人事DX(HRDX)とは?効率化できる業務や事例を解説

最終更新日:2025年9月9日

近年、ビジネス界で注目を集める「デジタルトランスフォーメーション(DX)」。その波は、企業経営の根幹をなす「人事」の領域にも大きな変革をもたらしています。それが「人事DX(HRDX)」です。本記事では、人事DXの基本的な概念から、具体的な業務効率化の事例、そして導入を成功させるためのポイントまで、人事責任者や経営者の皆様に向けて網羅的に解説します。

目次

人事DX(HRDX)とは?

人事DX(HRDX)とは?

HRDXの定義と意味

人事DX(HRDX)とは、「Human Resource Digital Transformation」の略称であり、デジタル技術を活用して人事業務を根本から変革し、企業の競争優位性を高めるための戦略的な取り組みを指します。単に従来の業務をデジタルツールに置き換える「デジタル化」とは一線を画し、データに基づいた意思決定を可能にすることで、人事部門をコストセンターからプロフィットセンターへと転換させることを目指します。

経済産業省が示すDXの定義は、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とされています。HRDXは、このDXの考え方を人事領域に適用したものであり、人材採用、育成、評価、労務管理といったあらゆる人事業務を再構築し、経営戦略と連動した戦略的な人事機能の実現を目指すものです。

HRIS(人事情報システム)とは

HRIS(人事情報システム)とは?

HRISは、Human Resources Information System(人事情報システム)の略語です。HRISは、従業員の基本情報、スキルデータ、パフォーマンス情報、エンゲージメントなどのマインドデータを一元的に管理・表示できるデータベースシステムを指します。

HRISの特徴は、単なるデータの保管庫ではなく、蓄積されたデータを分析し、人事戦略の立案や意思決定に活用できる点にあります。HRISを使用して分析されたデータをもとに、優秀な人材の発掘、適材適所の配置、組織パフォーマンスの改善が可能となり、戦略人事の実現のためには必須のツールとなっています。

従来の人事業務との違い

従来の人事業務は、給与計算や勤怠管理、社会保険手続きといった定型的なオペレーション業務に多くの時間が割かれていました。これらの業務は、紙やExcelを中心としたアナログな管理が主流であり、非効率的でミスが発生しやすいという課題を抱えていました。

一方、HRDXは、これらの定型業務をデジタルツールによって自動化・効率化することで、人事担当者をオペレーション業務から解放します。そして、創出された時間を、人材育成計画の策定、組織開発、エンゲージメント向上といった、より戦略的で付加価値の高い業務に振り向けることを可能にします。つまり、HRDXは、人事部門の役割を「管理」から「戦略」へとシフトさせるための重要な鍵となるのです。

人事とDX推進の関係

企業のDX推進において、人事部門は単なる支援部門ではなく、中核的な役割を担う存在です。なぜなら、DXの成功は技術の導入だけでなく、組織文化の変革と人材の意識改革に大きく依存するからです。ここでは、DX推進における人事部門の多面的な役割について詳しく解説します。

戦略人事の観点でのDX推進

戦略人事とは、企業の経営戦略を実現するために人事施策を実行するという考え方です。企業が置かれた外部環境と内部環境を適切に理解し、分析したうえで、本当に今必要な最適な取り組みを実行します。

現代のビジネス環境において、企業が今後も成長し続けるためには、DX化が必須となっています。そのうえで、人と組織の観点から、どのようにDXを推進していくべきかを考えるのが、戦略人事としての人事部門の重要な役目です。

具体的には、DX推進に必要な人材の要件定義、採用戦略の策定、既存社員のリスキリング計画、DX人材の育成プログラム設計、組織構造の見直しなどが挙げられます。これらの施策を通じて、人事部門はDXを支える人的基盤の構築を担います。

また、戦略人事の実現には、人事部門自体がデータドリブンな意思決定を行える体制を整備することも重要です。人材データの分析を通じて、組織の現状を客観的に把握し、経営戦略に沿った人事戦略を立案・実行することが求められます。

社内のDX推進における人事部門の役割

人事部門は、企業全体のDX推進において中心的な役割を担う場合があります。DX推進は、経営企画や専任部署が旗振り役になることもありますが、特にBtoC企業やサービス業など「労働集約型」の企業では、人材が付加価値を生む中心的な資本であるため、人事部門がDXの旗振り役になることが効果的です。

人事部門が旗振り役になることの利点は、急激な変革ではなく、従業員教育やDX人材の採用を通じた段階的で持続可能なDX推進が可能になることです。技術的な変革だけでなく、組織文化や働き方の変革も同時に進めることができるため、従業員の理解と協力を得やすくなります。

