メーカー・IT企業は高専生の採用を!特徴や採用手法、採用のポイントを解説

「採用活動を精力的に進めているものの、思うように新卒の学生を採用できない」このような悩みをお持ちの方も、多いのではないでしょうか?新卒で採用できる学生は、貴社の将来を担う重要な人材です。優秀な人材を採用し競合他社との競争に勝ち抜く目的で、多くの企業は高専生に着目しています。

この記事ではメーカーやIT企業の人事担当者、人事部門、経営者に対し、高専生の採用について詳しく解説します。高専採用の実態を把握でき、高専生に合った採用活動に役立つ情報を提供します。この記事を読むことで、貴社に合った採用活動を進められるとともに、貴社の業績アップに貢献する高専生を採用しやすくなります。ぜひご一読ください。

【このシリーズを読んでほしい人!】

・思うように新卒の学生を採用できずに困っている人事担当の方

・優秀な人材を採用し、競合他社との競争に勝ち抜きたい経営者、人事担当の方

・採用活動に人手をかけられず困っている経営者や人事部門の方

【このシリーズを読むことでのベネフィット】

・高専採用の実態がわかる

・貴社の業績アップに貢献する高専生を採用できる

・貴社に合った採用活動の進め方や方法がわかる

目次

メーカー・IT企業における高専採用という選択肢

メーカーやIT企業は、大学生や大学院生を主に採用するケースが多いでしょう。なかには短大や専門学校を卒業した学生を、採用する会社もあるかもしれません。

貴社の採用活動に「高専生を採用する」という選択肢を加えることで、即戦力となる人材が社内に加わります。高専生の採用が求められる理由を、「新卒採用における市況感」と「高専生の採用ポテンシャル」という2つの観点から解説します。

新卒採用における市況感

令和の時代、大学生の新卒採用はしにくくなっています。いまや優秀な大学生は、複数の企業で取り合う状況です。思うように採用できないとお悩みのご担当者様も、多いのではないでしょうか?

リクルートは2024年12月20日に、2024年・2025年卒の新卒採用の充足率を公表しました。メーカーが属する「製造業」、IT企業が属する「サービス・情報業」ともに、採用予定数の7割~8割程度しか内定を出せていません。全体でも、2014年卒以降のなかで2番目に低い充足率となりました。

業種2025年卒2024年卒
全業種76.8%74.7%
製造業70.7%78.7%
サービス・情報業83.2%77.7%
出典:リクルート「ワークス採用見通し調査(新卒:2026年卒) 新卒採用の増勢はやや鈍化も、2026年卒も高い採用意欲 ―大手企業で新卒採用を増やす企業の割合が高まる―」 https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20241220_work_01.pdf

採用人数の不足は、従業員数の少ない企業ほど顕著になっています。従業員数300人~999人の企業は採用予定数の8割程度を確保していますが、従業員数299人未満の企業は採用予定数の6割程度しか確保できていません。

企業規模2025年卒2024年卒
5人~299人62.3%60.0%
300人~999人83.1%80.8%
1,000人~4,999人92.5%93.5%
5,000人以上92.9%90.3%
出典:リクルート「ワークス採用見通し調査(新卒:2026年卒) 新卒採用の増勢はやや鈍化も、2026年卒も高い採用意欲 ―大手企業で新卒採用を増やす企業の割合が高まる―」 https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20241220_work_01.pdf

予定人数を採用できないことを、多くの企業は課題として認識しています。リクルートは充足率向上の施策として、多くの企業が以下の項目に取り組んでいることを示しています。

  • 労働時間、教育研修、離職率などの人事情報の開示
  • 現場社員の面接や学生フォローへの協力
  • 地域の大学やゼミへの個別訪問などによる関係構築
出典:リクルート「ワークス採用見通し調査(新卒:2026年卒) 新卒採用の増勢はやや鈍化も、2026年卒も高い採用意欲 ―大手企業で新卒採用を増やす企業の割合が高まる―」 https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20241220_work_01.pdf

メーカー・IT企業における高専採用における採用ポテンシャル

高専の5年生は大学4年生よりも若い場合が多いですが、高い専門性を身につけています。高専生は5年間の一貫教育のなかで専門的な講義を受け、数多くの実習や研究を行っているためです。高専によっては専門科目の授業時間数が、大学より多い場合もあります。

高専生は絶対的な人数が少ないため、多くの学生を採用することは難しいでしょう。それだけに採用できれば、即戦力として社業の発展に貢献することが期待されます。新入社員の人数が足りない場合でも質でカバーでき、業績アップの後押しにつなげることが可能です。

特殊な「高専」という採用市場の特徴

高専は、大学や短大、専門学校と異なります。人材の採用をお考えの際には、高専ならではの特徴を踏まえて採用活動を進めなければなりません。ここからは高専の特徴と主な進路、就職が決まる方法を解説します。

