

こんにちは!今まで私は数多くのコンサルティング企業や事業会社で、中途採用支援・人事制度構築に携わって参りました。
コンサルティング会社の中途採用は、他業界と比べても選考方法や求めるスキルセットが特殊であり、人事担当者の皆さまもご苦労が絶えないのではないでしょうか。
その中でもコンサル会社の採用担当者にとって最大の悩みのひとつが「母集団形成」。いくら魅力的なポジションや選考フローを整えていても、そもそも応募者が集まらなければ採用活動は成り立ちません。
本稿では、コンサル業界ならではの視点から、中途採用における母集団形成を軸に、コンサル業界特有の課題とそれを解決するための具体策を解説します。「なかなか応募が集まらず困っている…」「採用コストばかり増えている…」という方はぜひご一読ください。
【このシリーズを読んでほしい人!】
- 優秀なコンサルタントの獲得が急務なコンサルティングファームの経営層・人事責任者
- 採用競争の激化やミスマッチに悩んでいるコンサルティングファームの経営層・人事責任者
- 採用戦略の見直しや効果的な採用手法に関心があるコンサルティングファームの人事責任者
【このシリーズを読むことで得られるメリット】
- 採用活動の効率化・効果向上に役立つ情報が得られる
- 採用プロセス全体を見直し、改善するためのヒントが得られる
- 費用対効果の高い採用チャネルの選び方がわかる
目次
- なぜコンサルタントの中途採用が難しいのか
- コンサル業界の中途採用でありがちな課題
- 母集団形成が上手くいかない主な理由
- 母集団形成を強化する5つの施策
- 次のアクションプラン
なぜコンサルタントの中途採用が難しいのか
コンサル業界における人材需要の増大
コンサルティング業界は、戦略コンサルだけでなくITコンサル、デジタルコンサル、組織・人事コンサルなど、多彩な専門領域へと拡大し続けています。
特に昨今のDX(デジタルトランスフォーメーション)需要の高まりから、「新しいテクノロジーに精通しながら、経営視点を持って課題を解決できる人材」が引っ張りだこになっているのが現状です。さらに、事業会社の経営企画や新規事業開発職などでもコンサル経験者が引っ張りだこになっているため、優秀なコンサルタント人材が慢性的に不足しているのが現状です。
他業界との人材獲得競争
即戦力コンサルタントを求めるのは、コンサルファームだけではありません。大手事業会社の経営企画部門や新規事業開発部門、テック企業のカスタマーサクセス職など、コンサル的なスキルを求めるポジションは多岐にわたっています。その結果、優秀な候補者を巡る競争が激化し、引き抜きや高年収提示が当たり前の世界になっているのです。
こうした悩みは、コンサルタントに求められるスキルの多様性と、業界ならではの選考プロセスの複雑さが生み出していると言えます。
コンサル業界の中途採用でありがちな課題
人材不足と競合の激化
コンサルタントの経験者を欲しがる企業は非常に多く、しかもファーム同士の奪い合いも激しい。実際に私が支援したあるITコンサルファームでは、「1名採用したいのに、5〜6社と同じ人材を取り合っている」という状況がざらにありました。結果として採用コストが上昇し、人事担当者の負担も増大します。
採用プロセスが長期化しやすい
コンサルの選考は往々にしてケース面接やグループディスカッション、筆記試験など複数ステップを踏むため、どうしても時間がかかります。企業側はしっかり見極めたいという思いがありますが、スピード感を求める候補者は他社に流れてしまうというジレンマが発生します。
面接官ごとの評価のブレ
「この候補者は論理的思考力は高いけど、コミュニケーションがやや苦手かもしれない」「いや、コミュニケーション問題ないよ」と面接官同士の意見が食い違うケースをよく見かけます。明確な評価基準を設けていない場合、誰を採るのかという意思決定が属人的になり、質の高い人材を逃してしまうかもしれません。
ジョブディスクリプション(JD)の不足・曖昧さ
