コンピテンシーとは?
意味や評価・面接での使い方を簡単に解説

最終更新日:2025年6月12日

現代のビジネス環境において、企業が持続的な成長を遂げるためには、優秀な人材の確保と育成が不可欠です。しかし、従来の学歴や資格だけでは、実際の業務で高いパフォーマンスを発揮できる人材を見極めることは困難です。そこで注目されているのが「コンピテンシー」という概念です。

目次

コンピテンシーとは?基本的な意味と定義

コンピテンシーの定義

コンピテンシー(competency)とは、高いパフォーマンスを発揮する人材に共通して見られる行動特性を指す概念です。英語の「compete(戦う)」から派生した言葉で、もともとは「能力」「適性」「資格」「技能」などの意味を持ちます。

ビジネスの文脈におけるコンピテンシーは、単なる知識や技術的なスキルではなく、特定の職務や役割において優秀な成果を生み出すための行動パターンや思考特性を意味します。つまり、「何を知っているか」ではなく「どのように行動するか」に焦点を当てた概念なのです。

能力・スキルとの違い

能力・スキルは、語学力、ITスキル、専門知識など、個人が保有する知識や技術そのものを指します。一方、コンピテンシーは、これらの能力やスキルを実際の業務でどのように活用し、成果につなげるかという「能力を発揮する力」や「行動特性」を意味します。

例えば、同じプログラミングスキルを持つエンジニアでも、顧客のニーズを深く理解し、チームメンバーと積極的にコミュニケーションを取りながら効率的なコードを書く人と、技術的には優秀だが顧客視点やチームワークが不足している人では、成果に大きな差が生まれます。

氷山モデルによる理解

コンピテンシーを理解するために広く用いられているのが、スペンサー夫妻が作成した「氷山モデル」です。

コンピテンシーの氷山モデル

水面より上の部分(顕在化している部分)

•知識:業務に関する専門知識や一般常識

•技能:具体的な作業を行うための技術的スキル

水面より下の部分(潜在的な部分)

•自己概念:自分自身に対する認識や価値観

•特性:性格や気質、行動傾向

•動機:何に対してやる気を感じるか、何を重視するか

氷山モデルの重要な洞察は、「目に見える成果は氷山の一角であり、真の成果を生み出すためには水面下の潜在的な部分が重要である」という点です。

コンピテンシーの歴史と背景

アメリカでの誕生(1970年代)

コンピテンシーの概念が生まれたのは1970年代のアメリカです。ハーバード大学の心理学教授であるデイヴィッド・C・マクレランドが、アメリカ国務省からの委託を受けて実施した調査が起源となっています。

マクレランドは、学歴や知能が同一レベルにある外務情報職員の間で業績に大きな差が生じる要因について調査しました。その結果、業績には学歴や知能はそれほど関係がなく、高い業績を挙げる職員には以下のような共通の特性があることが判明しました。

•異文化における対人感受性が強い

•他人に前向きな期待を抱く

•政治的ネットワークを学ぶスピードが速い

日本での導入(1990年代)

日本では1990年代ごろからコンピテンシーを導入する企業が増加しました。その背景には、バブル経済の崩壊がありました。年功序列制度の限界が明らかになり、能力重視から成果重視へとパラダイムシフトが起こったのです。

しかし、この時期の日本でのコンピテンシー導入には重要な誤解が生まれました。成果主義を導入したいとの思いから、目に見える「行動」のみがコンピテンシーであるとの誤解が生まれ、本来のコンピテンシーが持つ思考や価値観の重要性が軽視される傾向が見られました。

コンピテンシーの活用シーン

人事評価での活用

コンピテンシーを活用することで、評価基準を明確にできます。特に、基準を示すことが難しい業務プロセスの評価において客観的な基準を示せる点が重要です。評価基準が明確になることで、評価者ごとのブレが少なくなり、従業員の評価への納得度が向上します。

人材育成での活用

各職種や職務ごとにコンピテンシーを設定することで、目指すべき目標や求められる行動が明確になります。現状とのギャップや問題、取るべきアクションが明らかになり、効率的な人材育成が可能です。

