「オウンドメディアリクルーティング」で採用成果を出すポイントを解説

現代の採用市場は、労働人口の減少と求職者の価値観の変化により、従来の採用手法だけでは優秀な人材を確保することが困難になっています。求職者は企業の公式情報だけでなく、実際に働く社員の生の声や企業文化について詳細な情報を求めており、インターネットやSNSを活用して企業について徹底的に調べ上げてから応募を決定する傾向が強まっています。

このような状況の中で注目されているのが「オウンドメディアリクルーティング」です。サイバーエージェント、メルカリ、トヨタ自動車といった業界をリードする企業が積極的に取り組み、実際に成果を上げています。従来の求人サイトや人材紹介会社に依存した採用活動から脱却し、自社が主体となって採用活動を展開するこの手法は、求職者のニーズの変化に対応した新しい採用戦略として位置づけられています。

本記事では、オウンドメディアリクルーティングの基本概念から具体的な実施方法、成功企業の事例まで、解説いたします。

目次

オウンドメディアリクルーティングとは何か

基本的な定義と概念

オウンドメディアリクルーティングとは、企業が自社で保有・運営するメディアを活用して採用活動を行う手法です。ここでいう「オウンドメディア」とは、企業が独自に運営するホームページ、採用サイト、ブログ、SNSアカウント、ポッドキャスト、メールマガジンなど、あらゆる自社メディアを指します。

この手法の最大の特徴は、企業が採用活動の主導権を握り、自社の価値観や企業文化を自由に、そして深く発信できることです。従来の求人サイトでは文字数制限やフォーマットの制約により企業の魅力を十分に伝えることが困難でしたが、オウンドメディアリクルーティングでは、そうした制約から解放され、企業が本当に伝えたいメッセージを最適な形で求職者に届けることができます。

他の採用手法との比較

求人サイトは転職を積極的に検討している求職者に即効性のあるアプローチが可能ですが、掲載期間の制限、文字数やスペースの制約、画一的なレイアウトなどの制約があります。人材紹介会社では専任コンサルタントによる即効性が期待できますが、成功報酬として転職者の年収の30-35%程度の高額な費用が発生します。

オウンドメディアリクルーティングでは、掲載期間や内容に制限がなく、企業の魅力を最大限にアピールできます。一度構築したコンテンツは資産として蓄積され、長期的に活用できるため、コストパフォーマンスの面でも優れています。また、企業について深く理解した求職者からの応募が期待できるため、面接での相互理解が深まりやすく、入社後のミスマッチも減少する傾向があります。

オウンドメディアリクルーティングのメリット・デメリット

オウンドメディアリクルーティング6つのメリット

1.ミスマッチの減少と質の高い採用の実現
オウンドメディアでは、企業の思想や理念、社風、実際の働き方、チームの雰囲気、成長機会など、求職者が本当に知りたい情報を詳細に発信できます。社員インタビューや職場環境の紹介により、求職者は入社後の自分をより具体的にイメージでき、企業の価値観に共感した質の高い人材からの応募が期待できます。

2.自社認知度の向上と採用ブランディング効果
継続的な情報発信により、検索エンジンからの流入が増加し、これまで企業を知らなかった潜在的な求職者にもリーチできます。SNSでのシェア機能も活用することで、企業の露出機会が大幅に拡大し、「働きがいのある会社」「成長できる環境」といったポジティブなイメージを構築できます。

3.自社の魅力を効果的に伝達
掲載情報に制限がないため、企業の強みや魅力を具体的かつ詳細にアピールできます。写真や動画を豊富に活用し、社員のインタビューや企業の取り組みを自由なフォーマットで紹介することで、企業の魅力をより分かりやすく、より印象的に伝えることができます。

4.自社の採用力向上と組織の成長
自社が主体となって採用活動を行うことで、求める人物像の明確化、自社の魅力の再発見、業界での立ち位置の客観視など、採用活動を通じて組織全体の成長を促すことができます。アクセス数や応募数などのデータを蓄積・分析し、継続的に改善することで採用力を高めることができます。

5.転職潜在層へのアプローチ拡大
Web検索やSNSを通じて、転職を積極的に検討していない潜在層にもアプローチできます。継続的なコンテンツ発信により、潜在層との接点を創出し、企業への関心を徐々に高めていくことで、将来的な採用につなげることができます。

6.施策内容の資産化と長期的価値創出
自社が保有するメディアであるため、公開を停止しない限り施策内容が資産として残り続けます。コンテンツを蓄積していけば、検索でページを見つけてもらう窓口が増え、資産価値を継続的に高めることができます。