高専の特徴

そもそも高専は、全国にどのくらいの学校があり、どれだけの学生が学んでいるのでしょうか?貴社の事業に直結する専門性を持てるかという点も、気になるポイントです。ここでは高専の数と専門分野について、詳しく解説します。

高専は全国で58校

高専は、全国で58校あります。1つの都道府県で60校以上を有する場合がある「高校」と比べると、希少価値のある学びの場といえるでしょう。

高専の多くは、国が設置しています。文部科学省では令和5年度(2023年度)の校数や在学生数を、以下のとおり公表しています。

区分学校数入学定員在学生数
58校10,495人56,576人
国立51校9,360人51,034人
公立3校720人3,814人
私立4校415人1,728人
引用:文部科学省「高等専門学校(高専)について」:https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kousen/index.htm

1学年当たり、1万人を超える学生が学んでいます。高専は、各地域にまんべんなく設置されていることも特徴の一つです。

地域国立公立私立
北海道4校(無し)(無し)
東北6校(無し)(無し)
関東5校1校1校
中部8校(無し)1校
近畿6校2校1校
中国8校(無し)(無し)
四国5校(無し)1校
九州・沖縄9校(無し)(無し)
出典:文部科学省「全国の国公私立高等専門学校の学科一覧(令和6年4月現在)」:https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kousen/tokushoku/001.htm

地方でも、近くに高専があるという企業は多いでしょう。「人口当たりの高専生の人数」という点に着目すると、むしろ地方のほうが多いため、採用しやすいかもしれません。自社の魅力をしっかりアピールできれば、地方でも高専生を採用できる可能性は十分にあります。

高専の専門性は技術系が主体

高専に設置されている学科は、技術系が主体です。すべての高専で、何らかの技術を学べる学科が用意されています。以下の分野のなかから、複数の学科が用意されている高専も多いです。

  • 機械・材料系
  • 電気・電子系
  • 情報系
  • 化学・生物系
  • 建設・建築系
  • 商船

上に挙げた複数の分野を学べる「複合系」の学科も、多くの高専で用意されています。

一方で技術系以外の分野を学べる高専は、以下の3校のみとなっています。

高専名技術系以外の学科名
福島高専ビジネスコミュニケーション学科
富山高専国際ビジネス学科
宇部高専経営情報学科

いずれも、ビジネスや経営に関する学科であることは特徴的です。独立行政法人 国立高等専門学校機構では、上記の学科を「社会的ニーズに対応した分野の学科」に分類しています。これらの学科では即戦力となる内容を学べるため、入社後の活躍が期待できます。

高専生の主な進路および就職先の決定方法

高専生は、すべての学生が就職するわけではありません。高専生を求める企業にとって、どの程度の学生が就職を選ぶか、また就職先はどのように決まるかということは、ぜひ知っておきたいポイントです。それぞれの内容を、確認していきましょう。

高専生の主な進路

高専生の進路は、大きく3つに分かれます。なかでも就職は、高専生の主要な進路となっています。

独立行政法人 国立高等専門学校機構では、令和5年度(2023年度)の進路状況を公表しています。まず、中学校卒業後に5年間学ぶ「本科」の進路状況をご確認ください。

進路本科
就職57%
進学(専攻科)15%
進学(大学編入)25%
その他3%
出典:独立行政法人 国立高等専門学校機構「独立行政法人 国立高等専門学校機構 概要(2024年度)」:https://www.kosen-k.go.jp/wp/wp-content/uploads/2024/07/kosengaiyo2024.pdf p16

本科生の卒業者が進学する「専攻科」は、以下の進路状況となっています。

進路専攻科
就職68%
進学(大学院)30%
その他2%
出典:独立行政法人 国立高等専門学校機構「独立行政法人 国立高等専門学校機構 概要(2024年度)」:https://www.kosen-k.go.jp/wp/wp-content/uploads/2024/07/kosengaiyo2024.pdf p16

本科生の半分強、専攻科の3分の2の学生は、就職を選びます。本科・専攻科とも、就職希望者の就職率は99%ですから、就職希望者のほぼすべてが就職できる学校です。

高専生の就職先はどのような方法で決まるか

高専生が就職先を決める方法は、以下の2通りに分かれます。

  • 学校推薦
  • 自由応募

学校推薦は高専から発行される推薦状とともに、貴社へ応募する方法です。内定後は、貴社への就職が確約されます。一方で企業は、あらかじめ高専との信頼関係を構築しておかなければならないことに注意してください。

自由応募は、学生が自由に企業を選んで応募する方法です。推薦枠を設けていない高専の学生も採用でき、入社後に活躍してもらうことが可能です。一方で学生は、他の企業の選考も進めている場合が多いです。このため優秀な人材を他社に奪われてしまい、選考の途中や内定を出した後に辞退されるリスクがあることに注意しなければなりません。