また、DXには組織風土の改革が欠かせません。特に、製造業など、アナログで職人気質の文化が強い企業では、人事が中心となってDXとともに組織風土の改革を行うことが重要です。人事部門は、従業員との接点が多く、組織全体の状況を把握しているため、変革に対する抵抗を最小限に抑えながら、効果的な変革を推進できます。

DX教育の推進

DXを実現するには、経営層から現場の従業員まで、組織全体がDXの概念を理解する必要があります。同時に、企業がDXを通じて何を実現したいのかを、従業員全員が共通認識として持つことも欠かせません。

そのため、DX推進の初期段階では、役員や従業員に対するDXの概念教育や、認識を合わせるためのワークショップの開催が必要になります。こうした取り組みに、人事部門は積極的に関わる役目を負います。

具体的な教育内容としては、DXの基本概念、デジタル技術の活用方法、データリテラシーの向上、新しい働き方への適応などが挙げられます。また、階層別や職種別に最適化された教育プログラムを設計し、従業員一人ひとりが自分の業務にDXをどう活かせるかを理解できるよう支援することが重要です。

HRDXで効率化できる業務項目を網羅的に解説

HRDXは、人事領域のあらゆる業務を効率化し、高度化する可能性を秘めています。ここでは、具体的にどのような業務がHRDXによって変革されるのか、その全体像を網羅的に解説します。

人事DX(HRDX)で効率化できる業務項目

採用業務の効率化

採用業務は、企業の成長を支える人材を獲得するための重要なプロセスですが、多くの工数がかかる業務でもあります。HRDXは、採用プロセス全体をデジタル化し、データに基づいた戦略的な採用活動を可能にします。

AIを活用した書類選考の自動化
AIを活用することで、応募者のレジュメを自動的に解析し、求めるスキルや経験とマッチする候補者を瞬時にスクリーニングできます。これにより、採用担当者は膨大な数の応募書類に目を通す手間から解放され、有望な候補者とのコミュニケーションに集中できます。

採用プロセスのデジタル化
応募者管理システム(ATS)を導入することで、応募から採用までの進捗状況を一元管理できます。面接日程の調整や合否連絡などもシステム上で完結するため、抜け漏れや遅延を防ぎ、候補者体験の向上にも繋がります。

オンライン面接・選考
Web会議システムを活用したオンライン面接は、地理的な制約なく優秀な人材にアプローチできるだけでなく、移動時間やコストの削減にも貢献します。

人事評価・パフォーマンス管理の効率化

人事評価は、従業員のモチベーションや成長に直結する重要な制度ですが、評価プロセスの煩雑さや評価基準の曖昧さが課題となるケースが多く見られます。HRDXは、評価プロセスを透明化し、客観的なデータに基づいた公正な評価を実現します。

評価プロセスのデジタル化
タレントマネジメントシステムを導入することで、目標設定(MBO)、自己評価、上司評価、フィードバックといった一連の評価プロセスをシステム上で完結できます。評価シートの配布や回収といった手間が不要になり、評価業務全体を大幅に効率化できます。

パフォーマンスデータの可視化
従業員の日々の業務成果や目標達成度をリアルタイムで可視化し、継続的なフィードバックを可能にします。これにより、年に1〜2回の形式的な評価ではなく、日常的なパフォーマンス向上を支援できます。

360度評価の自動化
上司だけでなく、同僚や部下からもフィードバックを得る360度評価は、多角的な視点から従業員の強みや課題を把握できる有効な手法ですが、運用が煩雑でした。HRDXツールを使えば、匿名性を担保しながら、効率的に360度評価を実施できます。

労務管理・勤怠管理の効率化

労務管理や勤怠管理は、コンプライアンス遵守の観点からも極めて重要ですが、手作業による集計やチェックには多くの時間がかかります。HRDXは、これらの定型業務を自動化し、人事担当者の負担を軽減します。

勤怠データの自動集計
クラウド型の勤怠管理システムを導入すれば、従業員の打刻データが自動的に集計され、残業時間や有給休暇の取得状況などをリアルタイムで把握できます。法改正にも自動で対応するため、コンプライアンスリスクを低減できます。

各種申請・承認プロセスの電子化
休暇申請や残業申請、住所変更といった各種手続きを電子化することで、申請・承認プロセスを迅速化し、ペーパーレス化を実現します。

給与計算業務の効率化

給与計算は、毎月発生する定型業務でありながら、計算ミスが許されない非常にデリケートな業務です。HRDXは、給与計算プロセスを自動化し、正確性と効率性を両立させます。

