

新卒採用の成功は、内定を出して終わりではなく、入社後のオンボーディングが鍵を握ります。適切なオンボーディングを実施することで、新入社員の定着率向上や早期戦力化が可能となります。本記事では、内定出しから入社準備、入社後1年間のオンボーディングプランについて、筆者の体験談や事例を交えて解説します。
【このシリーズを読んでほしい人!】
- 新卒採用担当者の方
- 新入社員の定着率や育成に課題を感じている人事担当者
- IT・製造業のオンボーディングの成功事例を知りたい方
【このシリーズを読むことで得られるメリット】
- 効果的なオンボーディング施策を具体的に学べる
- 内定出しから入社後1年間のサポート方法が分かる
- 実際の企業事例を基にした成功パターンを知ることができる
目次
内定出し〜入社準備期の施策

新卒採用担当者にとって、内定出しから入社までの期間は非常に重要なフェーズです。この期間に適切なフォローができるかどうかが、内定者のモチベーション維持や入社後の定着率に大きく影響を与えます。特に、最近の若手社員は選択肢が豊富であり、内定承諾後も他社と比較検討する傾向が強いため、企業側が積極的にエンゲージメントを図る必要があります。
内定通知と受諾フォロー
私が人事担当になったばかりのころ、内定を出せば安心と考えていました。しかし、内定辞退が相次ぎ、採用計画が崩れるという苦い経験をしました。その経験から学んだのは、内定通知の際には「単なる連絡」ではなく、「企業の魅力を再認識してもらう機会」を設けるべきだということです。
具体的な事例:ある企業の内定者フォロー
すごい人事が支援した製造業のB社では、内定者に対して「先輩社員とのカジュアル面談」を設け、実際の職場環境を疑似体験できる場を用意しました。その結果、内定辞退率が半減しました。また、すごい人事が支援したIT企業A社では、内定者専用のコミュニティをSlackで作成し、内定者同士が自由に交流できるようにしました。これにより、内定者が企業に対して一体感を持つようになり、内定辞退を防ぐことができました。
- 内定通知の工夫:オンライン・対面でのフォローを実施し、パーソナライズされたメッセージを添える
- 内定者フォローイベントの開催:内定者懇親会、座談会、社員交流会、グループワークショップなどを企画
- キャリアビジョンの共有:配属予定部署の上司との面談機会を提供し、業務イメージを明確にする
入社前研修と準備サポート
入社前のフォロー不足は、新卒社員が不安を感じる大きな要因です。支援したIT企業A社では、入社前にオンラインで簡単なプログラミング課題を提供し、基礎知識の強化を促しました。その結果、スムーズな業務開始が可能になりました。また、別の企業では、新卒社員向けに「入社までのロードマップ」を作成し、月ごとに必要な準備事項を提示しました。これにより、内定者が入社準備を主体的に進められるようになりました。
- 内定者研修の実施(例:業界知識、企業文化、ビジネスマナー)
- 入社前の1ヶ月間にわたりオンライン研修を実施し、社会人としての基礎スキルを身につける機会を提供
- グループワークを通じて業界の課題を解決するプロジェクトを実施し、事前に実務のイメージを持たせた
- eラーニングや課題提供(例:読書課題、簡単な実務課題)
- 内定者向けに「おすすめの書籍リスト」を作成し、読書課題を課すことで業界理解を促進
- 支援したIT企業では、簡単なコーディング課題を出し、基礎スキルを身につけた状態で入社できるよう支援
- 社内制度・福利厚生の説明(例:住宅補助、社内SNSの活用)
- 特に地方出身者向けに、住宅補助や転居支援制度の詳細を丁寧に説明し、不安を解消
- 社内SNSを活用し、入社前から会社の雰囲気を体験できるようにする
内定者に対するサポートが手厚ければ手厚いほど、入社後の定着率が向上します。この段階でしっかりとしたフォローを行うことが、結果的に企業の採用力向上につながります。
入社直後(1〜3ヶ月)のオンボーディングプラン

入社初日〜1週間のフォローアップ
新入社員の多くは初日を迎えるにあたり、大きな期待と同時に不安を抱えています。特に、社会人としてのスタートを切るこの期間は、企業側がいかに安心感を提供し、スムーズな業務適応を促せるかが鍵を握ります。実際、私自身も新卒採用のオンボーディングを担当した際、新入社員が初日から戸惑わないよう、事前の準備を徹底しました。
