人材育成とは?
手順や成功させるためのポイントを解説

最終更新日:2025年9月18日

企業の持続的な成長を支える上で、「人材育成」は不可欠な要素です。しかし、その重要性を認識しつつも、「何から手をつければ良いのか分からない」「効果的な育成方法が見つからない」といった悩みを抱える人事担当者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、人材育成の基本的な考え方から、具体的な手順、そして成功に導くためのポイントまでを体系的に解説します。人事担当者として、自社の成長を牽引する人材を育成するための羅針盤として、ぜひご活用ください。

目次

人材育成とは

人材育成とは

人材育成とは、企業が従業員の知識、スキル、能力を向上させ、企業の目標達成に貢献できる人材を育てるための計画的かつ継続的な活動全般を指します。単なる研修の実施に留まらず、個々の従業員のキャリアプランや企業の経営戦略と連動させながら、長期的な視点で取り組むことが重要です。

人材育成の定義と目的

人材育成の基本的な定義は、「企業のビジョンや経営戦略に基づき、従業員の能力を最大限に引き出し、組織全体のパフォーマンス向上に繋げること」です。その目的は多岐にわたりますが、主に以下の3つが挙げられます。

1.企業の競争力強化
従業員のスキルアップにより、生産性の向上や新たな価値創造が促進され、企業の競争力が高まります。

2.従業員のエンゲージメント向上
自身の成長を実感できる環境は、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高め、組織への貢献意欲を促進します。

3.持続的な組織成長の実現
次世代のリーダーや専門家を育成することで、組織の持続的な成長と発展を可能にします。

人材開発・能力開発との違い

人材育成と混同されやすい言葉に「人材開発」と「能力開発」があります。これらの言葉は似ていますが、それぞれ異なるニュアンスを持っています。

人材開発
従業員が持つ潜在能力を引き出し、将来的に組織内でより大きな役割を果たせるよう、長期的な視点で育成する活動を指します。人材育成よりも、個々のキャリア開発や自己実現の側面に重きを置く傾向があります。

能力開発
特定の業務に必要なスキルや知識を習得させるための、より具体的なトレーニングや教育を指します。人材育成という大きな枠組みの中で行われる、個別の施策と捉えることができます。

これらの違いを理解し、それぞれの目的に応じて適切なアプローチを選択することが、効果的な人材育成に繋がります。

人材育成の重要性

人材育成の重要性

現代のビジネス環境において、人材育成の重要性はますます高まっています。少子高齢化による労働人口の減少や、グローバル化、テクノロジーの進化など、企業を取り巻く環境は常に変化しており、その変化に対応できる人材の育成が急務となっているからです。

企業成長への貢献

人材育成は、企業の持続的な成長に不可欠です。従業員一人ひとりのスキルや能力が向上することで、組織全体の生産性が高まり、新たなイノベーションが生まれやすくなります。また、顧客ニーズの多様化や市場の変化に迅速に対応できる、柔軟で強固な組織体制を構築することにも繋がります。

社員のモチベーション向上

企業が従業員の成長を支援する姿勢を示すことは、従業員のモチベーションやエンゲージメントを大きく向上させます。自身のキャリアパスを明確に描き、成長の機会が与えられる環境は、従業員の定着率を高め、優秀な人材の流出を防ぐ効果も期待できます。結果として、組織全体の活性化に繋がり、より高いパフォーマンスを発揮する組織文化が醸成されます。

人材育成の手順

人材育成の手順

効果的な人材育成を実現するためには、場当たり的な施策ではなく、計画的かつ体系的なアプローチが不可欠です。ここでは、人材育成を成功に導くための具体的な手順を4つのステップに分けて解説します。

課題の抽出

最初に行うべきは、自社の現状を正確に把握し、人材育成における課題を明確にすることです。経営層へのヒアリング、従業員へのアンケート調査、業績データや人事データの分析など、多角的な視点から情報を収集し、組織全体、部門、階層、個人といった様々なレベルで課題を洗い出します。「営業部門の提案力が弱い」「次世代のリーダー候補が不足している」「若手社員の離職率が高い」など、具体的な課題を特定することが、後の育成計画の精度を高める上で重要になります。