給与計算の自動化
勤怠管理システムや人事情報システムと連携した給与計算ソフトを導入することで、勤怠データや従業員情報が自動的に反映され、給与計算から明細発行までを自動化できます。

社会保険手続きの効率化
従業員の入退社に伴う社会保険や雇用保険の手続きも、電子申請に対応したシステムを導入することで、役所に出向くことなくオンラインで完結できます。

人材育成・研修業務の効率化

従業員のスキルアップやキャリア開発を支援する人材育成は、企業の持続的な成長に不可欠です。HRDXは、従業員一人ひとりに最適化された学習機会を提供し、効果的な人材育成を支援します。

eラーニング(LMS)の導入
学習管理システム(LMS)を導入することで、従業員は時間や場所を選ばずに学習を進めることができます。研修の受講履歴やテスト結果なども一元管理できるため、学習効果の測定も容易になります。

スキルマップの可視化
従業員一人ひとりのスキルや資格をデータベース化し、組織全体のスキル保有状況を可視化します。これにより、戦略的に不足しているスキルを特定し、効果的な研修プログラムを企画できます。

人材配置・組織編制の効率化

適材適所の人材配置は、組織の生産性を最大化するための重要な鍵です。HRDXは、従業員のスキルや経験、キャリア志向といったデータを活用し、最適な人材配置を支援します。

スキルマッチング
従業員のスキルや経験と、各ポジションで求められる要件をマッチングさせ、最適な配置候補者をリストアップします。これにより、勘や経験に頼らない、客観的なデータに基づいた配置決定が可能になります。

後継者育成(サクセッションプラン)
将来のリーダー候補となる人材を発掘し、計画的に育成するためのサクセッションプランの策定を支援します。優秀な人材の離職を防ぎ、組織の持続的な成長を支えます。

エンゲージメント管理の効率化

従業員エンゲージメント(仕事に対する熱意や貢献意欲)は、企業の業績と密接な関係があることが知られています。HRDXは、従業員のエンゲージメントを可視化し、向上させるための具体的な施策の立案を支援します。

パルスサーベイの実施
短い周期で簡単なアンケート(パルスサーベイ)を実施し、従業員のコンディションをリアルタイムで把握します。エンゲージメントの低下を早期に察知し、迅速な対策を講じることができます。

離職予測分析
従業員の勤怠データや行動データなどを分析し、離職の兆候がある従業員を予測します。個別のフォローアップを行うことで、優秀な人材の離職を未然に防ぎます。

人事データ分析・レポーティングの効率化

HRDXの真価は、人事に関するあらゆるデータを一元的に収集・分析し、経営の意思決定に活用できる点にあります。いわゆる「ピープルアナリティクス」の実践です。

人材ダッシュボード
従業員数、平均年齢、男女比、離職率といった基本的な人事データをダッシュボードで可視化し、組織の状態をリアルタイムで把握できます。

人事KPIのモニタリング
採用コスト、定着率、エンゲージメントスコアといった重要な人事KPIを継続的にモニタリングし、人事戦略の進捗状況を評価します。

レポーティングの自動化
経営会議などで必要となる人事関連のレポートを自動で生成し、レポーティング業務にかかる時間を大幅に削減します。

【日本企業事例】HRDXで業務効率化を実現した成功事例

日本国内でも、多くの企業がHRDXに積極的に取り組み、具体的な成果を上げています。ここでは、特に注目すべき5社の成功事例を、その背景、取り組み、そして導入後の効果とともに詳しく紹介します。

富士通株式会社:OneFujitsuプロジェクトによる人事業務改革

経営の視点で「ビジネスモデルの変革のために社員一人ひとりの力を最大活用する」こと、業務の視点では「個別最適ではなくすべてを超えたひとつの富士通で最適化する」こと、そしてグローバルレベルITの標準化を推進していくことがデータドリブン経営を成功へと結びついていきます。

電気機器メーカー大手の富士通株式会社は、DX企業への変革を目指す全社的な「OneFujitsuプロジェクト」の一環として、人事領域のDXを強力に推進しています。

背景・課題
同社は、グローバルで12万人を超える従業員を抱えていますが、従来の人事システムは国やリージョンごとにサイロ化しており、データが分散していました。これにより、グローバルでの統一された人事戦略の策定や、ジョブ型人事制度への移行が困難であるという課題がありました。

