【中小企業向け】クラウド勤怠管理システム比較10選|導入で変わるバックオフィス業務
現代のビジネス環境において、企業規模を問わず、従業員の労働時間を正確に把握し、適切に管理することは、企業の健全な成長とコンプライアンス遵守の根幹をなす重要な経営課題です。特に、リソースが限られる中小企業にとって、勤怠管理の効率化は、バックオフィス業務全体の生産性向上に直結します。
タイムカードや手書きの出勤簿による従来のアナログな勤怠管理は、一見手軽に見える反面、集計や給与計算ソフトへの転記に多大な時間と労力を要し、ヒューマンエラーのリスクも常に付きまといます。こうした課題は、人事担当者や経営者の貴重な時間を奪い、より戦略的な業務への集中を妨げる一因となっています。
本記事では、中小企業の人事担当者および経営者の皆様を対象に、クラウド勤怠管理システムの導入がもたらす変革と、自社に最適なシステムを選び抜くための実践的な情報を提供します。
目次
働き方改革と法改正への対応:待ったなしの勤怠管理DX
2019年4月より順次施行されている「働き方改革関連法」は、私たちの働き方に大きな影響を与えています。時間外労働の上限規制、年5日の年次有給休暇取得義務化、同一労働同一賃金といった新たなルールは、すべての企業に、より厳格で客観的な労働時間管理を求めています 1。
特に中小企業においては、大企業への猶予期間が終了し、これらの法規制が全面的に適用されています。違反した場合には罰則が科される可能性もあり、もはや「知らなかった」では済まされません。このような法的要請に確実に対応するためには、手作業による管理では限界があります。クラウド勤怠管理システムは、労働時間をリアルタイムで正確に記録・集計し、法改正にも自動でアップデート対応するため、コンプライアンス遵守体制の構築を力強く支援します。
バックオフィス業務の生産性向上と戦略的人事へのシフト
勤怠管理は、単なる出退勤の記録にとどまりません。そのデータは、給与計算、社会保険手続き、人事評価など、バックオフィスにおける様々な業務の起点となります。クラウド勤怠管理システムを導入し、これらの業務を連携・自動化することで、バックオフィス全体の生産性は飛躍的に向上します。
例えば、勤怠データを給与計算ソフトにワンクリックで連携できれば、面倒な転記作業や二重入力の手間は一切不要になります。これにより、計算ミスを防ぎ、給与計算にかかる時間を大幅に削減できるでしょう。煩雑な事務作業から解放された人事担当者や経営者は、採用活動、人材育成、組織開発といった、企業の未来を創るためのより付加価値の高い「戦略的人事」に時間とエネルギーを注ぐことが可能になるのです。
クラウド勤怠管理システム導入で変わる!6つのメリット
クラウド勤怠管理システムの導入は、単なる業務効率化ツールにとどまらず、企業の経営基盤を強化するための戦略的な投資です。ここでは、システム導入がもたらす具体的な6つのメリットを詳しく解説します。
1. 勤務時間の正確な把握とコンプライアンス遵守
クラウド勤怠管理システムは、PC、スマートフォン、ICカード、生体認証など、多様な打刻方法を提供します。これにより、従業員はオフィス、テレワーク先、外出先など、場所を問わずリアルタイムで正確に出退勤時刻を記録できます。手作業による記録や自己申告制で生じがちな「記録漏れ」や「記憶の曖昧さ」を排除し、1分単位での客観的な労働時間管理が実現します 2。
また、多くのシステムには、時間外労働が上限規制に近づいた際や、有給休暇の取得日数が不足している場合に、従業員や管理者に自動でアラートを通知する機能が搭載されています。これにより、法規制違反のリスクを未然に防ぎ、コンプライアンスを遵守した労務管理体制を容易に構築できます。
2. 不正打刻の防止と労務リスクの低減
タイムカードの代理打刻や、出退勤時刻の改ざんといった不正行為は、企業の労務管理における悩みの種です。クラウド勤怠管理システムでは、生体認証(指紋・顔認証)やGPS打刻、IPアドレス制限といった機能を活用することで、本人以外の打刻や虚偽の申告を物理的に防止できます。打刻修正には上長の承認を必須とし、修正履歴もすべて記録されるため、勤怠データの信頼性が格段に向上します。これにより、不要な人件費の発生を防ぎ、公平な労働環境を維持することができます。
3. 勤怠管理業務の大幅な効率化とコスト削減