目的・目標の明確化

次に、抽出された課題をもとに、人材育成の目的と目標を具体的に設定します。目的とは、「なぜ人材育成を行うのか」という根本的な理由であり、企業の経営理念やビジョンと連動している必要があります。一方、目標は、その目的を達成するための具体的な指標であり、「いつまでに、誰が、どのような状態になるか」を明確に定義します。例えば、「3年後までに、次世代リーダー候補を10名育成する」「新入社員の入社後1年以内の離職率を5%未満に抑える」といったように、具体的で測定可能な目標(SMART目標)を設定することが、施策の効果測定や進捗管理を容易にします。

育成方法の策定

目的と目標が明確になったら、それを達成するための具体的な育成方法を策定します。育成方法には、OJT(On-the-Job Training)、Off-JT(Off-the-Job Training)、SD(Self Development/自己啓発)の3つの主要な柱があります。

OJT
日常業務を通じて、上司や先輩が部下や後輩に対して指導を行う育成方法です。実践的なスキルや知識を効率的に習得できるというメリットがあります。

Off-JT
職場を離れて行われる研修やセミナーなどの育成方法です。体系的な知識や専門的なスキルを学ぶのに適しています。

SD(自己啓発)
従業員が自発的に学習や能力開発に取り組むことを支援する制度です。書籍購入補助や資格取得支援などが含まれます。

これらの育成方法を、対象となる従業員の階層、職種、個々のスキルレベルやキャリアプランに合わせて、効果的に組み合わせることが重要です。例えば、新入社員にはOJTとOff-JTを組み合わせた導入研修を実施し、中堅社員には専門性を高めるためのOff-JTや自己啓発支援を提供するなど、多角的なアプローチが求められます。

実行・評価・改善

育成計画を策定したら、いよいよ実行に移します。しかし、計画を実行するだけで終わりではありません。定期的に施策の効果を評価し、必要に応じて計画を修正していく、PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回すことが不可欠です。

効果測定の方法としては、研修後のアンケートやテスト、行動変容の観察、業績への貢献度など、様々な指標が考えられます。これらの評価結果をもとに、「研修内容は適切だったか」「OJTは機能しているか」「目標は達成できたか」などを検証し、次の育成計画に活かしていくことで、人材育成の質を継続的に高めていくことができます。

企業が抱える人材育成の課題

企業が抱える人材育成の課題

多くの企業が人材育成の重要性を認識しながらも、様々な課題に直面しています。ここでは、企業が抱えがちな代表的な課題と、その解決に向けたアプローチについて解説します。

よくある課題

1.時間とコストの不足
研修の企画・運営や、OJTにおける指導者の時間確保など、人材育成には相応の時間とコストがかかります。特に、中小企業においては、専任の担当者を置くことが難しく、育成が後回しにされがちです。

2.指導者のスキル不足
OJTの中心となる現場の管理職や先輩社員が、指導やフィードバックのスキルを十分に持っていないケースも少なくありません。その結果、育成効果が上がらないばかりか、部下のモチベーションを低下させてしまうこともあります。

3.育成効果の測定が困難
育成施策が、実際にどの程度従業員の行動変容や業績向上に繋がったのかを定量的に測定することは容易ではありません。そのため、施策の有効性を客観的に評価し、改善に繋げることが難しいという課題があります。

4.経営層の理解不足
経営層が人材育成の重要性を十分に理解しておらず、短期的な成果を求めるあまり、長期的な視点での投資に消極的な場合があります。その結果、育成に必要な予算やリソースが確保できず、計画が頓挫してしまうこともあります。