注意すべきデメリットと対策

即効性の欠如
コンテンツ制作から検索エンジンでの上位表示、求職者の認知獲得まで通常3ヶ月から6ヶ月以上の時間が必要です。対策として、従来の採用手法と組み合わせたハイブリッド戦略を採用し、短期的な採用ニーズには求人サイトや人材紹介を活用しながら、中長期的な採用力強化にオウンドメディアリクルーティングを活用することが効果的です。

継続的な運用コストと専門知識の必要性
継続的なコンテンツ制作、サイト運営、効果測定と改善には相応の人的リソースと予算が必要です。また、Webサイトの構築・運営、SEO対策、コンテンツマーケティングなどの専門知識が求められます。段階的な導入アプローチにより、最初は既存プラットフォームを活用してノウハウを蓄積し、効果確認後に独自サイト構築に移行することが現実的です。

成功企業の事例から学ぶ実践ポイント

大企業の成功事例

出典:CyberAgent Way

サイバーエージェント「CyberAgent Way」
同社のオウンドメディアは、コンテンツの種類を社員インタビューと事業の取り組み解説の2つに絞り込んでいることが特徴です。多様な企画を展開するのではなく、目的を明確にして運用することで、伝えたいメッセージを確実に求職者に届けています。採用ページへの直接的な誘導を最小限に抑え、企業理解の促進に注力することで、質の高い候補者との長期的な関係構築を実現しています。

出典:mercan

メルカリ「mercan」
2016年から運営している「mercan」は、経営陣が積極的にコミットしていることが最大の特徴です。経営陣自身が記事の制作に関わり、完成した記事を自らのSNSでシェアするなど、会社全体でオウンドメディアリクルーティングに取り組んでいます。経営戦略の一環として位置づけることで、必要なリソース確保と継続的な運用を可能にしています。

出典:トヨタイムズ

トヨタ自動車「トヨタイムズ」
採用候補者だけでなく、一般消費者、株主、地域社会など幅広いステークホルダーに向けた読み物として展開しています。社員インタビューに加えて、車に関する情報、スポーツ事業への取り組みなど幅広いコンテンツにより、多様な背景を持つ人材からの関心を集めています。

成功事例から見える共通ポイント

成功している企業には、明確なターゲット設定と一貫したメッセージ、継続的なコンテンツ更新と品質の維持、経営陣のコミットと組織全体での取り組み、データに基づく継続的な改善という共通点があります。これらのポイントは、どの企業でも応用可能な成功の要素です。

オウンドメディアリクルーティングの始め方

戦略設計のステップ

目的と目標の明確化
まず、オウンドメディアリクルーティングに取り組む目的を明確にします。採用ブランディングの強化、企業認知度向上、特定職種での採用力強化、採用コスト削減などの目的に応じて、「6ヶ月以内にオウンドメディア経由の応募を月10件以上獲得する」といった具体的で測定可能な目標を設定します。

ターゲットペルソナの設定
採用したい人材の詳細なプロフィールを設定します。年齢、性別、職歴、スキル、価値観、ライフスタイル、情報収集行動などを具体的に定義することで、どのようなコンテンツを制作すべきか、どのプラットフォームで発信すべきかが明確になります。

コンテンツ戦略の策定
ターゲットペルソナに響くコンテンツのテーマとカテゴリー、形式、更新頻度とスケジュールを設定します。社員インタビュー、技術ブログ、企業文化紹介などの中から、ターゲットが関心を持ちそうなテーマを選定し、継続可能な更新頻度を設定します。

プラットフォームの選択と構築

自社採用サイトの構築
独自ドメインでの完全オリジナルサイト構築、既存コーポレートサイト内の採用セクション拡充、採用サイト構築サービスの活用など、企業の状況に応じて最適な方法を選択します。

SNSプラットフォームの活用
Twitter、LinkedIn、Instagram、YouTubeなど、各プラットフォームの特性を理解し、ターゲットペルソナに適したプラットフォームを選択します。IT業界ならTwitter、管理職採用ならLinkedIn、若い世代ならInstagramが効果的です。

コンテンツ制作の実践方法

社員インタビューの実施
様々な職種、年齢、経験年数の社員をバランスよく選び、「なぜこの会社を選んだのか」「実際に働いてみてどうか」「どのような成長を実感しているか」などの質問を通じて、リアルな働く様子を伝えます。

事業紹介コンテンツの作成
事業の社会的意義や解決している課題、技術的な特徴、今後の成長戦略、実際のプロジェクト事例などを具体的に紹介し、その事業に携わることの意義や面白さを伝えます。

職場環境の紹介
オフィスツアー動画の制作、各エリアの詳細紹介、働く環境の特徴説明、社員の一日の流れ紹介などを通じて、求職者が実際に働くイメージを持てるようにします。

