【2025年版】外国人採用の基本!メリット・デメリット・手順・費用を完全ガイド

日本の労働市場は今、大きな転換点を迎えています。少子高齢化の進行により、国内の労働力不足は深刻化の一途をたどり、多くの企業が人材確保に苦戦している状況です。このような背景の中で、外国人採用は単なる選択肢の一つではなく、企業の持続的成長を支える重要な戦略として位置づけられるようになりました。

厚生労働省の最新データによると、令和6年10月末時点での外国人労働者数は2,302,587人に達し、前年比253,912人の大幅な増加を記録しています。この数字は届出が義務化された平成19年以降の過去最高を更新しており、外国人採用の需要が急速に拡大していることを物語っています。

しかし、外国人採用には日本人の採用とは異なる独自のルールや手続きが存在し、多くの企業担当者が「複雑で分からない」「どこから始めればよいか分からない」といった悩みを抱えているのも事実です。在留資格の確認、法的な義務の履行、文化的な配慮など、考慮すべき要素は多岐にわたります。

本記事では、外国人採用を検討している企業の担当者に向けて、2025年の最新動向を踏まえながら、外国人採用の基本的な知識から実践的な手順まで、包括的かつ分かりやすく解説していきます。メリットとデメリットの正確な理解、法的な注意点の把握、効果的な採用プロセスの構築など、成功する外国人採用のために必要な情報を体系的にお伝えします。

目次

外国人採用の現状と最新動向

外国人労働者数の推移と市場の変化

日本における外国人労働者の受け入れは、過去10年間で劇的な変化を遂げています。2014年時点では約79万人だった外国人労働者数が、2024年には230万人を超える規模まで拡大し、実に3倍近い成長を示しています。この急激な増加の背景には、国内の深刻な人手不足と、政府による外国人材受け入れ制度の段階的な拡充があります。

引用:厚生労働省「外国人労働者数の推移

特に注目すべきは、外国人を雇用する事業所数の増加です。2024年時点で342,087事業所が外国人を雇用しており、前年比23,312事業所の増加となっています。対前年増加率は7.3%と前年の6.7%から0.6ポイント上昇しており、外国人採用の裾野が着実に広がっていることが分かります。

業種別に見ると、製造業が最も多く全体の約30%を占めていますが、近年はサービス業、建設業、小売業での採用も急速に拡大しています。特に、新型コロナウイルス感染症の影響から回復した観光・宿泊業界では、インバウンド需要の復活とともに外国人材への期待が高まっています。

2025年の制度変更・政策動向

2025年は外国人採用制度にとって重要な転換点となる年です。政府は外国人材の受け入れ拡大と質の向上を目指し、複数の制度改正を実施しています。

最も注目すべき変化の一つは、特定技能制度の大幅な拡充です。2025年5月に政府が発表した方針によると、物流倉庫、リネンサプライ、資源循環の3分野が新たに特定技能の対象分野として追加される予定です。これらの分野は、いずれも深刻な人手不足に直面しており、外国人材の受け入れによる労働力確保が急務となっています。

また、既存の分野においても制度の柔軟化が進んでいます。特定技能「外食業」分野では、従来は制限されていた旅館・ホテルの食堂での就労が正式に認められるようになりました。これにより、宿泊業界における外国人材の活用範囲が大幅に拡大し、より効率的な人材配置が可能となります。

交通分野では、バス・タクシー運転手の日本語要件が従来のN3レベルからN4レベルに緩和される方針が示されています。ただし、N4レベルの場合は日本語サポーターの同乗が前提となり、安全性の確保と人材確保のバランスを図った制度設計となっています。

特定技能制度の拡大と影響

特定技能制度は2019年の創設以来、日本の外国人材受け入れの中核的な制度として機能してきました。2025年現在、19の分野で外国人材の受け入れが行われており、今後さらに3分野の追加が予定されています。

制度の特徴として、一定の技能水準と日本語能力を有する外国人材を対象としている点が挙げられます。これにより、即戦力として活用できる人材の確保が可能となり、企業にとっては研修期間の短縮や生産性の向上といったメリットをもたらしています。

2024年末時点での特定技能外国人の在留者数は約20万人に達しており、制度創設時の想定を上回るペースで増加しています。国籍別では、ベトナム、インドネシア、フィリピンからの人材が多く、これらの国々との二国間協定に基づく円滑な受け入れが実現されています。

企業側の反応も概ね良好で、特定技能外国人を雇用した企業の約7割が「人手不足の解消」や「作業効率の向上」などの効果を実感していると回答しています。一方で、日本語コミュニケーション能力の向上や、文化的な違いへの対応といった課題も指摘されており、受け入れ企業には継続的なサポート体制の構築が求められています。

育成就労制度の創設

2025年の外国人採用制度における最大の変化は、2027年4月に開始予定の「育成就労制度」の創設です。この制度は、現行の技能実習制度に代わる新たな枠組みとして位置づけられ、外国人材の技能向上と日本での長期就労を促進することを目的としています。

育成就労制度の対象分野は、介護や農業を含む17分野とする方針が示されています。これは特定技能制度の対象分野とほぼ一致しており、育成就労から特定技能への円滑な移行を促進する制度設計となっています。ただし、「自動車運送業」については国内での育成になじまないとして除外され、「航空」分野については業界の事情を踏まえて検討が継続されています。

制度の特徴として、大都市圏での受け入れ制限が設けられる点が注目されます。東京や大阪などの8都府県では、地方よりも企業の採用枠や転籍の人数枠を厳しく制限することで、人材の地方分散を図る方針です。これにより、地方の人手不足解消と外国人材の適正な配置の両立を目指しています。

入国前結核スクリーニングの導入

2025年6月23日から、フィリピンおよびネパール国籍者を対象とした入国前結核スクリーニングが開始されました。この制度により、在留資格認定証明書交付申請において結核非発病証明書の提出が義務化され、公衆衛生の観点から外国人材の受け入れ体制が強化されています。