取り組み
課題解決のため、同社はSAP社のクラウド型人事システム「SAP SuccessFactors」を導入。これにより、全世界の従業員情報を一元的に管理する基盤を構築しました。

効果
人事データの一元化により、グローバルでの人材情報の可視化が実現しました。これにより、データに基づいた適材適所の人材配置や、ジョブ型人事制度の本格導入が可能になりました。また、これまで各国で行っていた人事業務の標準化・効率化も進み、グローバルでのシェアードサービス構築に向けた大きな一歩となっています。

日立グループ:グローバル人事情報システム(HRIS)の導入

総合電機メーカーの日立グループは、グローバルでの持続的な成長を目指し、早くから人事領域のDXに取り組んできました。

背景・課題
グローバルに多様な事業を展開する同社にとって、世界中の優秀な人材を発掘し、事業を越えて最適に配置することが重要な経営課題でした。

取り組み
2018年、同社はグローバルで統一された人事情報システム(HRIS)を導入。全世界で5万人以上の従業員情報をデータベース化し、経営層や管理職が人材情報を多角的に分析できる「人材ダッシュボード」を整備しました。

効果
HRISの導入により、これまで見えにくかった海外拠点の優秀な人材の発掘が容易になりました。また、人材ダッシュボードを通じて、データに基づいた客観的な視点から組織編制や後継者計画を検討できるようになり、戦略的な人事の意思決定を強力にサポートしています。今後は、登録規模を関連会社の従業員も含めた30万人にまで拡大する計画です。

日本マイクロソフト株式会社:自社ツールを活用したDX推進

ソフトウェア開発大手の日本マイクロソフト株式会社は、自社製品・サービスを徹底的に活用し、先進的な働き方を自ら実践することで知られています。

背景・課題
テレワークやハイブリッドワークが常態化する中で、従業員の働きがいやエンゲージメントをいかに維持・向上させるかが課題でした。

取り組み
同社は、コミュニケーションツール「Microsoft Teams」や、従業員の働き方を分析する「Microsoft Viva Insights」といった自社ツールを最大限に活用。従業員のコラボレーション状況や会議時間、時間外労働の傾向などをデータで可視化し、働き方の改善に繋げています。

効果
データ分析に基づき、非効率な会議の削減や、従業員の集中時間を確保するための施策などを実施。これにより、生産性の向上とワークライフバランスの実現を両立させています。また、「ワークライフ・チョイス」と名付けたプロジェクトでは、週休3日制(週4日勤務)のトライアルも行い、大きな注目を集めました。自社での実践で得られた知見やデータは、顧客へのソリューション提案にも活かされています。

株式会社セールスフォース・ジャパン:完全デジタル化による人材育成

クラウド型CRMソリューションで世界をリードする株式会社セールスフォース・ジャパンは、人材育成から人事評価に至るまで、徹底したデジタル化を推進しています。

背景・課題
急速な事業成長を支えるためには、従業員の継続的なスキルアップとパフォーマンス向上が不可欠でした。

取り組み
同社は、自社のタレントマネジメントシステムを活用し、従業員一人ひとりの日々の業務成果やスキルレベルをデータとして蓄積。パフォーマンスが低下している従業員や、特定のスキルが不足している従業員に対して、システムが自動的に最適なオンライントレーニングを推奨(レコメンド)する仕組みを構築しました。

効果
データに基づいた個別最適化されたトレーニングにより、従業員は効率的にスキルアップを図ることができます。これにより、組織全体のパフォーマンス向上と、自律的な学習文化の醸成に成功しています。

ホクト株式会社:タレントマネジメントシステムによる透明性向上

きのこ生産大手のホクト株式会社は、人事評価の効率化と人材情報の可視化を目的に、HRDXを推進しました。

背景・課題
従来の人事評価は紙ベースで行われており、評価プロセスの非効率性や、評価結果の管理・活用が課題でした。また、健康経営に関する情報開示など、外部からの要請に応えるためにも、人材データの一元管理が急務でした。

取り組み
同社は、タレントマネジメントシステムを導入し、人材データの一元管理と人事評価プロセスの完全なWeb化を実現しました。

効果
人事評価にかかる工数が大幅に削減されただけでなく、評価プロセスの透明性も向上しました。また、役職に応じて人材データの閲覧権限を設定することで、現場の管理職も自部署のメンバーの情報を適切に把握できるようになり、より効果的なマネジメントが可能になりました。

【海外企業事例】グローバル企業のHRDX先進事例

海外では、日本以上にHRDXが進んでおり、AIやデータ分析を駆使した先進的な取り組みが数多く見られます。ここでは、グローバルに事業を展開する3社の事例を紹介します。