実際の施策例:3日間プログラムの流れ
すごい人事が支援した製造業のB社では、情報過多を防ぎ、効率的に業務理解を促すために「3日間プログラム」を導入しました。新入社員の負担を減らしつつ、企業文化への適応をサポートする仕組みです。
- 1日目:
- オリエンテーション(企業理念、ビジョンの説明)
- 各部署の紹介
- 先輩社員との座談会
- メンターとの顔合わせ
- 2日目:
- 社内ツール・システムのトレーニング
- 会社のプロジェクト概要紹介
- 実務に関連する基礎研修(例:業務管理ツールの使い方)
- 3日目:
- 実際の業務体験(簡単な業務タスクへの参加)
- フィードバックと質疑応答
- チームビルディングアクティビティ
これにより、情報を段階的に提供し、新入社員が適応しやすい環境を整えました。企業によっては、入社前からメンターとのオンライン面談を実施し、個別の質問に対応する取り組みも見られます。
入社1〜3ヶ月のフォローアップ
新入社員が実際に業務を開始すると、次第に適応の度合いが分かれ始めます。ここで適切なフォローが行われないと、不安や孤立感を抱え、早期離職につながるケースも少なくありません。
事例:メンター制度の活用による成功例
すごい人事が支援したIT企業A社では、入社後3ヶ月間、1on1のメンター制度を強化しました。新入社員1人につき、経験豊富な社員がメンターとして週1回のフォローアップ面談を実施。その結果、新入社員のエンゲージメントが向上し、早期退職率が前年に比べて30%減少しました。
- 業務スキルトレーニング(OJT研修、業務ローテーション)
- 配属前に全部署の基本的な業務フローを体験する「シャドーイングプログラム」を導入
- 実際に業務を行いながら先輩社員がフィードバックを提供
- 定期的な1on1面談(メンター・上司との振り返り)
- 初月は週1回、2〜3ヶ月目は隔週で実施し、不安や疑問を解消
- 成長進捗を確認し、適切なアドバイスを提供
- チームビルディング施策(チームランチ、社内イベント)
- 同期や他部署の社員とのつながりを強化するためのランチ会や社内イベントを定期開催
- 特にリモートワーク主体の企業では、オンライン懇親会を導入し、コミュニケーション機会を創出
- エンゲージメント調査(適応度チェック、課題ヒアリング)
- 月1回、匿名アンケートを実施し、新入社員が抱える悩みを可視化
- 回答結果をもとに、人事・現場リーダーが改善策を検討
このように、入社直後の1〜3ヶ月間は、定期的なフォローアップを実施しながら新入社員の適応状況を見極めることが重要です。企業によっては、チューター制度(年次の近い先輩社員が担当)を導入し、メンターと並行してフォローする形を取るケースもあります。
この期間の対応次第で、新入社員の組織適応度や将来的なパフォーマンスが大きく変わるため、綿密な計画と実行が求められます。
入社3ヶ月〜1年のオンボーディングプラン

3ヶ月〜6ヶ月のフォローアップ
入社から3ヶ月が経過すると、新入社員はある程度業務に慣れ、チームや会社の文化にも適応し始めます。しかし、このタイミングで適切なフォローが不足すると、モチベーションの低下や成長の停滞が起こりやすくなります。人事担当者としては、新入社員が「成長の実感」を持ち続けられるような施策を設計することが重要です。
具体的な事例:キャリア目標の明確化
すごい人事が支援したIT企業A社では、入社3ヶ月目のタイミングで、新入社員が「今後の成長目標」を明確にするためのワークショップを実施しました。ワークショップでは、
- これまでの業務を振り返る
- 現時点での課題を整理する
- 半年後、1年後の目標を設定する
といったステップを踏み、上司やメンターとのディスカッションを通じて、具体的なアクションプランを策定しました。この結果、新入社員の自己認識が高まり、主体的に学習や業務改善に取り組む姿勢が強まりました。
業務と組織のビジョンを結びつける
すごい人事が支援したIT企業A社では、新入社員が自分の業務と組織のビジョンを結びつけるワークショップを開催。これにより、自発的な成長を促すことができました。
- 実務レベルのスキル向上(専門知識研修、プロジェクトアサイン)