人材採用での活用

自社で活躍する人材のコンピテンシーをもとに採用基準を設定することで、入社後の活躍が期待できる人材かを判断しやすくなります。学歴や資格といった表面的な情報だけでなく、実際の行動特性に基づいた評価が可能になります。

コンピテンシー評価の具体的な方法

コンピテンシーモデルの作成

コンピテンシー評価の第一歩は、自社に適したコンピテンシーモデルの作成です。組織内で高い成果を上げている人材(ハイパフォーマー)の行動特性を分析し、体系化する作業が必要です。

手順

1.ハイパフォーマーの特定

2.詳細なインタビューや行動観察の実施

3.共通する行動パターンや思考特性の識別

4.コンピテンシーモデルの構築

評価項目の設定

コンピテンシーは通常、以下のような要素群に分類されます

自己認知・成熟性
•自己認知能力、素直さ、目標達成への執着

対人関係
•コミュニケーション力、チームワーク、顧客志向性

業務遂行
•問題解決力、計画性、品質意識

リーダーシップ
•影響力、変革推進力、人材育成力

評価基準の明確化

各評価項目について、5段階のレベルで評価基準を定義します:

レベル1(基礎レベル):基本的な業務を指示に従って実行

レベル2(発展レベル):基本業務を自立して実行

レベル3(熟練レベル):複雑な業務も効率的に実行

レベル4(専門レベル):高度で複雑な業務をリード

レベル5(エキスパートレベル):組織の戦略的な方向性を決定

コンピテンシー面接の実践方法

コンピテンシー面接とは

コンピテンシー面接とは、成果を生み出す行動特性を評価する面接方法です。従来の面接とは異なり、第一印象や志望動機ではなく、事実に基づいた具体的な過去の行動を掘り下げて応募者を評価します。

STARフレームワークの活用

コンピテンシー面接の核心となるのが、STARフレームワークです:

S(Situation:状況)

•「どのような組織・チームでしたか?」

•「あなたの役割や責任はどのようなものでしたか?」

T(Task:課題)

•「どのような課題がありましたか?」

•「目標はどのように設定されていましたか?」

A(Action:行動)

•「具体的にどのような行動を取りましたか?」

•「なぜその行動を選択したのですか?」

R(Result:結果)

•「その結果、どうなりましたか?」

•「数値的な成果はありますか?」

質問例

リーダーシップに関する質問

•「チームを率いて困難なプロジェクトを成功させた経験について教えてください」

問題解決力に関する質問

•「これまでで最も困難だった問題とその解決方法について教えてください」

コミュニケーション力に関する質問

•「異なる立場の人々を説得した経験について教えてください」

コンピテンシー導入のメリット・デメリット

メリット

人事評価の質向上:客観的で公平な評価の実現

効率的な人材育成:明確な目標設定と個別化された育成計画

自社にフィットする人材の採用:採用基準の明確化

組織全体の生産性向上:個人と組織のパフォーマンス向上

デメリット・注意点

導入・運用コストの高さ:モデル作成に要する時間と労力

形骸化のリスク:表面的な導入による効果の減少

環境変化への対応の困難さ:モデル更新の必要性

画一化のリスク:多様性の欠如

成功のポイント

•トップマネジメントのコミットメント

•段階的な導入

•継続的な見直しと改善

•評価者の育成

•従業員への丁寧な説明

まとめ

コンピテンシーは、高いパフォーマンスを発揮する人材に共通して見られる行動特性を指し、人事評価、人材育成、人材採用の各領域で大きな価値を発揮します。

重要なのは、自社に適したモデルの構築、STARフレームワークの活用、継続的な改善です。メリットとデメリットを十分に理解した上で、自社の状況に応じたバランスの取れたアプローチを選択することが成功の鍵となります。

コンピテンシーは、組織の人材力を向上させ、持続的な競争優位を築くための強力なツールです。適切に活用することで、個人の成長と組織の発展を同時に実現することができるでしょう。

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