ただし、既に結核検査を含む健康診断が義務化されている特定技能外国人は対象外となっており、技術・人文知識・国際業務(技人国)などの在留資格が主な対象となります。企業としては、該当する国籍の外国人材を採用する際に、追加的な手続きと期間を考慮した採用計画の策定が必要となります。


外国人採用のメリット・デメリット

外国人採用のメリット・デメリット

外国人採用の4つのメリット

外国人採用は、適切に実施すれば企業に多大なメリットをもたらします。ここでは、実際に外国人材を活用している企業の事例を踏まえながら、主要な4つのメリットについて詳しく解説します。

メリット1:若手の人材を確保しやすい

外国人採用の最大のメリットの一つは、若手人材の確保が容易になることです。日本に来る外国人材の多くは20代から30代前半の若い世代であり、長期的な人材育成の観点から企業にとって非常に価値の高い人材となります。

メリット2:日本人と比較して地方でも応募が集まりやすい

地方企業にとって特に重要なメリットが、外国人材の地方就労に対する積極性です。日本人の場合、地方での就職を敬遠する傾向が強く、特に若手人材の地方定着は大きな課題となっています。

一方、外国人材は地方での就労に対して比較的前向きな姿勢を示すことが多く、交通の便や生活環境が整っていれば、都市部以外での就職も積極的に検討します。これは、外国人材にとって重要なのは給与水準や労働条件、キャリア形成の機会であり、必ずしも都市部での就労にこだわらないためです。

実際に、地方の製造業や農業、建設業などでは、外国人材の活用により人手不足の解消に成功している事例が数多く報告されています。特に技能実習制度や特定技能制度を活用した地方企業では、安定した人材確保を実現し、事業の継続性を確保しています。

メリット3:助成金などの補助が多く、活用が可能

外国人採用には、国や地方自治体から様々な助成金や補助金が提供されており、採用コストの軽減や受け入れ体制の整備に活用することができます。

主要な助成金として、厚生労働省の「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」があります。この助成金は、外国人労働者の就労環境整備を行う事業主に対して、整備費用の一部を助成するものです。具体的には、通訳の配置、多言語対応マニュアルの作成、相談窓口の設置などの費用が対象となります。

メリット4:多言語対応ができ、インバウンド対策や海外進出の足掛かりになる

グローバル化が進む現代において、外国人材の多言語能力は企業にとって重要な競争優位性となります。特に、新型コロナウイルス感染症の影響から回復したインバウンド市場では、外国人観光客への対応能力が事業成功の鍵を握っています。

外国人材を採用することで、自然な形で多言語対応が可能となり、外国人顧客へのサービス品質向上を実現できます。これは単なる言語的な対応にとどまらず、文化的な理解に基づいた質の高いサービス提供につながります。

また、将来的な海外進出を検討している企業にとって、外国人材は貴重な橋渡し役となります。母国の市場情報、商習慣、ネットワークなどを活用することで、海外展開のリスクを軽減し、成功確率を高めることができます。実際に、外国人材の知見を活用して海外進出に成功した中小企業の事例も数多く報告されています。

外国人採用の4つのデメリット

外国人採用には多くのメリットがある一方で、適切な対策を講じなければ企業にとってリスクとなるデメリットも存在します。これらのデメリットを事前に理解し、適切な対策を準備することが成功する外国人採用の前提条件となります。

デメリット1:文化や習慣の違いがあり、フォローが必要

外国人材と日本人材の間には、言語の違いを超えた根本的な文化や習慣の違いが存在します。これらの違いは、職場でのコミュニケーションや業務遂行において様々な課題を生み出す可能性があります。

例えば、時間に対する概念の違いは多くの企業が直面する課題です。日本では「時間厳守」が当然とされていますが、一部の国では時間に対してより柔軟な考え方を持つ文化があります。また、上下関係や意思決定プロセスに対する考え方も国によって大きく異なり、日本の組織文化に適応するまでに時間を要する場合があります。

宗教的な配慮も重要な要素です。イスラム教徒の外国人材の場合、礼拝時間の確保やハラル食品への配慮が必要となります。また、ラマダン期間中の勤務体制についても、事前に検討し適切な対応を準備する必要があります。

デメリット2:スムーズに意思疎通をはかれないことがある

言語の壁は外国人採用における最も基本的な課題の一つです。日本語能力試験(JLPT)でN2やN3レベルの資格を持つ外国人材であっても、実際の職場でのコミュニケーションでは困難を感じるケースが少なくありません。

特に問題となるのは、専門用語や業界特有の表現、敬語の使い分けなどです。これらは日本語学習では十分にカバーされない領域であり、実際の業務を通じて習得していく必要があります。また、非言語的なコミュニケーション(表情、身振り、間の取り方など)についても、文化的な違いにより誤解が生じる可能性があります。

コミュニケーションの問題は、業務効率の低下だけでなく、安全性の確保にも影響を与える可能性があります。特に製造業や建設業などの現場では、正確な指示の伝達と理解が事故防止の観点から極めて重要となります。

これらの課題に対処するためには、多言語対応マニュアルの作成、通訳の配置、日本語研修の実施などの対策が必要となります。また、日本人従業員に対しても、外国人材とのコミュニケーション方法についての研修を実施することが効果的です。

デメリット3:在留資格の取得や雇用の手続きなどの工数が発生・入社までに時間がかかる

外国人採用では、日本人の採用では不要な複雑な手続きが必要となります。在留資格の確認、変更申請、更新手続きなど、入管法に関連する手続きは専門的な知識を要し、企業の人事担当者にとって大きな負担となります。

特に海外から新たに外国人材を招聘する場合、在留資格認定証明書の交付申請から実際の入国まで、通常4~6ヶ月程度の期間を要します。この期間中は採用計画に空白が生じるため、事業運営に影響を与える可能性があります。

また、在留資格の種類によって就労可能な業務内容が制限されているため、採用後に業務内容を変更する際には在留資格の変更申請が必要となる場合があります。これらの手続きには専門的な知識と相当な時間を要するため、多くの企業では行政書士などの専門家に委託することになり、追加的なコストが発生します。

