【中小企業向け】健康経営優良法人のメリットとは?認定基準や申請方法をわかりやすく解説
近年、人材不足や従業員の高齢化が深刻化する中で、多くの企業が「健康経営」に注目しています。健康経営とは、従業員の健康管理を単なるコストではなく「将来への投資」と捉え、経営的な視点から戦略的に実践する取り組みのことです。
特に、リソースが限られている中小企業にとって、従業員一人ひとりの健康とパフォーマンスは、企業の生産性や業績に直結します。従業員が心身ともに健康で長く働ける環境を整えることは、もはや大企業だけのものではなく、中小企業が生き残るための重要な経営戦略となっています。
その健康経営の取り組みを国が客観的に評価し、「見える化」する制度が「健康経営優良法人認定制度」です。本記事では、中小企業の人事担当者や経営者の皆様に向けて、健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定を受けるメリット、具体的な認定基準、そして申請から認定までの流れを分かりやすく解説いたします。
目次
健康経営優良法人認定制度とは
制度の目的と概要
健康経営優良法人認定制度は、経済産業省が創設し、日本健康会議が認定を行う顕彰制度です。この制度の目的は、優良な健康経営を実践している企業を社会的に「見える化」することにあります。
認定を受けることで、「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として、従業員や求職者、関係企業、金融機関などから高い社会的評価を受けることができる環境が整備されています。
2つの部門と「ブライト500」
本制度は、企業の規模に応じて以下の2つの部門に分かれています。
1.大規模法人部門(上位500法人は「ホワイト500」として認定)
2.中小規模法人部門
中小規模法人部門においては、健康経営優良法人に認定された企業のうち、上位500法人が「ブライト500」という特別な冠を付与されます。さらに、2025年度からは上位501位〜1500位の法人を対象とした「ネクストブライト1000」という新たな枠組みも創設され、中小企業がステップアップを目指しやすい環境が整えられています。
中小企業が健康経営優良法人に認定される5つのメリット
健康経営優良法人の認定を取得することで、中小企業にはどのような具体的なメリットがあるのでしょうか。主な5つの効果を解説します。

メリット① 優秀な人材の採用力強化
少子高齢化による人手不足の中、求職者は「働きやすい環境」や「福利厚生の充実度」を企業選びの重要な基準としています。健康経営優良法人に認定されると、自社のホームページや求人広告、会社案内などに「認定ロゴマーク」を使用することができます。
このロゴマークは、「従業員を大切にするホワイト企業である」という強力な客観的証明となり、他社との差別化に直結します。特に、新卒採用や若手人材の採用において、企業ブランドの向上と応募者数の増加が期待できます。
メリット② 離職率の低下と定着率の向上
従業員の健康に配慮し、働きやすい環境を整備することは、従業員の企業に対するエンゲージメント(愛着心・信頼感)を高めます。心身のストレスが軽減され、ワークライフバランスが整うことで、結果として離職率の低下につながります。
中小企業において、従業員が1人離職することによる採用コストや教育コストの損失は甚大です。健康経営への投資は、優秀な人材の流出を防ぐ「防波堤」としての役割を果たします。
メリット③ 労働生産性の向上(プレゼンティーイズムの改善)
従業員が病気ではないものの、何らかの不調(頭痛、腰痛、睡眠不足、メンタル不調など)を抱えながら出勤し、本来のパフォーマンスを発揮できていない状態を「プレゼンティーイズム」と呼びます。
健康経営を推進し、運動機会の提供やメンタルヘルス対策、食生活の改善などを企業がサポートすることで、このプレゼンティーイズムによる目に見えない労働損失を大幅に削減できます。従業員が健康で活力に満ちた状態で働くことは、企業全体の生産性向上に直結します。
メリット④ 金融機関からの融資金利優遇
健康経営優良法人に認定された企業は、国や地方自治体、金融機関からさまざまなインセンティブ(優遇措置)を受けることができます。
例えば、多くの地方銀行や信用金庫が「健康経営応援ローン」などの特別プランを用意しており、認定企業に対して融資金利の引き下げを行っています。また、企業だけでなく、そこで働く従業員個人が住宅ローン等を組む際に金利優遇を受けられるケースもあります。
メリット⑤ 公共工事の入札における加点評価
建設業や土木業などの中小企業にとって見逃せないメリットが、公共工事入札時の加点評価です。一部の地方自治体や発注機関では、健康経営優良法人の認定を受けている企業に対して、入札の総合評価方式において加点する仕組みを導入しています。