「コンサルタント募集」と一口に言っても、その業務範囲や期待成果はファームによって異なります。曖昧なJDで候補者を集めると、実際に面接で「こんな仕事だとは思わなかった…」とミスマッチが生じ、採用活動の効率が悪化してしまいます。
「そもそも応募が集まらない」問題
コンサル業界は給与水準が高めとはいえ、働き方への厳しいイメージ(激務など)や、選考プロセスの長さが敬遠される一因となり、求人を出してもなかなか応募が来ないというケースが目立ちます。
とりわけ中小規模や知名度の低いファームは、大手や外資の影に隠れがちで、「母集団形成ができなくて、選考以前の段階で苦戦している…」というご相談をよくいただきます。
母集団形成が上手くいかない主な理由
自社の魅力が十分に伝わっていない
多くのコンサルファームでは、求人票や採用サイトで“何をやっているのか”が抽象的になりがちです。候補者側も「給与は良さそうだけど、どんな働き方をするの?」「プロジェクトの規模や進め方が見えない」という不透明感があると応募をためらいます。
採用チャネルが限定的
- 大手転職サイト頼み
- LinkedInなどSNSを活用しない
- 人材紹介エージェントに依存している
これでは応募者の幅が狭くなり、結果的に母集団が形成されにくい。コンサル業界に特化したエージェントやコミュニティを活用しなければ、欲しい人材との接点を持てないまま終わってしまいます。
強いリファラル(社員紹介)の仕組みがない
コンサルタントは人脈が広く、「優秀な人材を紹介してもらうチャンス」が実は多い業界です。しかし、社内にリファラルの仕組みが整っていなかったり、インセンティブが弱かったりして、宝の持ち腐れ状態になっているファームも少なくありません。
もっと詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
他業界や異業種からの転職潜在層への訴求不足
最近では、ITエンジニアやデータサイエンティスト、マーケターなど異なる職種の人材が「コンサルへキャリアチェンジ」するケースも増えています。ところが、コンサル特有の「未経験でも挑戦できる環境」を十分にアピールできていないため、潜在層が応募に踏み切らないまま流出してしまうことがよくあります。
母集団形成を強化する5つの施策
ここからは、上記の課題と成功事例を踏まえて、コンサル業界における中途採用の母集団形成を強化するための具体的施策を5つに整理して解説します。

①採用ブランディングと魅力発信
JD(ジョブディスクリプション)の改善
母集団形成の第一歩は、候補者が「面白そう」「自分に合っているかも」と感じる情報を分かりやすく提示すること。
- 「実際のクライアント案件の例」
- 「求めるスキルセットや期待成果」
- 「入社後に得られるキャリア機会」
を明確にし、抽象的な表現(例:『幅広い業務に携われます』)を避けるのがコツです。
オウンドメディア・SNS・ブログでの発信
コンサルの仕事は「何をやっているか分かりにくい」部分があります。そこで、自社メディアやSNSを活用して、
- プロジェクト成功事例の紹介
- 社員インタビューや1日の働き方レポート
- 新しい取り組みや社内制度の情報
などを発信すると、候補者の興味・関心を引きやすくなります。
「何をやっているのか分かりにくい」と思われがちなコンサル業界だからこそ、具体的なプロジェクト事例や働き方を発信することも重要です。
また、コンサル業界の中途採用ターゲットには、
- 戦略コンサル経験者
- ITコンサル/エンジニア系出身者
- 異業種でのマネジメント経験者
など様々なタイプが存在します。どの層を主に狙うかによって、「求職者が響きやすいメッセージ」は大きく異なります。たとえば、エンジニア出身者には「技術力を活かして経営支援ができる魅力」を強調すると効果的です。
またコンサル業界はどこも「論理的思考力」「激務」「高報酬」といったイメージが先行します。そこで、自社独自のカルチャーや強みを言語化し、「どの点で他社と異なるか」をはっきり示すことも大切です。
- 専門領域の圧倒的な実績(製造業向けコンサル、金融向けコンサルなど)