さらに、外国人雇用状況の届出、社会保険の加入手続き、税務関連の手続きなど、雇用開始後も継続的な事務処理が必要となります。これらの業務を適切に遂行するためには、担当者の専門知識の習得と業務体制の整備が不可欠です。

デメリット4:外国人雇用の知識が必要になる

外国人雇用には、入管法、労働基準法、社会保険法など、複数の法律に関する専門知識が必要となります。これらの法律は頻繁に改正されるため、常に最新の情報をキャッチアップし続ける必要があります。

特に重要なのは、不法就労助長罪の回避です。在留資格の確認を怠ったり、就労が認められていない外国人を雇用したりした場合、企業は刑事罰の対象となる可能性があります。このようなリスクを回避するためには、採用時の確認手続きを徹底し、定期的な在留資格の更新状況の把握が必要となります。

また、外国人材に対する労働条件は、原則として日本人と同等でなければならないという法的要件があります。これは単純に給与水準を同じにするだけでなく、昇進機会、研修機会、福利厚生などの全般的な待遇について公平性を確保する必要があることを意味します。

さらに、特定技能外国人を雇用する場合には、支援計画の作成と実施が義務付けられており、生活オリエンテーション、住居確保の支援、日本語学習の支援など、包括的なサポート体制の構築が求められます。


外国人採用の基本知識

雇用できる外国人の条件

雇用できる外国人の条件

外国人採用を検討する際に最初に理解すべきことは、すべての外国人が日本で就労できるわけではないということです。外国人が日本で適法に就労するためには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。

条件1:在留カードを所持している

在留カードは外国人にとっての身分証明書であり、日本に3ヶ月以上滞在する外国人に交付される重要な書類です。カードには氏名、国籍、生年月日、住所が記載されており、16歳以上の場合は顔写真も掲載されています。

外国人は在留カードを常時携帯することが法的に義務付けられており、不所持の場合は不法残留者とみなされ罰則の対象となります。企業が外国人を採用する際は、必ず在留カードの提示を求め、その真正性を確認する必要があります。

在留カードの確認においては、偽造や変造の可能性も考慮する必要があります。出入国在留管理庁では、在留カードの真正性を確認するためのアプリケーションを提供しており、これを活用することで確実な確認が可能です。

条件2:就労が認められている在留資格である

在留資格は外国人が日本に滞在するための法的根拠であり、現在29種類が設定されています。これらの在留資格は、就労の可否によって大きく3つのカテゴリーに分類されます。

◾️就労制限のない在留資格(身分系)

•永住者

•日本人の配偶者等

•永住者の配偶者等

•定住者

これらの在留資格を持つ外国人は、職種や労働時間に制限なく就労することができます。

◾️一定の範囲内で就労可能な在留資格(就労系)

•技術・人文知識・国際業務

•特定技能1号・2号

•技能実習1号・2号・3号

•高度専門職1号・2号

•経営・管理

•その他専門的職種

これらの在留資格では、許可された職種や業務内容の範囲内でのみ就労が可能です。

◾️就労が認められない在留資格

•留学

•家族滞在

•短期滞在

•研修

•文化活動

これらの在留資格を持つ外国人が就労するためには、資格外活動許可を取得する必要があります。

条件3:在留期限が切れていない

在留資格には必ず在留期間が設定されており、この期間を超えて日本に滞在することはできません。在留期間は在留カードに明記されており、企業は採用時だけでなく、雇用期間中も定期的に確認する必要があります。

在留期間の更新は外国人本人が行う手続きですが、企業としても更新手続きのサポートや、更新結果の確認を行うことが重要です。在留期間を超えて雇用を継続した場合、企業は不法就労助長罪に問われる可能性があります。

条件4:業務内容が在留資格で認められた範囲内である

就労系の在留資格では、許可された業務内容の範囲内でのみ就労が可能です。例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では、理学、工学、人文科学の分野に属する技術・知識を要する業務、または外国の文化に基盤を有する思考・感受性を要する業務に従事することができます。

単純労働や肉体労働は原則として認められておらず、大学等で学んだ専門知識を活かせる業務である必要があります。企業は採用時に、予定している業務内容が当該外国人の在留資格で認められているかを慎重に確認する必要があります。

在留資格の種類と就労可能範囲

外国人採用を成功させるためには、各在留資格の特徴と就労可能範囲を正確に理解することが不可欠です。ここでは、企業が採用する可能性の高い主要な在留資格について詳しく解説します。

技術・人文知識・国際業務

最も一般的な就労系在留資格の一つで、大学等を卒業した外国人材が主な対象となります。理学、工学、人文科学の分野における専門的な業務に従事することができ、具体的には以下のような職種が該当します。

•システムエンジニア、プログラマー

•機械設計、電気設計などの技術職

•通訳、翻訳

•海外営業、貿易業務

•語学教師(英会話学校等)

•デザイナー、企画職

在留期間は5年、3年、1年、3ヶ月のいずれかが許可され、更新が可能です。転職は可能ですが、業務内容が在留資格の範囲内である必要があります。

特定技能1号・2号

2019年に創設された比較的新しい在留資格で、人手不足が深刻な特定の産業分野において、一定の技能を有する外国人材の受け入れを目的としています。

◾️特定技能1号

•在留期間:1年、6ヶ月または4ヶ月(通算で上限5年)

•技能水準:相当程度の知識または経験を要する技能

•日本語能力:ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度

•家族の帯同:基本的に認められない

•対象分野:介護、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、ビルクリーニング、機械保全、電気・電子情報関連産業、鉄道、道路貨物運送業、リネンサプライ、陸上養殖業、木材産業

◾️特定技能2号

•在留期間:3年、1年または6ヶ月(更新回数に制限なし)

•技能水準:熟練した技能

•家族の帯同:要件を満たせば可能

•対象分野:建設、造船・舶用工業(2024年現在)

