便益)です。そして、そのベネフィットに信頼性と具体性を与えるのがEvidence(証拠)の役割です。
【実践例】「風通しの良い社風」をFABE分析で訴求する
多くの企業がアピールする「風通しの良い社風」という抽象的な特徴を、FABE分析を使ってどのように魅力的なメッセージに変えられるか、具体的なプロセスを見ていきましょう。
1.Feature(特徴)を定義する
「我が社は風通しの良い社風です」
2.Advantage(優位性)に変換する
(それは他社と比べてどう優れているのか?)
→「役職や年次に関係なく、誰でも自由に意見を発信できる文化があります」
3.Benefit(便益)に翻訳する
(それが候補者にとってどんな良いことなのか?)
→「そのため、若手であっても自らのアイデアを事業に反映させるチャンスが豊富にあり、早期から裁量権を持って市場価値の高い経験を積むことができます」
4.Evidence(証拠)で裏付ける
(そのベネフィットを証明する具体的な事実やエピソードは?)
→「実際に、入社2年目の社員の提案から生まれた新規プロジェクトが現在進行中であり、彼がプロジェクトリーダーを務めています。また、週次の全社定例会議では、新入社員も役員に直接質問や提案を行う時間が設けられています」
このように、FABE分析のステップを踏むことで、「風通しの良い社風」というありきたりな言葉が、「若手が早期に成長し、市場価値を高められる環境」という、候補者にとって非常に魅力的で具体的なベネフィットとして伝わります。7Pフレームワークで洗い出した自社の様々な魅力を、このFABE分析にかけて言語化していくことが、他社と差別化された、心に響く求人票を作成するための鍵となります。
今日から使える実践チェックリスト
本記事で解説した内容をすぐに実践できるよう、求人票を作成・修正する際に使えるチェックリストを用意しました。プレアクセスとオンアクセスの2つの観点から、自社の求人票が「採用につながる」レベルに達しているかを確認してみましょう。
プレアクセスチェックリスト
| チェック項目 | 確認内容 | はい / いいえ |
| キーワード戦略 | ターゲット人材が検索しそうなキーワードを3つ以上盛り込んでいるか? | |
| 職種名、スキル名、業界用語などを適切に使用しているか? | ||
| タイトル最適化 | 最も重要なキーワードやベネフィットを、タイトルの冒頭15文字以内に配置しているか? | |
| 全体で30〜40文字程度の、簡潔で魅力的なタイトルになっているか? | ||
| 社内用語ではなく、候補者が直感的に理解できる言葉を選んでいるか? | ||
| タグ活用 | 求人媒体が提供する「スキルタグ」「特徴タグ」などを漏れなく最大限活用しているか? |
オンアクセスチェックリスト
| チェック項目 | 確認内容 | はい / いいえ |
| 情報量 | 求人票の入力欄の7割以上を埋め、採用への熱意と誠意を示しているか? | |
| 具体性 | 業務内容、仕事の流れ、関わる人などが具体的にイメージできるように記述されているか? | |
| 抽象的な言葉(例:風通が良い、成長環境)には、必ず具体的な制度やエピソードを添えているか? | ||
| ベネフィット訴求 | 企業の特徴が、候補者にとってのメリット(ベネフィット)として翻訳されているか?(FABE分析) | |
| 7P網羅性 | 7Pフレームワークの各要素(特にPrivilege, Profession, People)がバランス良く盛り込まれているか? | |
| NG項目回避 | 「業務範囲が広すぎる」「給与レンジが広すぎる」「情報が抽象的」「会社本位」といったNGパターンに陥っていないか? |
まとめ
本記事では、採用成功の鍵を握る求人票の作り方を、5段階フレームワーク、プレアクセス・オンアクセス戦略、7Pフレームワーク、FABE分析といった具体的な手法を交えながら徹底的に解説しました。
重要なのは、求人票を一度作って終わりにするのではなく、継続的に改善していくという視点です。作成した求人票の閲覧数(PV)、クリック率(CTR)、そして応募率(CVR)といったデータを定期的に分析し、どこに課題があるのかを特定します。
閲覧数が少ない
→ プレアクセス戦略に課題。タイトルやキーワードを見直す。クリック率は高いが応募率が低い
→ オンアクセス戦略に課題。本文の内容、特にベネフィットの訴求や懸念払拭が不十分な可能性。NGパターンに陥っていないか確認する。
このように、データに基づいて仮説を立て、修正を加え、その結果をまた検証するというPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回していくことが、採用力を継続的に高めていく上で不可欠です。
求人票は、企業と未来の仲間とを結ぶ、非常に重要なコミュニケーションツールです。本記事で紹介したノウハウが、貴社の採用活動を加速させ、素晴らしい人材との出会いを創出する一助となれば幸いです。
「すごい人事」情報局運営元:株式会社Crepe
Crepeでは、「人事が変われば、組織が変わる」というコンセプトのもと、⚫︎各種業界1300名の人事が在籍。工数・知見を補う「即戦力」レンタルプロ人事マッチングサービス
⚫︎1日2時間〜使えるマネージャークラスのレンタル採用チーム。オンライン採用代行RPOサービス
⚫︎人事にまつわる課題を解決へ導く、伴走型人事コンサルティングサービス
などのサービスを通して、人事課題を解決する支援を行っています。