- クライアントとの長期的パートナーシップ
- 少数精鋭だからこそ得られる“若手の活躍チャンス”
「年収水準は競合と同じくらいだが、うちは裁量権が大きい」「外資並みのプロジェクトの大きさを経験できる」など、求職者が魅力を感じる“具体的な事例”を示すと効果的です。
私が支援した中では「戦略コンサルの案件事例」や「社員インタビュー」を積極発信したことで、ニッチな領域にも関わらず大手出身者やMBAホルダーが多数応募増えた事例があります。ターゲットの気になるポイントをあらかじめ言語化し、発信を続けることで、中長期的に応募が集まりやすい状態を作り上げることが可能です。
動画・ウェビナーなど多様なコンテンツ
活字の情報だけでなく、動画やオンラインセミナーも効果的です。特にコンサル業界を目指す人は知的好奇心が強い方が多いため、ウェビナーでケーススタディを公開したり、既存社員が語るリアルな声を配信するなどの手法が母集団拡大に寄与します。
②チャネル多様化とターゲット別アプローチ
転職サイト・求人媒体の最適化
総合転職サイトだけでなく、コンサル特化型、IT・エンジニア特化型など専門媒体も活用しましょう。媒体ごとの特徴を理解し、募集要件やキャッチコピーを適宜変更することが肝心です。
LinkedIn・ビジネスSNSの活用
海外だけでなく国内でも、LinkedInはビジネスパーソンの転職・キャリアチェンジにおいて主要なプラットフォームになりつつあります。現場コンサルタントや人事担当者が積極的に情報発信を行い、個別にスカウトやコンタクトをとる方法も有効です。
ターゲット層ごとの訴求ポイント調整
- 戦略コンサル経験者: 昇格スピード、案件のインパクト、報酬水準
- ITコンサル・エンジニア系: 最新技術の導入事例、スキルアップ環境、リモートワークなど柔軟な働き方
- 異業種からの転職潜在層: 未経験からでも学べる仕組み、キャリアパスの多様性
ターゲットが違えば響くポイントも違うので、求人票の段階からメッセージを変えるのがベストです。
③リファラル採用・エージェント活用の仕組み化
リファラル採用制度の強化
コンサルタントはクライアント先や業界ネットワークなど、社外に幅広い知人・同僚を持っていることが多いです。そこを活用しない手はありません。
- 紹介者へのインセンティブ(報酬や表彰など)
- 紹介された候補者への特典(選考フロー短縮や面接前のカジュアル面談など)
を明確に整備すると、社員が積極的にリファラル採用に協力してくれる可能性が高まります。
コンサル特化型エージェント・ヘッドハンターとの連携
一般的なエージェントではなく、コンサル業界専門のエージェントやヘッドハンターと組むことで、他社とは違う潜在層にリーチできるケースが増えます。要望をしっかり伝え、定期的にすり合わせを行うことで、より精度の高いマッチングが期待できます。
エージェントへの情報共有の徹底
エージェントに頼む場合、単に「コンサル経験者が欲しいです」だけでは不十分です。
- 自社の強み・社風
- プロジェクト事例
- ポジションごとの詳細な業務内容
を具体的に伝えておくと、エージェント側も最適な人材を紹介しやすくなります。
④コミュニティ・イベントでの直接接触
業界勉強会やカンファレンスへの登壇・出展
コンサルタントは問題解決や最新トレンドのキャッチアップに熱心なため、業界勉強会・セミナー・カンファレンスは有力な接点です。
- 自社のパートナーやシニアコンサルが講演・登壇する
- ブース出展し、来場者へ情報提供する
これにより、業界の有望人材に直接アプローチできるだけでなく、「この会社のコンサルタントって優秀そう」とブランディング効果が高まります。
特に私が支援した会社では、DXコンサルタントのニーズが多く、エンジニア出身者も積極的に採用していました。エンジニアコミュニティへの積極参加とイベント登壇を行うことで、ITエンジニアやデータサイエンティストが「ここなら技術を活かしてコンサルに転身できる」と応募殺到。特定分野の母集団形成に成功した事例があります。
カジュアルMeetupや会社説明会