特定技能外国人を雇用する企業は、支援計画の作成と実施が義務付けられており、登録支援機関に委託することも可能です。

技能実習1号・2号・3号

開発途上国への技能移転を目的とした制度で、最長5年間の実習が可能です。ただし、2027年4月からは育成就労制度に移行する予定です。

•技能実習1号:入国1年目、基礎的な技能の習得

•技能実習2号:2~3年目、より実践的な技能の習得

•技能実習3号:4~5年目、指導的立場での技能の習得

技能実習生は原則として転職が認められておらず、実習実施者(企業)での継続的な実習が前提となります。

高度専門職1号・2号

高度な知識や技能を有する外国人材を対象とした在留資格で、ポイント制による評価が行われます。学歴、職歴、年収、年齢などの項目でポイントを算出し、70点以上で許可されます。

◾️高度専門職1号

•高度学術研究活動(大学教授、研究者等)

•高度専門・技術活動(IT技術者、技術開発者等)

•高度経営・管理活動(企業経営者、管理職等)

◾️高度専門職2号

•高度専門職1号で3年以上活動した者が対象

•在留期間の制限なし(無期限)

•活動制限の大幅な緩和

高度専門職の在留資格を持つ外国人は、優遇措置として配偶者の就労許可、親の帯同許可、永住許可要件の緩和などの特典があります。

法的な注意点と義務

外国人を雇用する企業には、日本人を雇用する場合とは異なる法的義務が課せられています。これらの義務を適切に履行しないと、刑事罰や行政処分の対象となる可能性があるため、十分な理解と対策が必要です。

外国人雇用状況の届出義務

すべての事業主は、外国人労働者の雇用開始時と離職時に、ハローワークに対して外国人雇用状況の届出を行う義務があります。この届出は、外国人労働者の適正な雇用管理と再就職支援を目的としており、怠った場合は30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

届出の内容には、外国人労働者の氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍・地域、住所、従事する業務内容などが含まれます。届出は雇用開始・離職の翌月末日までに行う必要があります。

不法就労助長罪の回避

外国人の不法就労を助長した事業主は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(またはその両方)に処せられる可能性があります。不法就労助長罪は故意犯であり、在留資格や在留期間を確認せずに外国人を雇用した場合でも、「知らなかった」では済まされません。

不法就労助長罪を回避するためには、以下の確認を徹底する必要があります。

•在留カードまたはパスポートの確認

•在留資格と業務内容の適合性確認

•在留期間の確認

•資格外活動許可の確認(該当する場合)

労働条件の同等性確保

外国人労働者に対する労働条件は、原則として日本人労働者と同等でなければなりません。これは労働基準法第3条の「国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」という規定に基づくものです。

同等性の確保は、単純に給与水準を同じにするだけでなく、以下の要素についても公平性を確保する必要があります。

•基本給、諸手当、賞与

•労働時間、休日、有給休暇

•昇進・昇格の機会

•研修・教育の機会

•福利厚生制度

社会保険の加入義務

外国人労働者も日本人労働者と同様に、要件を満たす場合は社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険)への加入が義務付けられています。

特に注意すべき点として、短期滞在者や技能実習生についても、雇用形態や労働時間によっては社会保険の加入対象となる場合があります。また、外国人労働者が母国に帰国する際の脱退一時金の手続きについても、適切な情報提供とサポートが求められます。


外国人採用の手順とプロセス

採用計画の策定

外国人採用を成功させるためには、まず綿密な採用計画の策定が不可欠です。日本人の採用と比較して、外国人採用には長期間を要し、より多くの準備が必要となるため、計画的なアプローチが重要となります。

採用目的の明確化

採用計画の第一歩は、外国人採用の目的を明確にすることです。目的によって求める人材像、採用手法、受け入れ体制が大きく異なるため、以下の観点から検討する必要があります。

人手不足の解消:即戦力となる人材の確保を目的とする場合
特定技能外国人や経験豊富な技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ人材が適しています。この場合、技能レベルや日本語能力を重視した選考基準を設定します。

グローバル展開の推進:海外進出や外国人顧客への対応強化を目的とする場合
語学力や文化的背景を重視した採用を行います。特に、進出予定国出身の人材や、該当地域での事業経験を持つ人材が価値を持ちます。

組織の多様性向上:イノベーション創出や組織活性化を目的とする場合
多様な背景を持つ人材の採用を重視します。この場合、国籍や専門分野のバランスを考慮した採用戦略を策定します。

受け入れ人数と時期の設定

外国人採用では、受け入れ人数と時期の設定が特に重要です。在留資格の申請や変更には一定の期間を要するため、事業計画と連動した現実的なスケジュールを設定する必要があります。

海外からの新規採用の場合、在留資格認定証明書の交付申請から実際の入社まで4~6ヶ月程度を要します。国内在住者の転職の場合でも、在留資格の変更が必要な場合は2~3ヶ月程度の期間を見込む必要があります。

また、外国人材の受け入れには、住居の確保、生活支援、研修プログラムの実施など、日本人採用では不要な準備が必要となります。これらの準備期間も考慮して、余裕を持ったスケジュールを設定することが重要です。

予算計画の策定

外国人採用には、日本人採用と比較して追加的なコストが発生します。主要なコスト項目と概算金額は以下の通りです。

◾️採用関連費用

•人材紹介会社への手数料:20~40万円

•送り出し機関への手数料:20~60万円(海外採用の場合)

•採用活動費(面接、選考等):10~20万円

◾️手続き関連費用

•在留資格申請委託費:10~25万円

•行政書士費用:5~15万円

•各種証明書取得費:5~10万円

◾️受け入れ準備費用

•住居確保・準備費:20~50万円

•渡航費:10~15万円(海外採用の場合)

•研修・教育費:10~30万円

◾️継続的な支援費用

•登録支援機関委託費:月額2~4万円(特定技能の場合)

•日本語研修費:月額1~3万円

•生活支援費:月額1~2万円

これらのコストを総合すると、外国人1名の採用には初年度で100~200万円程度の費用を見込む必要があります。ただし、助成金の活用や効率的な受け入れ体制の構築により、コストを削減することも可能です。