これは、安定した経営基盤と従業員の労働環境を確保している企業として評価されるためであり、公共事業の受注機会拡大という直接的な売上貢献につながります。
健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定基準
中小規模法人部門で認定を受けるためには、以下の5つの大項目(要件)を満たす必要があります。企業規模によってクリアすべき細かな項目数は異なりますが、基本的な考え方は共通しています。
① 経営理念・方針
経営トップ自らが「健康宣言」を行い、それを社内外に発信することが求められます。具体的には、自社が加入している協会けんぽや健康保険組合が実施している「健康宣言事業」に参加し、健康づくりに取り組む姿勢を明文化します。
② 組織体制
健康づくりを推進するための担当者を設置することが必要です。また、求めに応じて40歳以上の従業員の健康診断データを保険者(健保組合など)に提供することに同意する体制が求められます。
③ 制度・施策実行
健康経営を具体的に進めるための施策を実行します。中小規模法人部門では、以下の3つのカテゴリーから一定数の項目を選択して実施する必要があります。
1.従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討(例:定期健診受診率の実質100%、ストレスチェックの実施など)
2.健康経営の実践に向けた土台づくり(例:ヘルスリテラシー向上のための教育、女性の健康保持・増進に向けた取り組みなど)
3.従業員の心と身体の健康づくりに関する具体的対策(例:食生活改善の支援、運動機会の増進、受動喫煙対策など)
④ 評価・改善
実施した健康施策の効果を検証し、次年度に向けて改善(PDCAサイクル)を行う仕組みが評価されます。健康診断の受診結果やストレスチェックの集団分析結果などを踏まえ、自社の健康課題がどのように変化しているかを把握します。
⑤ 法令遵守・リスクマネジメント
健康経営の前提として、労働基準法や労働安全衛生法などの関連法令を遵守していることが必須条件です。定期健康診断の実施(法定)や、長時間労働者への医師による面接指導など、基本的なコンプライアンスが守られていなければ認定を受けることはできません。
申請から認定までの流れとスケジュール
健康経営優良法人の認定は、毎年1回のスケジュールで進行します。一般的な申請から認定までの流れは以下の通りです。

ステップ1:健康宣言の実施
まずは、自社が加入している保険者(協会けんぽ、健康保険組合など)が実施している「健康宣言」に参加します。これが中小規模法人部門に申請するための必須要件(エントリーチケット)となります。
ステップ2:IDの取得と申請書のダウンロード
例年8月中旬頃に、健康経営優良法人認定事務局のポータルサイト「ACTION!健康経営」にて申請受付が開始されます。専用サイトから新規IDを取得し、マイページから自社専用の申請書(Excel形式等)をダウンロードします。
ステップ3:申請書の作成と提出
ダウンロードした申請書に、自社で実施している健康経営の取り組み内容を記入します。記入が完了したら、申請期間内(おおよそ8月中旬〜10月中旬)に専用サイトへアップロードして提出します。
ステップ4:認定審査と認定申請料の支払い
提出された申請書に基づき、認定委員会による審査が行われます。また、指定された期限(通常12月末頃)までに認定申請料(中小規模法人部門:16,500円・税込)を振り込みます。
ステップ5:認定の発表
翌年の2月中旬〜下旬頃に内定の連絡があり、3月上旬に経済産業省および日本健康会議から「健康経営優良法人」として正式に発表されます。認定後には、自社の取り組み状況が客観的に分析された「フィードバックシート」が送付され、次年度の改善に役立てることができます。
まとめ
健康経営優良法人の認定を取得するためには、社内体制の整備や施策の実行、申請手続きなど、一定の時間と労力が必要です。効果が数字として目に見えるまでには時間がかかるため、「意味がないのでは?」と途中で挫折してしまう企業も少なくありません。
しかし、長期的な視点で見れば、従業員の健康を守ることは、離職率の低下、採用力の強化、そして労働生産性の向上という形で、必ず企業に大きなリターンをもたらします。
まずは自社の従業員が抱える小さな健康課題に目を向け、「定期健診の受診勧奨」や「社内でのラジオ体操の導入」など、無理なくできる取り組みからスタートしてみてはいかがでしょうか。その小さな一歩が、会社を強くし、未来の成長を支える大きな投資となるはずです。
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