従来のアナログな勤怠管理では、月末になるとタイムカードの回収、各従業員の労働時間・残業時間・深夜労働時間などの集計、休暇取得状況の確認といった作業に膨大な時間がかかっていました。クラウド勤怠管理システムは、これらの集計作業をすべて自動化します。管理者は、いつでもリアルタイムで集計された勤怠データをダッシュボードで確認でき、手作業による集計業務はほぼゼロになります。これにより、人事担当者の業務負担が大幅に軽減され、人件費という目に見えるコストの削減にも繋がります。
4. 給与計算システムとの連携による自動化
多くのクラウド勤怠管理システムは、主要な給与計算ソフトとのデータ連携機能を備えています。ボタン一つ、あるいはCSVファイルの簡単なインポート・エクスポート操作で、自動集計された勤怠データを給与計算ソフトに正確に反映させることが可能です 3。これにより、手作業によるデータ転記の際に発生しがちな入力ミスを根絶し、給与計算の正確性とスピードを飛躍的に向上させます。勤怠管理から給与計算までの一連のプロセスをシームレスに繋ぐことで、バックオフィス業務全体の自動化が加速します。
5. テレワークや直行直帰など多様な働き方への柔軟な対応
新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、テレワークや時差出勤、直行直帰といった柔軟な働き方が急速に普及しました。クラウド勤怠管理システムは、インターネット環境さえあればどこからでも打刻・申請・承認が可能なため、こうした多様なワークスタイルに最適です。GPS機能付きのスマートフォンアプリを使えば、外出先からでも正確な位置情報とともに出退勤を記録できます。これにより、従業員の働き方の自由度を高めると同時に、管理者は場所を問わず従業員の勤務状況を適切に把握することが可能になります。
6. 最新の法改正への自動アップデートで常に安心
働き方改革関連法をはじめ、労働関連法規は頻繁に改正されます。その都度、自社で情報を収集し、勤怠管理のルールや計算方法を変更するのは大変な労力です。クラウド勤怠管理システムは、ベンダーが法改正に合わせてシステムを自動でアップデートしてくれるため、企業側は特別な対応をすることなく、常に最新の法令に準拠した勤怠管理を維持できます。これにより、法改正への対応漏れというリスクを回避し、安心して事業に専念することができます。
【中小企業向け】クラウド勤怠管理システムの選び方5つのポイント
数多くのクラウド勤怠管理システムの中から、自社に最適な一つを選び出すのは容易ではありません。ここでは、中小企業がシステム選定で失敗しないための5つの重要なポイントを解説します。
1. 自社の規模と業種に合った機能を見極める
勤怠管理システムは、搭載されている機能が多ければ多いほど良いというわけではありません。まずは自社の従業員数、拠点数、勤務形態(シフト制、フレックスタイム制、裁量労働制など)を整理し、本当に必要な機能は何かを明確にしましょう。
例えば、飲食店や小売店のように複雑なシフト管理が必要な場合は、シフト作成・管理機能が充実しているシステムが適しています。一方、建設業や訪問介護のように直行直帰が多い業種では、GPS打刻機能が必須となるでしょう。多機能なシステムは魅力的ですが、使わない機能のために高いコストを払うのは非効率です。自社の課題を解決するために不可欠な機能をリストアップし、それを満たすシステムを候補とすることが賢明です。
2. 打刻方法の多様性と従業員の使いやすさ
勤怠管理は全従業員が毎日利用するシステムです。そのため、誰にとっても簡単で使いやすいことが非常に重要です。特にITツールに不慣れな従業員が多い場合は、直感的に操作できるシンプルなインターフェースのシステムを選びましょう。
また、打刻方法の選択肢も重要なポイントです。オフィス勤務が中心であればICカードやPC打刻、営業職や現場作業員が多い場合はスマートフォンからのGPS打刻、工場や店舗では指紋認証や顔認証による生体認証など、従業員の働き方に合わせて最適な打刻方法が選べるかを確認しましょう。無料トライアル期間などを活用して、実際に従業員に操作してもらい、フィードバックを得ることをお勧めします。
3. 給与計算ソフトなど他システムとの連携性
勤怠管理の効率化効果を最大化するためには、他システムとの連携が鍵となります。特に、現在利用している、あるいは将来的に導入を検討している給与計算ソフトとスムーズに連携できるかは必ず確認しましょう。データ連携がシームレスに行えれば、勤怠締めから給与計算までのプロセスが劇的に効率化されます。
また、人事労務管理システムや経費精算システムなど、他のバックオフィス系システムとの連携も視野に入れると、より広範な業務効率化が期待できます。多くのシステムがAPI連携やCSV出力に対応していますが、連携のしやすさや対応しているソフトの種類はシステムによって異なるため、事前に詳細を確認することが不可欠です。