求人募集の方法

外国人材の求人募集には、日本人向けとは異なる手法とチャネルが効果的です。ターゲットとする人材の在留資格や所在地(国内・海外)によって、最適な募集方法を選択する必要があります。

国内在住外国人の採用

外国人向け求人サイトの活用:国内には外国人専門の求人サイトが複数存在し、多言語対応や在留資格別の検索機能を提供しています。主要なサイトには、Jobs in Japan、GaijinPot Jobs、Daijob.comなどがあります。これらのサイトでは、日本語能力や在留資格による絞り込み検索が可能で、効率的な募集が行えます。

人材紹介会社の利用:外国人採用に特化した人材紹介会社を利用することで、専門的なサポートを受けながら採用活動を進めることができます。人材紹介会社は、候補者のスクリーニング、在留資格の確認、面接の調整などを代行し、企業の負担を大幅に軽減します。

大学・専門学校との連携:外国人留学生の採用を検討する場合、大学や専門学校との連携が効果的です。多くの教育機関では外国人留学生向けの就職支援プログラムを実施しており、企業説明会やインターンシップの機会を提供しています。

海外からの直接採用

送り出し機関との連携:特定技能外国人や技能実習生の採用では、各国の送り出し機関との連携が一般的です。送り出し機関は、候補者の募集、選考、事前研修、渡航手続きなどを包括的にサポートします。

海外での採用活動:高度人材の採用では、現地での採用活動も有効です。海外の大学でのキャリアフォーラム参加、現地人材紹介会社との連携、オンライン面接の活用などにより、優秀な人材にアプローチすることができます。

政府間協定の活用:二国間協定に基づく人材交流プログラムを活用することで、信頼性の高い人材を確保することができます。例えば、EPA(経済連携協定)に基づく看護師・介護福祉士候補者の受け入れなどがあります。

書類選考と面接

外国人採用における書類選考と面接では、日本人採用とは異なる観点での評価が必要となります。言語能力、文化的適応性、在留資格の適合性など、外国人特有の要素を適切に評価する必要があります。

書類選考のポイント

在留資格の確認 最初に確認すべきは、候補者の在留資格と予定業務の適合性です。在留カードのコピーまたは在留資格証明書により、現在の在留資格、在留期間、就労制限の有無を確認します。

日本語能力の評価 日本語能力試験(JLPT)の級や、BJTビジネス日本語能力テストのスコアにより、基本的な日本語能力を評価します。ただし、これらの試験結果は参考程度に留め、実際のコミュニケーション能力は面接で確認することが重要です。

学歴・職歴の確認 外国の学歴については、文部科学省の外国大学・大学院認定制度や、各国の教育制度を参考に評価します。職歴については、業務内容の詳細確認と、日本での就労に活かせる経験の有無を評価します。

面接の実施方法

多言語対応の準備 候補者の日本語能力に応じて、通訳の手配や英語での面接実施を検討します。重要な労働条件や業務内容については、誤解を避けるため母国語での説明も併用することが効果的です。

文化的適応性の評価 日本の職場文化への適応可能性を評価するため、チームワーク、時間管理、上下関係に対する考え方などについて質問します。ただし、文化的な違いを否定的に評価するのではなく、相互理解と適応の可能性を探ることが重要です。

実技試験の実施 技術系職種では、実際の業務に近い実技試験を実施することで、技能レベルを客観的に評価できます。言語の壁を超えて能力を評価する有効な手段となります。

雇用契約と手続き

外国人との雇用契約では、日本人との契約に加えて、在留資格に関する事項や生活支援に関する内容を含める必要があります。また、各種手続きについても、外国人特有の要件があります。

雇用契約書の作成

必須記載事項 労働基準法に基づく一般的な記載事項に加えて、以下の外国人特有の事項を記載します。

•在留資格と在留期間

•業務内容の詳細(在留資格との適合性を明確化)

•在留期間更新時の取り扱い

•帰国時の手続き

多言語対応 重要な労働条件については、日本語に加えて外国人の母国語での記載も検討します。これにより、労働条件の理解不足によるトラブルを防止できます。

特定技能外国人の場合の特別事項 特定技能外国人との雇用契約では、支援計画の内容、登録支援機関の利用、帰国旅費の負担などについても明記する必要があります。

各種手続きの実施

外国人雇用状況の届出 雇用開始から翌月末日までに、ハローワークに外国人雇用状況届出書を提出します。この手続きは法的義務であり、怠った場合は罰則の対象となります。

社会保険の加入手続き 外国人労働者も要件を満たす場合は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険への加入が必要です。外国人特有の手続きとして、年金の脱退一時金に関する説明も行います。

税務手続き 外国人労働者の所得税については、居住者・非居住者の判定、租税条約の適用、年末調整の実施などについて適切に処理する必要があります。

在留資格申請・変更

外国人採用において最も複雑で重要な手続きが、在留資格に関する申請です。申請の種類や必要書類は、候補者の現在の状況と予定する業務内容によって大きく異なります。

在留資格認定証明書交付申請

海外から新たに外国人を招聘する場合に必要な手続きです。企業が申請人となり、出入国在留管理局に対して申請を行います。

◾️必要書類

•在留資格認定証明書交付申請書

•写真(4cm×3cm)

•返信用封筒

•申請人の履歴書

•卒業証明書・学位証明書

•雇用契約書または採用内定通知書

•企業の登記事項証明書

•企業の決算書類

•事業内容を明らかにする資料

審査期間 標準的な審査期間は1~3ヶ月程度ですが、申請内容や時期によってはより長期間を要する場合があります。

在留資格変更許可申請

国内在住の外国人が異なる在留資格に変更する場合に必要な手続きです。例えば、留学生が就職する際の「留学」から「技術・人文知識・国際業務」への変更などが該当します。

申請のタイミング 在留期間満了日の3ヶ月前から申請可能です。就職が決定した留学生の場合、卒業前から申請を開始することで、スムーズな就労開始が可能となります。

◾️審査のポイント

•学歴と業務内容の関連性

•企業の安定性と継続性

•適切な給与水準

•日本語能力

在留期間更新許可申請

現在の在留資格を維持したまま、在留期間を延長する手続きです。企業としては、外国人労働者の更新手続きをサポートし、更新結果を確認することが重要です。

◾️更新の要件

•在留資格に該当する活動を継続していること

•素行が不良でないこと

•独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること

•雇用・活動の継続性があること

入社準備とフォロー

外国人材の入社準備では、日本人とは異なる配慮と支援が必要となります。生活基盤の整備から職場での適応支援まで、包括的なサポート体制の構築が成功の鍵となります。

住居の確保と生活支援

住居確保の支援 外国人材にとって住居の確保は大きな課題の一つです。保証人の問題、言語の壁、文化的な違いなどにより、個人での住居確保は困難な場合が多くあります。企業としては、以下の支援を検討します。

