
「学校訪問」から効果的に採用につなげる方法とは?
近年、労働人口の減少と採用競争の激化により、多くの企業が新たな人材確保の手法を模索しています。特に注目を集めているのが、高校生や専門学校生を対象とした「学校訪問」による採用活動です。厚生労働省の発表によると、高校新卒者を対象とした求人数は2022年度に前年同期比13.9%増、2023年度にはさらに9.4%増と大幅な増加傾向を示しており、企業の関心の高さがうかがえます。
しかし、学校訪問は単に学校を回って求人票を配布すれば成功するというものではありません。独特のルールや慣習が存在し、適切な準備と戦略的なアプローチが不可欠です。本記事では、学校訪問を効果的に採用につなげるための具体的な方法論を、事前準備から継続的な関係構築まで体系的に解説します。
目次

学校訪問が採用成功の鍵となる理由
高卒採用市場の現状と学校訪問の重要性
現在の採用市場において、高卒採用は企業にとって重要な戦略的選択肢となっています。大卒以上の優秀な人材は大手企業が中心となって積極的に採用するため、中小企業にとっては競争が激しく、採用条件面でも不利になりがちです。このような状況下で、ポテンシャルのある若手人材を確保し、自社で育成していくアプローチが注目されています。
高卒採用の最大の特徴は、そのルールの明確性にあります。全国統一で約3か月という短期間で採用プロセスを完了できるため、企業は直近の業績を見通した上で採用計画を立てることができます。具体的には、毎年7月1日が求人解禁日、9月16日以降が採用試験開始日と決まっており、夏休み期間中に会社見学や企業説明を実施することが一般的です。
大卒採用との違いと学校訪問の特殊性
大卒採用と高卒採用では、アプローチ方法に根本的な違いがあります。大学生の場合、就職活動は学生主導で行われ、企業は様々な媒体や手法を通じて直接学生にアプローチすることができます。一方、高校生の採用では「学校あっせん」という独特のシステムが存在し、企業は学校を通じてのみ学生と接点を持つことができます。
この違いは、学校訪問の重要性を際立たせます。高校訪問では進路指導の先生との信頼関係が直接的に採用成果に影響します。先生が企業を信頼し、その企業で働くことが学生にとって良い選択だと判断した場合にのみ、学生への紹介が行われるからです。
学校訪問がもたらす採用メリット
学校訪問による採用活動には、他の手法では得られない独特のメリットがあります。まず、安定した母集団形成が可能になることです。一度学校との良好な関係を構築できれば、次年度以降も継続的に優秀な学生の紹介を受けることができ、採用活動の効率化と安定化を図ることができます。
コスト面でのメリットも見逃せません。大規模な採用イベントや広告費用と比較して、学校訪問は比較的低コストで実施できる採用手法です。さらに、地域密着型の採用が可能になることも大きなメリットです。高校は地域に根ざした教育機関であり、その地域で働き続ける意欲の高い学生が多く在籍しています。

効果的な学校訪問を実現する事前準備
採用目標の明確化と訪問校数の設定
学校訪問を成功させるためには、まず明確な採用目標を設定することが不可欠です。製造職であれば、地道な努力をコツコツと継続できる忍耐力や集中力を持った人材が求められるでしょう。一方、接客業であれば、明るい性格で細やかな気配りができ、コミュニケーション能力に長けた人材が適しています。
採用人数の決定については、事業計画や人員計画を基に行うことが基本です。訪問校数の目標設定においては、実績に基づいた現実的な数値を設定することが肝要です。一般的に、1名の採用を実現するためには7〜10校の訪問が必要とされています。この数値を基準として、例えば5名の採用を目標とする場合は30〜50校程度の訪問を計画することになります。
ターゲット校の選定戦略
効率的な学校訪問を実現するためには、戦略的なターゲット校の選定が欠かせません。学校選定の第一の基準は、教育システムと学科の適合性です。高校には全日制、定時制、通信制といった教育システムの違いがあり、また、普通科、商業科、工業科、農業科、看護科など、学科によっても学生の志向や適性が大きく異なります。
地理的な条件も重要な選定基準の一つです。一般的に、勤務地から40〜50km圏内にある学校を対象とすることが推奨されています。就職率の高い学校を優先することも効果的な戦略です。過去の採用実績も重要な判断材料となります。自社で活躍している社員の出身校や、過去に内定を出した学生の出身校を分析することで、自社との相性の良い学校を特定することができます。
アポイントメント取得のベストプラクティス
学校訪問の成功は、適切なアポイントメント取得から始まります。アポイントメント取得の方法としては、電話が最も一般的で効果的です。電話をかけるタイミングも重要なポイントです。全日制高校の場合、10:00〜11:00の時間帯が比較的つながりやすいとされています。定時制高校の場合は、14:00〜16:00頃が適しています。
電話での会話においては、簡潔で分かりやすい説明を心がけることが重要です。会社名、担当者名、訪問の目的を明確に伝え、相手の都合に配慮した日程調整を行います。