4. 料金体系とコストパフォーマンスの比較
クラウド勤怠管理システムの料金体系は、主に「ユーザー数に応じた月額課金制」です。1ユーザーあたりの単価は100円〜500円程度が相場ですが、システムによって最低利用人数や初期費用、オプション機能の有無が異なります。
選定の際は、単純な月額料金だけでなく、自社に必要な機能を搭載した場合の総額で比較検討することが重要です。「基本料金は安いが、必要な機能がすべてオプションで結果的に高額になる」といったケースも少なくありません。30名以下の企業であれば無料で利用できるプランを提供しているシステムもあるため、自社の規模に合わせて最もコストパフォーマンスの高い選択肢を探しましょう。
5. 導入後のサポート体制の充実度
システム導入後のスムーズな運用には、ベンダーのサポート体制が欠かせません。特に初めて勤怠管理システムを導入する場合、初期設定や就業規則の反映などで不明点が出てくることが予想されます。電話やメール、チャットでの問い合わせに迅速に対応してくれるか、FAQやマニュアルは充実しているか、といった点は事前に必ず確認しましょう。
システムによっては、導入時の初期設定を代行してくれるサービス(有償・無償)を提供している場合もあります。ITに詳しい担当者がいない企業にとっては、こうした手厚いサポートが導入のハードルを大きく下げてくれます。安心して長く利用し続けるためにも、サポート体制の質は妥協できないポイントです。
中小企業におすすめのクラウド勤怠管理システム比較10選
ここでは、数あるシステムの中から、特に中小企業におすすめの10サービスを厳選し、特徴ごとに比較してご紹介します。各システムの特徴をまとめた比較表も参考に、自社に最適なシステムを見つけてください。
| サービス名 | 料金(月額/1人) | 特徴 | こんな企業におすすめ |
| HRMOS勤怠 | 100円(30名以下無料) | 無料プランでも基本機能が充実。LINEやSlackでの打刻も可能。 | コストを最優先し、まずは無料で試したいスタートアップや小規模事業者。 |
| RecoRu | 100円 | 業界最安クラスの価格。シンプルな操作性と必要十分な機能。 | とにかく低コストで、シンプルな勤怠管理を実現したい企業。 |
| KING OF TIME | 300円 | 導入実績No.1。豊富な打刻方法と柔軟なカスタマイズ性。 | 多様な働き方があり、自社の就業規則に合わせた細かい設定が必要な企業。 |
| ジョブカン勤怠管理 | 200円〜 | シフト管理機能が強力。医療機関など複雑な勤務形態にも対応。 | アルバイトやパートが多く、複雑なシフト管理に課題を抱える企業。 |
| freee勤怠管理Plus | 300円 | freeeシリーズとの連携がスムーズ。人事労務全体をカバー。 | 既にfreeeの人事労務や会計ソフトを利用しており、連携を重視する企業。 |
| マネーフォワード クラウド勤怠 | 要問い合わせ | バックオフィス業務全体を統合。給与計算や経費精算とシームレスに連携。 | バックオフィス全体のDXを目指し、データの一元管理を進めたい企業。 |
| ジンジャー勤怠 | 400円 | 人事データベースを基盤とし、人事領域のデータを一元管理。 | 勤怠管理を起点に、人事評価や人材管理まで含めた統合的なタレントマネジメントを目指す企業。 |
| e-就業OasiS | 320円 | PCログとの連携でサービス残業を可視化。手厚い導入サポート。 | コンプライアンスを特に重視し、正確な労働時間の実態把握を徹底したい企業。 |
| CLOUZA | 200円 | シンプルで直感的なUI。PC、スマホ、タブレットで場所を選ばず利用可能。 | ITツールに不慣れな従業員が多く、誰でも簡単に使えるシステムを求める企業。 |
| キンコン | 200円 | 交通系ICカードでの打刻と同時に交通費申請が完了。 | 外回りや出張が多く、交通費精算の手間を削減したい営業主体の企業。 |
【まずは低コストで】無料または安価に始められるシステム
HRMOS勤怠(ハーモス勤怠)
30名以下の企業であれば、主要な機能を無料で利用できるという圧倒的なコストパフォーマンスを誇ります。無料プランでありながら、ICカード打刻やSlack・LINE連携など、多彩な打刻方法に対応。有料プランに移行すれば、より高度な機能も利用可能です。まずはコストをかけずにクラウド勤怠管理を試してみたい、という企業に最適な選択肢です。