採用イベントだけでなく、会社や業界の知見共有を目的としたMeetupなども効果的です。非公式な場で社員と候補者がコミュニケーションを取り、「一緒に働きたい」と感じてもらえると、そのまま応募につながるケースが増えます。
⑤独自の仕掛けやコンテンツマーケティング
「コンサル体験選考」やケーススタディへの招待
一部のファームでは、選考プロセス自体を“コンサル業務体験”のように演出しています。興味を持った候補者が「スキルを試してみたい」と応募することで、母集団が拡大する効果があります。
「経営課題レポート」や「業界動向分析」の無料配布
コンサルファームであれば、業界分析レポートやナレッジを外部向けに発信することで、企業や個人の興味を喚起できます。これにより潜在的な転職志望者を集め、最終的に母集団につなげる手法です。
社員によるSNS発信やオンラインサロン
社員個人がTwitterやLinkedInなどで積極的に情報発信し、フォロワーと交流を図ることで、「会社に興味を持ってもらう→応募」というルートが生まれやすくなります。また、オンラインサロンで経営・ビジネス領域の情報交換を行い、優秀な人材を巻き込むファームも増えています。
採用母集団形成についてより詳細を解説した記事もありますのでこちらもご参考にしてください。
次のアクションプラン
コンサル業界の中途採用は案件拡大や専門分野のニーズ増により、優秀な人材を取り合うハイレベルな競争が続いています。その中で母集団形成に苦戦するのは当然ですが、正しいアプローチと仕組みづくりを実施すれば状況は大きく改善できます。
次のアクション例
- 採用ブランディング再構築
- JDの見直し、オウンドメディア強化、SNSやウェビナーを活用した発信
- 採用チャネルの拡充とターゲット別訴求
- コンサル特化型、IT特化型の求人媒体を含め、LinkedIn等のビジネスSNSでスカウトを実施
- リファラル・エージェント・コミュニティ活用
- 社内紹介制度の整備、コンサル専門エージェントとの定期面談、業界イベントへの積極参加
- コンテンツマーケティングの導入
- ケーススタディや経営レポート配布、社員発信の強化で潜在候補者と接点を作る
- 成果検証と改善の継続
- 「応募数」「選考通過率」「内定率」「採用チャネル別コスト」などをモニタリングし、PDCAを回す
母集団形成は一朝一夕に成果が出るものではありませんが、腰を据えて取り組むことで、継続的に応募者が集まる“仕組み”を作ることが可能です。採用活動の土台が安定すれば、選考・評価もスムーズになり、結果的に経営のスピード感を支える優秀なコンサルタントを確保しやすくなります。
まとめ
「コンサル企業の中途採用」は高度なスキルセットを求めるがゆえに、母集団形成が難しいのは事実です。しかし本記事で紹介した施策を組み合わせることで、自社の魅力を十分に伝え、ターゲット層と強いつながりを作ることができるようになります。
この機会に、ぜひ自社の採用ブランディング・チャネル戦略を再点検し、適切な施策を導入してみてください。戦略的な母集団形成が実現すれば、次のステップ(選考や評価、定着施策)にも大きなポジティブな影響が期待できるでしょう。
ここまでご紹介した内容は、「そもそも応募を増やすこと」や「そのためにやるべきこと」を中心にまとめています。採用プロセスおよび定着やオンボーディングについては別の記事で詳しく解説する予定ですが、採用段階から「入社後の働き方」を候補者にイメージさせることも、結果的に定着率アップにつながる要素です。
人材獲得競争がますます厳しくなるコンサル業界においては、採用の仕組みを早めに整備し、自社の強みをしっかりアピールできるかどうかが大きな分かれ道になります。ぜひ、今回のポイントを参考にしながら、自社に合った採用戦略をブラッシュアップしてみてください。
あなたのコンサルファームが、求める人材と出会い、そして互いに成長していける最良の“場”となるよう、心より応援しています。
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