•社宅・寮の提供

•不動産会社の紹介と同行

•保証人の代行サービスの利用

•家具・家電付き物件の斡旋

生活オリエンテーションの実施 日本での生活に必要な基本的な情報を提供するオリエンテーションを実施します。内容には、交通機関の利用方法、銀行口座の開設、携帯電話の契約、医療機関の利用方法、ゴミの分別方法などが含まれます。

行政手続きの支援 住民登録、国民健康保険の加入、マイナンバーカードの取得など、必要な行政手続きをサポートします。これらの手続きは日本語での対応が必要なため、企業の支援が重要となります。

職場での適応支援

メンター制度の導入 外国人材に対して日本人従業員をメンターとして配置し、業務面・生活面の両方でサポートを提供します。メンターは定期的な面談を通じて、困りごとの相談や適応状況の確認を行います。

日本語研修の実施 業務に必要な日本語能力の向上を目的とした研修を実施します。一般的な日本語に加えて、業界特有の専門用語や敬語の使い方など、実務に直結する内容を重視します。

文化研修の実施 日本の職場文化、ビジネスマナー、コミュニケーション方法について研修を実施します。これにより、文化的な違いによる誤解やトラブルを防止し、円滑な職場適応を促進します。

継続的なフォロー体制

定期面談の実施 入社後3ヶ月、6ヶ月、1年のタイミングで定期面談を実施し、適応状況や満足度を確認します。問題がある場合は早期に対策を講じることで、離職防止につなげます。

キャリア開発支援 外国人材の長期定着を図るため、キャリア開発の機会を提供します。研修参加の支援、資格取得の奨励、昇進・昇格の機会の提供などにより、モチベーションの維持・向上を図ります。

家族支援 配偶者や子どもを帯同している外国人材に対しては、家族向けの支援も重要です。配偶者の就職支援、子どもの教育相談、医療機関の紹介などを通じて、家族全体の日本での生活安定を支援します。


外国人採用の費用と期間

採用にかかる費用の内訳

外国人採用には、日本人採用と比較して多様で複雑な費用が発生します。これらの費用を事前に把握し、適切な予算計画を立てることが、成功する外国人採用の前提条件となります。

直接的な採用費用

人材紹介会社への手数料 国内在住の外国人材を採用する場合、人材紹介会社への手数料として年収の20~35%程度が一般的です。年収300万円の場合、60~105万円の手数料が発生します。外国人採用に特化した紹介会社では、在留資格の確認や手続きサポートも含まれるため、専門性に応じた手数料設定となっています。

送り出し機関への手数料 海外から直接採用する場合、現地の送り出し機関への手数料が必要となります。特定技能外国人の場合、20~60万円程度が相場となっており、国や機関によって大きく異なります。この費用には、候補者の募集、選考、事前研修、渡航準備などが含まれます。

採用活動費 面接や選考にかかる費用として、10~20万円程度を見込む必要があります。海外での面接を実施する場合は、担当者の渡航費や現地での活動費が追加で必要となります。オンライン面接の活用により、これらの費用を削減することも可能です。

手続き関連費用

在留資格申請関連費用 在留資格の申請や変更には、行政書士への委託費として10~25万円程度が必要です。企業が自社で手続きを行う場合でも、申請書類の作成や添付書類の準備に相当な時間と労力を要します。

各種証明書取得費用 海外からの採用では、学歴証明書、職歴証明書、無犯罪証明書などの取得費用として5~10万円程度が必要です。これらの書類は現地での取得が必要で、認証や翻訳の費用も含まれます。

受け入れ準備費用

住居確保・準備費用 外国人材の住居確保には、敷金・礼金、仲介手数料、家具・家電の購入費用として20~50万円程度が必要です。社宅や寮を提供する場合でも、外国人向けの設備改修や備品の準備費用が発生します。

渡航費用 海外からの採用では、航空券代として10~15万円程度が必要です。多くの場合、企業が負担することが一般的ですが、雇用契約で一定期間勤務しない場合の返還条項を設けることもあります。

継続的な支援費用

登録支援機関委託費用 特定技能外国人を雇用する場合、登録支援機関への委託費として月額2~4万円程度が継続的に発生します。この費用には、生活オリエンテーション、定期面談、各種相談対応などの支援業務が含まれます。

日本語研修費用 外国人材の日本語能力向上のための研修費として、月額1~3万円程度を見込む必要があります。企業内研修の実施や外部研修機関の利用など、様々な選択肢があります。

採用から入社までの期間

外国人採用では、候補者の現在の状況や必要な手続きによって、採用から実際の入社まで大幅に異なる期間を要します。適切なスケジュール管理と事前準備が、円滑な採用プロセスの実現に不可欠です。

国内在住者の採用期間

在留資格変更が不要な場合 既に適切な在留資格を持つ国内在住者を採用する場合、通常の日本人採用とほぼ同様の期間で進めることができます。募集開始から内定まで1~2ヶ月、入社準備期間を含めて2~3ヶ月程度が標準的です。

在留資格変更が必要な場合 留学生の就職など、在留資格の変更が必要な場合は追加期間が必要です。在留資格変更許可申請の審査期間として2~3ヶ月程度を要するため、全体で4~5ヶ月程度の期間を見込む必要があります。