運用体制の構築

社内体制の整備では、プロジェクトマネージャー、コンテンツディレクター、ライター、デザイナーなどの役割分担を明確にします。中小企業では兼任での運用体制を構築し、各部門から協力者を募って連携を図ることが重要です。

外部パートナーとの連携では、Web制作会社、ライター、動画制作会社、SEO専門会社などとの協力により、効率的にオウンドメディアリクルーティングを推進できます。外部パートナーには企業文化や価値観を深く理解してもらうことが成功の鍵となります。

効果測定と改善のポイント

重要なKPI指標

アクセス数・PV数
月間ユニークユーザー数、ページビュー数、流入経路別の分析により、オウンドメディアがどれだけの求職者に認知されているかを把握します。

コンテンツエンゲージメント
平均滞在時間、ページ/セッション数、直帰率、SNSでのシェア数などにより、訪問者がコンテンツにどれだけ関心を持っているかを測定します。

応募数と応募者の質
オウンドメディア経由の応募数、書類選考通過率、面接通過率、応募者の属性分析により、実際の採用成果を評価します。

採用数と採用コスト
オウンドメディア経由の採用数、1人当たりの採用コスト、採用までの期間を測定し、投資対効果を評価します。

効果測定の具体的方法

Google Analyticsなどのアクセス解析ツール、UTMパラメータを活用した応募経路の追跡、ATS(Applicant Tracking System)による採用プロセス全体の追跡により、正確な効果測定を行います。月次レポート、四半期レビュー、年次評価を定期的に実施し、データに基づく改善を継続します。

継続的な改善のサイクル

PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を継続的に実践し、A/Bテスト、ユーザーインタビュー、競合他社分析などを通じてデータに基づく改善を行います。既存コンテンツの見直し、新しいコンテンツ企画、SEO対策の継続的な実施により、コンテンツの最適化を図ります。

人事責任者・経営者が押さえるべき成功の秘訣

経営層のコミットメントの重要性

オウンドメディアリクルーティングの成功には、経営層の強いコミットメントが不可欠です。CEO自らがコンテンツに登場したり、SNSで記事をシェアしたりすることで、社内外に対して企業の本気度を示すことができます。経営陣のコミットメントにより、必要な予算確保や人員配置がスムーズに行われ、継続的な運用が可能になります。

短期的な成果に一喜一憂することなく、長期的な視点で投資判断を行うことが重要です。初期投資は将来的な採用コスト削減と採用力向上への投資として捉え、採用活動だけでなく企業ブランディングや社員エンゲージメント向上の効果も総合的に評価します。

組織全体での取り組み

人事部門だけでなく、技術部門、営業部門、マーケティング部門など、各部門が持つ専門知識や経験を活かしたコンテンツ制作により、多角的で深みのあるコンテンツを制作できます。社員の協力を得るために、オウンドメディアリクルーティングの意義と効果を社内に広く周知し、評価制度への組み込みや表彰制度の導入によりモチベーション向上を図ります。

投資対効果を最大化するポイント

小さく始めて効果を確認しながら徐々に拡大していく段階的なアプローチが現実的です。既存プラットフォームを活用してノウハウを蓄積し、効果確認後に独自サイト構築に移行することで、リスクを最小限に抑えながら着実に成果を積み上げることができます。

外部の専門会社やフリーランスとの連携により効率的に推進し、コストと品質のバランスを慎重に検討します。企業文化への理解度、過去の実績、継続的な関係構築の可能性なども総合的に評価して外部パートナーを選定します。

まとめ

オウンドメディアリクルーティングは、従来の採用手法の限界を打破し、企業の採用力を根本的に変革する戦略的な取り組みです。質の高い採用とミスマッチの減少、企業認知度向上と採用ブランディング、転職潜在層へのアプローチ、長期的な資産価値創出など、従来の採用手法では実現困難な多くのメリットを提供します。

成功のためには、明確な戦略設計、継続的なコンテンツ制作、効果的な運用体制の構築、そして経営層の強いコミットメントが不可欠です。サイバーエージェント、メルカリ、トヨタ自動車などの成功事例が示すように、組織全体で取り組むことで大きな成果を実現できます。

今後の採用市場はますます競争が激化し、優秀な人材の獲得は困難になることが予想されます。このような環境において、オウンドメディアリクルーティングは企業の競争優位性を確立する重要な武器となるでしょう。人事責任者や経営者の皆様には、この機会にオウンドメディアリクルーティングの導入を検討し、自社の採用力向上と持続的な成長の実現に向けて積極的な取り組みを開始していただければと思います。

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