学校訪問当日の成功ポイント
持参すべき資料と効果的な自社アピール方法
学校訪問当日の成功は、適切な資料の準備と効果的な自社アピールにかかっています。初回訪問の場合、自社の会社パンフレットや求人票を持参することが基本ですが、これらの資料は高校生に分かりやすい内容にカスタマイズすることが重要です。
特に地元ならではの情報は、進路指導の先生にとって非常に有力な情報となります。製造業であれば、どのような製品を製造し、それが地域や社会のどのような場面で活用されているかを具体的に示すことができれば、学生や保護者にとっての安心材料となります。
先生との信頼関係構築のコツ
学校訪問の最も重要な目的は、進路指導の先生との信頼関係を構築することです。信頼関係構築の第一歩は、相手の立場を理解し、尊重することです。進路指導の先生は、学生の将来に対して大きな責任を感じており、紹介した企業で学生が不幸になることを最も恐れています。
訪問時の態度や姿勢も信頼関係構築に大きく影響します。ビジネスマナーを遵守することは当然ですが、それ以上に相手への敬意と感謝の気持ちを示すことが重要です。
高校生に響く企業の魅力の伝え方
高校生に自社の魅力を効果的に伝えるためには、彼らの価値観や関心事を理解することが重要です。働く環境の具体的なイメージを提供することが効果的です。職場の雰囲気、同僚との関係性、1日の業務の流れなど、実際に働く場面を想像できるような情報を提供することで、高校生の関心を引くことができます。

継続的な関係構築で採用力を向上させる方法
訪問後のフォローアップ戦略
学校訪問の効果を最大化するためには、訪問後の適切なフォローアップが不可欠です。訪問後24時間以内にお礼のメールを送ることは、基本的なビジネスマナーであると同時に、継続的な関係構築の第一歩となります。
定期的な情報提供も効果的なフォローアップ手法の一つです。自社の近況報告、新商品やサービスの情報、地域での取り組みなどを定期的に共有することで、学校側に自社の存在を継続的に印象づけることができます。
複数回訪問による関係深化のアプローチ
学校との関係構築は一朝一夕には実現できません。複数回の訪問を通じて段階的に関係を深めていくアプローチが必要です。初回訪問では、自社の基本的な情報提供と学校の状況把握が主な目的となります。2回目以降の訪問では、より具体的で詳細な情報交換を行います。
年間を通じた学校との連携強化
効果的な学校訪問を実現するためには、年間を通じた計画的なアプローチが必要です。春期は新年度の挨拶と自社の紹介、夏期は求人活動の最盛期、秋期は採用活動の結果振り返り、冬期は次年度に向けた準備期間として、それぞれの時期に適した活動を行うことが重要です。

学校訪問を成功に導く実践的なノウハウ
よくある失敗パターンとその回避方法
学校訪問において多くの企業が陥りがちな失敗パターンを理解し、それらを回避することは成功への重要な鍵となります。最も一般的な失敗の一つは、一方的な自社アピールに終始してしまうことです。この失敗を回避するためには、訪問前に学校の特色について十分に調査し、双方向のコミュニケーションを心がけることが重要です。
もう一つの典型的な失敗は、継続性の欠如です。この問題を解決するためには、年間を通じた訪問計画を策定し、定期的なコンタクトを維持することが必要です。
業界別・職種別の訪問アプローチ
業界や職種によって、効果的な学校訪問のアプローチは大きく異なります。製造業の場合、安全性や技術力、品質管理への取り組みを重視したアピールが効果的です。建設業では、社会インフラの整備や地域貢献への取り組みを前面に出したアプローチが有効です。
サービス業では、顧客との接点や社会への貢献度を重視したアピールが効果的です。IT業界では、技術の最先端性や成長性を強調したアプローチが有効です。
採用成果を最大化するための継続改善
学校訪問の効果を継続的に向上させるためには、定期的な成果測定と改善活動が不可欠です。訪問校数、面談時間、資料配布数などの活動指標と、応募者数、採用者数、定着率などの成果指標を組み合わせて評価することで、活動の効果を客観的に把握することができます。

まとめ
学校訪問は、適切に実施すれば企業の採用力を大幅に向上させる強力な手法です。しかし、その成功には戦略的なアプローチと継続的な努力が不可欠です。事前の十分な準備、学校との信頼関係構築、継続的なフォローアップ、そして絶え間ない改善活動を通じて、学校訪問を効果的な採用ツールとして活用することができます。
最も重要なことは、学校訪問を単なる求人活動ではなく、教育機関との長期的なパートナーシップ構築として捉えることです。学生の成長と企業の発展を両立させるWin-Winの関係を築くことで、持続可能な採用基盤を確立することができるでしょう。
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