海外からの新規採用期間

在留資格認定証明書交付申請 海外から新たに外国人を招聘する場合、最も時間を要するのが在留資格認定証明書の交付申請です。標準的な審査期間は1~3ヶ月ですが、申請内容や時期によってはより長期間を要する場合があります。

ビザ申請と入国準備 在留資格認定証明書の交付後、現地の日本領事館でのビザ申請に1~2週間、渡航準備に2~4週間程度を要します。全体として、採用決定から入国まで4~6ヶ月程度の期間が必要です[26]。

特定技能外国人の採用期間

国内在留者の場合 既に他の在留資格で日本に在住している外国人が特定技能に変更する場合、技能試験と日本語試験の受験、在留資格変更申請を含めて3~4ヶ月程度の期間を要します。

海外からの採用の場合 海外から特定技能外国人を受け入れる場合、技能試験・日本語試験の受験、在留資格認定証明書交付申請、ビザ申請、渡航準備を含めて4~6ヶ月程度の期間が必要です。

予算計画のポイント

外国人採用の予算計画では、初期費用と継続費用を分けて考え、中長期的な投資対効果を検討することが重要です。

初期投資の回収期間

外国人1名の採用にかかる初期費用は100~200万円程度ですが、適切に採用・育成を行えば2~3年で投資を回収できる場合が多くあります。特に、技術系職種や専門性の高い業務では、より短期間での回収も期待できます。

助成金の活用

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)では、就労環境整備費用の2/3(上限57万円)が助成されます。また、地方自治体独自の助成制度も多数存在するため、これらを効果的に活用することで実質的な負担を軽減できます。

段階的な導入による費用最適化

いきなり大規模な外国人採用を実施するのではなく、まずは少数から始めて段階的に拡大することで、費用対効果を確認しながら進めることができます。初期の成功事例を基に、効率的な採用・受け入れプロセスを確立し、単位あたりのコストを削減していくことが可能です。


外国人採用の注意点とリスク対策

法的コンプライアンスの確保

外国人採用において最も重要なのは、関連法令の遵守です。違反した場合、企業は刑事罰や行政処分の対象となるだけでなく、社会的信用の失墜というリスクも負うことになります。

不法就労助長罪の防止

不法就労助長罪は、外国人採用において最も重大なリスクの一つです。この罪は故意犯であり、「知らなかった」では済まされません。防止のためには、以下の確認を徹底する必要があります:

◾️採用時の確認事項

•在留カードまたはパスポートの原本確認

•在留資格と業務内容の適合性確認

•在留期間の確認

•資格外活動許可の有無確認(該当する場合)

•就労制限の内容確認

継続的な確認体制 採用時の確認だけでなく、雇用期間中も定期的な確認が必要です。在留期間の更新状況、在留資格の変更の有無、就労制限の変更などを継続的に把握し、記録として保管することが重要です。

労働条件の同等性確保

外国人労働者に対する差別的取扱いは法的に禁止されており、労働条件は原則として日本人と同等でなければなりません。同等性の確保は以下の観点から検討する必要があります。

賃金・待遇の同等性 基本給、諸手当、賞与、昇給・昇格の機会について、国籍を理由とした差別的取扱いは禁止されています。同じ職務内容であれば、同等の賃金体系を適用する必要があります。

労働時間・休日の同等性 労働時間、休憩時間、休日、有給休暇の付与について、日本人労働者と同等の条件を適用する必要があります。宗教的な配慮は可能ですが、労働条件の基本的な枠組みは同等である必要があります。

外国人雇用状況届出の徹底

外国人雇用状況の届出は法的義務であり、怠った場合は30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。届出の徹底のためには、以下の体制整備が必要です。

届出システムの構築
外国人の雇用開始・離職時に自動的に届出が行われるシステムを構築し、届出漏れを防止します。人事システムとの連携により、効率的な届出処理が可能となります。

担当者の教育
届出義務の内容、届出期限、必要書類について、担当者への教育を徹底します。法改正や制度変更についても、継続的な情報収集と教育が必要です。

文化・習慣の違いへの対応

外国人材との文化・習慣の違いは、適切に対応すれば組織の多様性向上につながりますが、無理解や偏見は深刻な問題を引き起こす可能性があります。

宗教的配慮の実施

礼拝時間への配慮
イスラム教徒の従業員に対しては、1日5回の礼拝時間への配慮が必要です。礼拝室の設置や、休憩時間の調整により対応することができます。

食事への配慮
ハラル食品、ベジタリアン対応など、宗教的・文化的な食事制限への配慮が必要です。社員食堂での対応や、外部ケータリングの利用などの方法があります。

宗教的祝日への配慮
各宗教の重要な祝日について理解し、可能な範囲で休暇取得に配慮します。ただし、業務への影響を最小限に抑えるため、事前の調整と計画が重要です。

コミュニケーション文化の違い

直接的vs間接的コミュニケーション 日本では間接的で曖昧な表現が好まれる傾向がありますが、多くの国では直接的で明確なコミュニケーションが一般的です。相互理解のため、コミュニケーションスタイルの違いについて教育を実施します。

上下関係の認識 階層的な組織文化に慣れていない外国人材に対しては、日本の職場における上下関係や敬語の使い方について丁寧に説明する必要があります。

コミュニケーション支援

言語の壁は外国人採用における最大の課題の一つですが、適切な支援体制により克服することができます。

多言語対応体制の整備

重要書類の多言語化 就業規則、安全マニュアル、緊急時対応手順などの重要書類について、主要言語での翻訳版を準備します。特に安全に関わる情報は、確実な理解を確保するため母国語での提供が重要です。

通訳・翻訳サービスの活用 重要な面談や研修では、必要に応じて通訳を配置します。また、日常的な翻訳ニーズに対応するため、翻訳アプリや翻訳サービスの活用も効果的です。

日本語学習支援

企業内日本語研修 業務に直結する日本語能力の向上を目的とした企業内研修を実施します。一般的な日本語に加えて、業界特有の専門用語や職場でのコミュニケーション方法を重点的に指導します。