AstraZeneca:Workday導入による世界規模の人事データ活用

イギリスに本拠を置く世界的な製薬会社AstraZeneca(アストラゼネカ)は、全社的な人事機能の強化を目指し、タレントマネジメントシステム「Workday」をグローバルで導入しました。

背景・課題
グローバルで統一された人事戦略を実行するためには、世界中の従業員データを一元的に把握し、活用できる基盤が必要でした。

取り組み
Workdayの導入により、同社は初めて単一の従業員データベースを構築。これにより、社員とマネージャーは、モバイルやデスクトップから常に最新の人事情報にアクセスできるようになりました。

効果
人事データが一元化されたことで、データに基づいた客観的な意思決定(データドリブンな意思決定)が組織全体に浸透しました。特に、人材開発に重点を置いた人事戦略の立案・実行が可能になり、活気に満ちた優秀な企業文化の形成に繋がっています。

Dell:BIツールを活用したデータドリブン人事戦略

コンピュータ・テクノロジー大手のDell(デル)は、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを積極的に活用し、データに基づいた人事戦略を実践しています[4]。

背景・課題
優秀な人材の獲得競争が激化する中で、勘や経験だけに頼るのではなく、データを用いて採用や人材配置の精度を高める必要がありました。

取り組み
同社は、BIツールを用いて、採用候補者のスキルや経験、過去のパフォーマンスといった様々なデータを分析し、入社後の活躍度合いを予測するモデリングを行っています。

効果
データ分析に基づいた採用活動により、採用のミスマッチが減少し、入社後の定着率やパフォーマンスの向上に繋がっています。また、同様の分析手法を既存社員にも適用し、最適な人材配置や育成計画の策定にも活用しています。

IBM:Watson活用による人材育成のAI化

テクノロジー企業の巨人であるIBMは、自社開発のAI「IBM Watson」を人事領域に全面的に活用しています。

背景・課題
従業員一人ひとりのキャリア志向やスキルレベルが多様化する中で、画一的な研修プログラムでは効果的な人材育成が困難になっていました。

取り組み
IBMは、Watsonを活用したキャリアコーチング・プラットフォームを開発。このプラットフォームは、従業員のスキル、経験、興味、そして社内のキャリアパスのデータを分析し、一人ひとりに最適な学習コンテンツやキャリアの機会を推奨します。

効果
AIによる個別最適化されたキャリア支援により、従業員は自律的にキャリアをデザインし、必要なスキルを習得することができます。これにより、従業員のエンゲージメント向上と、ビジネス環境の変化に迅速に対応できる人材の育成を両立させています。

成功のポイントと注意点

経営層のコミットメント
HRDXは、人事部門だけの取り組みではありません。経営トップがその重要性を理解し、強力なリーダーシップを発揮することが成功の絶対条件です。

現場の巻き込み
HRDXの推進には、現場の従業員の協力が不可欠です。導入の目的やメリットを丁寧に説明し、当事者意識を持ってもらうことが重要です。「やらされ感」ではなく、共に変革を進めるパートナーとして巻き込んでいきましょう。

データ活用の文化醸成
ツールを導入するだけではデータは活用されません。データに基づいた意思決定を組織文化として根付かせるための意識改革や、データを読み解くためのリテラシー教育が必要です。

セキュリティ対策
従業員の個人情報という機密性の高いデータを取り扱うため、セキュリティ対策は万全を期す必要があります。信頼性の高いツールを選定するとともに、社内の情報管理体制を強化しましょう。

まとめ

本記事では、人事DX(HRDX)の基本概念から、効率化できる業務、国内外の先進事例、そして成功へのアプローチまでを包括的に解説してきました。

HRDXは、もはや一部の先進企業だけのものではありません。労働人口の減少、働き方の多様化といった構造的な変化に直面するすべての企業にとって、持続的な成長を実現するための必須の経営戦略です。

人事責任者、そして経営者の皆様に求められるのは、HRDXを単なる「業務改善」や「コスト削減」の手段として捉えるのではなく、「企業価値向上のための戦略的投資」として位置づけ、強い意志を持って推進することです。

まずは、自社の人事領域における課題を洗い出し、どこからHRDXに着手すべきか、小さな一歩から検討を始めてみてはいかがでしょうか。本記事で紹介した事例やアプローチが、その一助となれば幸いです。

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Crepeでは、「人事が変われば、組織が変わる」というコンセプトのもと、

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