RecoRu(レコル)
1ユーザー月額100円という業界最安水準の価格設定が魅力です。シンプルで分かりやすいインターフェースで、誰でも簡単に使うことができます。残業時間のアラートや有給休暇の管理など、中小企業に必要な機能は標準で搭載されており、「高機能は不要、とにかくシンプルで安いものがいい」というニーズに応えます。
【機能性と拡張性】幅広いニーズに対応する人気システム
KING OF TIME(キングオブタイム)
導入社数65,000社以上という圧倒的な実績を誇る、クラウド勤怠管理システムのリーディングカンパニーです。指紋認証や顔認証といった生体認証から、PC、スマホ、ICカードまで、あらゆる打刻方法に対応。複雑な就業規則にも柔軟に設定でき、企業の成長に合わせて機能を拡張していける汎用性の高さが支持されています。
ジョブカン勤怠管理
シリーズ累計導入20万社以上を誇るジョブカンシリーズの一つ。特にシフト管理機能に定評があり、スタッフの希望休を考慮したシフトの自動作成や、複数パターンのシフト管理、ヘルプ募集など、小売業や飲食業、医療・介護現場など、複雑なシフト管理が求められる業種で絶大な支持を得ています。
freee勤怠管理Plus
「freee人事労務」とのシームレスな連携が最大の特徴です。勤怠データを自動で取り込み、給与計算までをワンストップで処理できます。既にfreeeシリーズを利用している企業であれば、導入することでバックオフィス業務のさらなる効率化が期待できます。もちろん、勤怠管理システム単体としても、多様な打刻方法や詳細な集計機能を備えています。
【バックオフィス統合】人事労務全体の効率化を実現するシステム
マネーフォワード クラウド勤怠
給与計算、社会保険、年末調整、経費精算など、バックオフィス業務を幅広くカバーする「マネーフォワード クラウド」シリーズの一つ。勤怠データを起点として、人事労務に関するあらゆるデータを一元管理し、業務プロセス全体を効率化します。複数のシステムに情報が散在している状況を解消したい企業におすすめです。
ジンジャー勤怠
「人事データベース」をシステムの核に据え、勤怠管理、給与計算、人事評価、労務管理といった各機能を連携させるユニークな設計思想を持っています。従業員情報が一元化されるため、入社や異動に伴う情報更新の手間が省け、人事領域全体のDXを推進します。
【独自の強み】特定の課題解決に特化したシステム
e-就業OasiS
PCのログオン・ログオフ時刻と打刻時刻を比較し、乖離がある場合にアラートを出すことで「サービス残業」を可視化・抑制する機能が特徴です。コンプライアンス遵守を徹底したい企業や、正確な労働実態の把握に課題を持つ企業にとって、強力なツールとなります。
CLOUZA
タイムレコーダーの老舗であるアマノのグループ企業が提供するサービス。長年のノウハウが詰まった、シンプルで誰にでも分かりやすい画面設計が魅力です。ITに不慣れな従業員でもマニュアルなしで直感的に操作できるため、スムーズな導入と定着が期待できます。
キンコン
SuicaやPASMOなどの交通系ICカードをリーダーにかざすだけで、出退勤の打刻と同時に交通費のデータが自動で登録され、そのまま交通費精算の申請が完了します。営業職など、移動が多く交通費精算が煩雑になりがちな企業で、大幅な業務効率化を実現します。
まとめ
本記事では、中小企業がクラウド勤怠管理システムを導入するメリット、選定のポイント、そして具体的なおすすめサービスについて解説してきました。
働き方改革への対応、多様なワークスタイルの実現、そして深刻化する人手不足といった経営環境の変化の中で、バックオフィス業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)はもはや避けては通れない課題です。その第一歩として、勤怠管理システムの導入は、最も着手しやすく、かつ費用対効果の高い施策の一つと言えるでしょう。
重要なのは、自社の規模、業種、そして解決したい課題を明確にし、数ある選択肢の中から「自社にとって最適なシステム」を見つけ出すことです。本記事で紹介した比較表や選び方のポイントを参考に、ぜひ無料トライアルなどを活用しながら、じっくりと検討を進めてみてください。
煩雑な勤怠管理業務から解放され、より創造的で戦略的な業務に集中できる環境を整えること。それが、企業の持続的な成長を支える強固なバックオフィス体制の構築に繋がるはずです。

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