外部研修機関との連携 地域の日本語学校や国際交流協会と連携し、外国人材の日本語学習を支援します。企業の費用負担により、継続的な学習機会を提供することで、長期的な能力向上を図ります。

定着率向上のための取り組み

外国人材の定着率向上は、採用投資の回収と組織の安定性確保の観点から極めて重要です。

メンタルヘルス支援

文化的適応ストレスへの対応 異文化環境での生活・就労は大きなストレスとなる場合があります。定期的な面談により心理的な負担を把握し、必要に応じて専門的なカウンセリングサービスを提供します。

孤立感の解消 外国人材が職場で孤立しないよう、積極的なコミュニケーションの機会を創出します。歓迎会、懇親会、文化交流イベントなどを通じて、日本人従業員との関係構築を促進します。

キャリア開発支援

明確なキャリアパスの提示 外国人材に対して、昇進・昇格の機会や将来のキャリア展望を明確に示します。これにより、長期的なモチベーションの維持と定着率の向上を図ります。

スキルアップ機会の提供 研修参加の支援、資格取得の奨励、社内外での学習機会の提供により、外国人材のスキルアップを支援します。これは個人の成長だけでなく、企業の競争力向上にもつながります。


外国人採用成功のポイント

受け入れ体制の整備

外国人採用の成功は、適切な受け入れ体制の整備にかかっています。単に人材を採用するだけでなく、組織全体で外国人材を受け入れる準備が必要です。

組織文化の変革

多様性への理解促進 外国人材の受け入れを機に、組織全体の多様性への理解を深めることが重要です。文化的背景の違いを価値として認識し、それを活かす組織文化の醸成が必要です。

偏見・差別の排除 無意識の偏見や差別的な言動を排除するため、全従業員を対象とした研修を実施します。多文化共生の重要性と、具体的な行動指針を明確に示すことが効果的です。

支援体制の構築

専任担当者の配置 外国人材の支援を専門に行う担当者を配置し、生活面・業務面の両方でサポートを提供します。担当者は外国人材との定期的な面談を通じて、問題の早期発見と解決を図ります。

相談窓口の設置 外国人材が気軽に相談できる窓口を設置し、多言語での対応を可能にします。労働条件、人間関係、生活上の困りごとなど、幅広い相談に対応できる体制を整備します。

研修・教育プログラム

効果的な研修・教育プログラムは、外国人材の早期戦力化と定着率向上の鍵となります。

入社時オリエンテーション

企業理念・文化の共有 企業の理念、価値観、文化について丁寧に説明し、外国人材の理解と共感を促進します。単なる情報伝達ではなく、対話を通じた相互理解の機会とすることが重要です。

業務内容の詳細説明 担当する業務の内容、責任範囲、期待される成果について具体的に説明します。曖昧な表現を避け、明確で理解しやすい説明を心がけます。

継続的な教育プログラム

段階的なスキルアップ 外国人材のスキルレベルに応じて、段階的な教育プログラムを実施します。基礎的な業務スキルから専門的な技術まで、体系的な学習機会を提供します。

日本人従業員との合同研修 外国人材と日本人従業員が一緒に参加する研修を実施し、相互理解と協力関係の構築を促進します。これにより、チーム全体のパフォーマンス向上を図ります。

職場環境の改善

外国人材が能力を最大限に発揮できる職場環境の整備が重要です。

物理的環境の整備

多言語表示の設置 安全標識、案内表示、緊急時対応手順などについて、多言語での表示を設置します。特に安全に関わる情報は、確実な理解を確保するため重点的に対応します。

宗教的配慮のためのスペース確保 礼拝室や瞑想スペースの設置により、宗教的な配慮を行います。専用スペースの確保が困難な場合でも、多目的室の一時的な利用などの配慮が可能です。

心理的安全性の確保

オープンなコミュニケーション 外国人材が自由に意見を述べ、質問できる環境を整備します。言語の不安から発言を控えることがないよう、積極的な発言を促す雰囲気作りが重要です。

失敗を恐れない文化 文化や言語の違いによる失敗を責めるのではなく、学習の機会として捉える文化を醸成します。これにより、外国人材の積極的な挑戦と成長を促進します。

長期的な人材育成

外国人材を単なる労働力ではなく、企業の重要な人的資源として育成することが、持続的な成功につながります。

キャリア開発計画の策定

個別キャリアプランの作成 各外国人材の能力、志向、将来目標を踏まえた個別のキャリア開発計画を策定します。定期的な見直しと更新により、変化するニーズに対応します。

昇進・昇格機会の提供 外国人材に対しても、能力と成果に応じた昇進・昇格の機会を公平に提供します。これにより、長期的なモチベーションの維持と組織への貢献意欲の向上を図ります。

専門性の向上支援

資格取得支援 業務に関連する資格の取得を支援し、外国人材の専門性向上を促進します。費用負担や学習時間の確保により、積極的な資格取得を奨励します。

社外研修への参加支援 業界団体や専門機関が主催する研修への参加を支援し、最新の知識・技術の習得機会を提供します。これにより、企業全体の技術力向上にも貢献します。


まとめ

日本の外国人採用は、今後さらなる拡大と制度の充実が予想されます。2025年の制度改正により、特定技能制度の対象分野拡大、育成就労制度の創設など、外国人材受け入れの枠組みは大幅に拡充されています。

少子高齢化の進行により、国内の労働力不足は今後も深刻化することが予想され、外国人材への依存度はさらに高まると考えられます。一方で、国際的な人材獲得競争も激化しており、日本企業には魅力的な労働環境と成長機会の提供が求められています。

技術革新の進展により、リモートワークやデジタル技術を活用した新しい働き方も普及しており、これらの変化は外国人採用にも大きな影響を与えています。地理的な制約を超えた人材活用や、多様な働き方への対応が、今後の外国人採用成功の鍵となるでしょう。

「すごい人事」情報局運営元:株式会社Crepe
Crepeでは、「人事が変われば、組織が変わる」というコンセプトのもと、

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