高専採用の主な採用手法

高専生は、さまざまな方法で採用できます。一方でそれぞれの方法には、特徴があります。長所と短所をしっかり把握したうえで、貴社に合った方法を選ぶことが重要です。

ここからは、高専採用の主な手法を確認していきましょう。

採用につながる手段の一覧

高専生の採用につながる主な手段を、以下の表にまとめました。メリットだけでなく、デメリットや注意点も含めてご確認ください。

採用につながる手段メリットデメリットや注意点
高専から推薦してもらう(学校推薦)選考に合格した学生は、入社が確約される。能力の高い学生を採用しやすいあらかじめ高専と打ち合わせ、信頼を得る必要がある。優秀な学生が多い高専でも、推薦枠以上の応募はしてもらえない
就活サイトなど、Web媒体を活用する全国から、意欲ある学生の応募を促せる。学校推薦の対象に含まれない高専生も採用できる可能性がある媒体に掲載する料金が必要。募集要件に合致しない学生からの応募が、多数寄せられる可能性がある
就活エージェントを活用する学生に求める要件を細かく指定し、要件に合った学生にアプローチできる。採用活動を非公開で進めることも可能内定を出した時点で、まとまった費用がかかる。ニッチな分野の場合は、要件を満たす学生がいない可能性もある
自社の公式サイトで募集するコストが抑えられる。掲載内容やアピールポイントも自由に決められる。どの高専生も応募できる知名度が低い企業は高専生に気づかれず、応募してもらえないリスクが大きい

どの方法も、メリット・デメリットがあります。貴社の人材に求めるニーズを踏まえて、入社後に活躍する人材を採用しやすい方法を選びましょう。

高専採用の就職活動スケジュール

せっかく学生を採用するなら、入社後に活躍して欲しいもの。優秀な学生を採用するためには、まず高専生の就職活動スケジュールを把握する必要があります。そのうえで、適切なタイミングで採用活動に取り組むことが重要です。

ここからは高専採用の就職活動スケジュールと、適切なタイミングを確認していきましょう。

採用までの就職活動スケジュール

高専生の採用にフォーカスを当てたスケジュールは、以下のとおりとなります。

時期主な対応
前年8月~3月インターンシップや企業説明会などを開催する
3月1日学校推薦の求人票が公開される
3月~高専生の就職活動が始まる。選考を実施する
5月~入社して欲しい高専生に対して、順次内定を出す採用人数を充足していない企業は、採用を継続する。または追加募集を行う。内定が得られなかった学生の応募が期待できる

 

夏から3月までにインターンシップや会社説明会を実施したのち、3月から選考を開始して5月以降に順次内定を出すといったスケジュールとなります。

企業が採用活動に取り組む適切なタイミング

高専生の採用活動に取り組む企業は、どのタイミングで動けばよいのでしょうか?多くの高専生が学校推薦を受けて応募する時期になると、新たに貴社への関心を持つ高専生は限られます。その前に学校や高専生に対して、貴社をアピールしておかなければなりません。

高専では1月下旬から2月上旬にかけて、試験が行われます。試験前の学生は試験勉強で忙しく、なかなか就活への意識が向きません。他社に先んじてインターンシップを行いたい企業は、12月までに行っておくとよいでしょう。高専生の就職先候補に、貴社が含まれる可能性がアップします。

また求人票の公開は、3月1日から始まります。2月末までに、学生からの応募を受け付け選考を進める体制を整えておきましょう。

高専採用の注意点と成功に導くポイント

ここまでの解説で、高専生を採用することに前向きな気持ちを持った方も多いのではないでしょうか?高専生を採用する際には、ぜひ押さえておきたいポイントが3つあります。

  • 面接やインターンシップ、会社説明会に来る高専生の多くは、18歳~20歳
  • 高専は5年生でも、平日は朝から夕方までみっちり授業が入っているケースが多い
  • 学校推薦を使った就職が多いため、高専とのつながりが重要

就活する高専生の多くは、18歳から20歳です。成人年齢に到達しているとはいえ、大学3年生や4年生と比べると、やり取りや受け答えに物足りなさを感じるかもしれません。選考の際には、この点も考慮することが求められます。

スケジュール調整にも配慮が必要です。大学4年生はほとんどの授業を履修し、研究活動に没頭する学生も多いでしょう。一方で高専の5年生は、平日は朝から夕方までみっちり授業が入っている場合も多いです。面接を組む場合は学業を優先し、学生のスケジュールをよく調整してください。またインターンシップや会社説明会は、高専の長期休業中に実施することもよい方法です。

そもそも高専生は、学校推薦を使って就職する比率が高いことにも着目してください。この点で、高専とのつながりは重要です。早いうちに高専へアピールを行い、学校とのパイプを太くしておきましょう。

新卒採用で苦戦しているメーカーさん・IT企業さんはすごい人事へご相談ください

慢性的な人手不足の時代、新卒採用で苦戦するメーカーやIT企業も多いのではないでしょうか?PDCAを活用して自社で課題解決する姿勢は、どの企業にも求められるものです。一方で社内関係者だけで議論すると、「暗黙の議論の前提」などの制約を無意識にかけてしまう場合があります。貴社に最適な手法を選べないかもしれません。

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