- 成長目標の設定(中期的なキャリアパス設計)
- 上司・人事との振り返り面談(仕事の適性・今後の課題を確認)
6ヶ月〜1年のフォローアップ
半年を過ぎると、新入社員の役割も広がり、徐々にリーダーシップを発揮する機会が増えていきます。しかし、この時期は「中だるみ」が生じやすく、業務のマンネリ化やモチベーションの低下が問題になることもあります。そこで、成長機会を提供することが重要です。
具体的な事例:ジョブローテーションの実施
すごい人事が支援した製造業のB社では、新入社員に6ヶ月〜1年の期間で「ジョブローテーション」を実施し、複数の業務を経験させる制度を導入しました。例えば、
- 最初の6ヶ月は営業部門で顧客との折衝を経験
- 次の6ヶ月は生産管理部門で製造プロセスを学ぶ
といったように、複数の部署を経験することで、業務全体の流れを理解する機会を提供しました。この制度により、入社1年目の段階で「自分の適性を見極められた」「広い視野を持てるようになった」といったポジティブなフィードバックが多く寄せられました。
リーダーシップを育成するプログラムの導入
リーダーシップ育成に向けたプログラムを導入することで、新入社員の成長速度が大きく向上しました。
- 定期的なフィードバック面談(業務の振り返りと評価)
- ジョブローテーションの実施(適性を見極める機会提供)
- リーダーシップ育成プログラムの提供(次のキャリアステップを支援)
リーダーシップ育成プログラムの提供
1年目の終わりが近づくと、新入社員の中には、次のステップを考え始める人も出てきます。そこで、将来的にリーダーとして活躍できるような育成プログラムを提供する企業が増えています。
具体的な事例:若手向けリーダー研修
すごい人事が支援したIT企業A社では、入社1年目の終盤に「リーダーシップ基礎研修」を実施しました。研修では、
- プロジェクトマネジメントの基礎
- 効果的なコミュニケーション手法
- チームビルディングの考え方
などを学び、実際に少人数のチームを率いるミニプロジェクトに挑戦しました。この取り組みにより、新入社員の中からリーダー候補として活躍する人材が育ち、昇進のスピードも速まりました。
入社3ヶ月〜1年の間は、新入社員の成長を促しながら、長期的なキャリア形成を支援する重要なフェーズです。適切なフォロー施策を継続することで、定着率の向上だけでなく、企業全体の生産性向上にもつながります。
成功するオンボーディングのポイント
オンボーディングの成功には、企業が一貫した戦略とサポート体制を整えることが不可欠です。単なる形式的な研修やイベントではなく、新入社員が本当に企業に馴染み、成長できる環境を提供することが重要です。ここでは、オンボーディングを成功させるための具体的なポイントについて、事例を交えながら解説します。
事前準備をしっかり行う
新入社員がスムーズに業務を開始できるよう、事前準備を徹底することが重要です。入社前に必要な情報や学習機会を提供し、入社当日を迎える前から会社との関係性を深めておくことで、心理的な安心感を与えることができます。
事例:内定者向け事前学習プログラムの活用
すごい人事が支援したIT企業A社では、内定者に対して「事前学習プログラム」を提供し、基本的な業務スキルをオンラインで学べる環境を整えました。これにより、新入社員は入社前から業務の基礎知識を身につけ、自信を持って初日を迎えることができました。
- 入社前研修の提供:業務に関する基礎知識をオンラインコースで学習
- 社内ルール・文化の共有:企業文化を紹介する動画や資料の配信
- メンターとの事前面談:事前にメンターと顔合わせし、不安を解消
上司・メンター・人事の三位一体でフォロー
新入社員の適応を支えるためには、上司・メンター・人事の三者が連携し、継続的にフォローを行うことが不可欠です。それぞれの役割を明確にし、情報共有を徹底することで、新入社員が孤立することを防ぎます。
事例:メンター制度の成功例
すごい人事が支援した製造業のB社した。その結果、新入社員の適応スピードが向上し、早期離職率が前年に比べて20%低下しました。
- 上司の役割:業務の方向性を示し、成長のための指導を行う
- メンターの役割:日々の業務や人間関係に関する相談相手となる
- 人事の役割:全体のフォローを担当し、定期的な面談を実施する
適応状況を可視化し、適宜フィードバックを実施
新入社員が企業文化や業務に適応できているかを確認し、必要に応じてフォローアップを行うことが重要です。適応状況を数値化し、上司やメンターが適切なフィードバックを提供することで、成長を促進できます。
事例:エンゲージメント調査の活用
すごい人事が支援したIT企業A社では、新入社員向けのエンゲージメント調査を月1回実施し、匿名で適応度や業務の悩みを収集しました。このデータを基に、個別のフォロー施策を展開し、新入社員の不安を早期に解消しました。
- 定期的な適応チェック:1ヶ月目・3ヶ月目・6ヶ月目に適応状況を確認
- フィードバック面談の実施:データを基に、上司・メンターとの1on1を強化
- 改善施策の導入:共通の課題が見られた場合、追加研修を企画
新入社員のキャリアプランを支援する
新入社員の長期的な成長を支援するために、早い段階からキャリアプランを明確にすることが重要です。キャリアビジョンを持つことで、モチベーションが向上し、主体的に学習や業務に取り組むようになります。
事例:キャリアパス面談の導入
ある商社では、入社6ヶ月目にキャリアパス面談を実施し、新入社員が将来的に目指すキャリアを明確にする取り組みを行いました。面談の結果、社員のモチベーションが向上し、成長意欲が高まりました。
- キャリア目標の設定:半年後、1年後の成長目標を明確化
- スキル習得計画の作成:必要なスキルや学習機会を設計
- 長期的な成長支援:上司やメンターと協力し、成長を促す環境を提供
オンボーディングの成功には、事前準備、フォロー体制、適応状況の可視化、キャリア支援の4つのポイントが欠かせません。これらの施策を組み合わせることで、新入社員の定着率と成長速度を向上させ、企業全体の活力を高めることができます。
- 事前準備をしっかり行う(内定者フォロー、研修計画の策定)
- 上司・メンター・人事の三位一体でフォロー(組織全体で新入社員をサポート)
- 適応状況を可視化し、適宜フィードバックを実施(エンゲージメント調査、1on1面談)
- 新入社員のキャリアプランを支援する(長期的な成長を見据えた施策を用意)
外部サービスの活用
オンボーディングを成功させるためには、社内リソースだけでなく、外部の専門サービスを活用することも有効です。
- オンボーディングツールの導入:eラーニングやタスク管理システムを活用し、効率的な学習・進捗管理を実現
- 外部コンサルティングの活用:専門家の視点から、育成プランの最適化や人事制度の見直しを提案
- メンター制度の強化:外部メンターを活用し、より広い視点でのキャリアサポートを提供
すごい人事コンサルティングのご提案
弊社では、「すごい人事コンサルティング」というサービスを提供し、新入社員の育成プランの設計や、人事制度の改定、オンボーディングプロセスの最適化を支援しています。
すごい人事コンサルティングでできること
- 新入社員育成プランの設計
- 企業ごとの課題を分析し、最適な育成ロードマップを作成
- 研修内容のカスタマイズと実施サポート
- 人事制度の最適化・改定
- 定着率向上に向けた評価制度・キャリアパス設計
- 若手社員向けの成長支援施策の提案
- オンボーディングプロセスの改善
- 現行プロセスの診断と課題抽出
- 定着率向上のための具体施策の提案と実行支援
オンボーディングに課題を感じている企業様、より効果的な新入社員育成を目指す企業様は、ぜひ「すごい人事コンサルティング」をご活用ください。成功事例をもとに、貴社に最適なプランを設計し、実行支援まで一貫してサポートいたします。
貴社の人材戦略をより強固なものにするために、外部のリソースを活用しながら、組織に合ったオンボーディング施策を設計していきましょう。
まとめ
オンボーディングは単なる研修やフォローではなく、新入社員が早期に戦力化し、長期的に活躍できる環境を整えるための重要なプロセスです。私自身、多くの試行錯誤を重ねてきましたが、企業ごとに最適な施策を組み合わせ、効果的なオンボーディングプランを実施することが重要です。
「すごい人事」情報局運営元:株式会社Crepe
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