課題解決のアプローチ

これらの課題を解決するためには、以下のようなアプローチが有効です。

経営層の巻き込み
人材育成が経営戦略の重要な一部であることを経営層に理解してもらい、積極的に関与してもらうことが不可欠です。育成計画の策定段階から経営層を巻き込み、コミットメントを得ることで、必要なリソースを確保しやすくなります。

指導者への教育
OJTの質を高めるために、管理職や指導者向けの研修を実施し、コーチングやフィードバックのスキルを向上させることが重要です。指導者の育成が、ひいては組織全体の育成力強化に繋がります。

効果測定の仕組み化
育成施策の企画段階で、効果測定の指標や方法をあらかじめ設計しておくことが重要です。アンケートやテストだけでなく、行動観察や360度評価、業績データとの連携など、多角的な視点から効果を測定し、継続的に改善していく仕組みを構築します。

外部リソースの活用
自社だけで全てを賄おうとせず、必要に応じて外部の研修会社やコンサルタントなどの専門家を活用することも有効な手段です。最新の育成手法や他社の成功事例を取り入れることで、より効果的な育成を実現できます。

階層別の人材育成計画

階層別の人材育成計画

人材育成は、全社員に同じプログラムを提供するのではなく、それぞれの階層や役割に応じた計画を立てることが効果的です。ここでは、新入社員、中堅社員、管理職の3つの階層に分け、それぞれの育成ポイントを解説します。

新入社員の育成

新入社員の育成で最も重要なのは、社会人としての基礎力と、自社の企業文化への適応を促すことです。ビジネスマナーやPCスキルといった基本的なスキルはもちろん、企業の理念やビジョンを共有し、組織の一員としての自覚を持たせることが求められます。OJTを主体としつつ、集合研修で同期との連帯感を醸成したり、メンター制度を導入して精神的なサポートを行ったりするなど、多角的な支援が有効です。

中堅社員の育成

中堅社員は、現場の第一線で活躍するだけでなく、後輩の指導やチームの中核としての役割も期待される重要な存在です。この階層には、自身の専門性をさらに深めるための高度なスキル研修や、リーダーシップや問題解決能力といったポータブルスキルを向上させるための育成機会を提供することが重要です。また、自身のキャリアについて考える機会を提供し、将来のキャリアパスを明確にすることも、モチベーション維持に繋がります。

管理職の育成

管理職は、組織の目標達成に責任を持ち、部下の育成やチームのパフォーマンス向上を担う、人材育成のキーパーソンです。管理職には、マネジメントスキルやリーダーシップはもちろん、経営的な視点から物事を考える戦略的思考力や、組織変革を推進する力が求められます。次世代の経営幹部候補として、より高度な経営知識やグローバルな視野を養うための選抜型研修なども有効です。

人材育成を成功させるポイント

人材育成を成功させるポイント

これまでに解説してきた手順や計画に加えて、人材育成を真に成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。

継続的な取り組み

人材育成は、一度研修を実施すれば終わりというものではありません。企業の成長や事業環境の変化に合わせて、育成体系を常に見直し、改善していく継続的な取り組みが不可欠です。長期的な視点を持ち、PDCAサイクルを回し続けることで、人材育成は組織の文化として根付いていきます。

組織全体での支援

人材育成は、人事部門だけの仕事ではありません。経営層の強いコミットメントのもと、現場の管理職や従業員一人ひとりが育成の重要性を理解し、協力し合う風土を醸成することが重要です。特に、OJTのキーパーソンである直属の上司の関与は、部下の成長に大きな影響を与えます。上司が部下のキャリアに関心を持ち、日々の業務の中で成長を支援する「育成する文化」を組織全体で作り上げることが、成功への鍵となります。

まとめ

本記事では、人材育成の基本的な考え方から、具体的な手順、成功のポイントまでを解説しました。人材育成は、企業の未来を創るための重要な投資です。自社の課題を明確にし、長期的な視点で計画を立て、組織全体で取り組むことで、従業員と企業が共に成長していく好循環を生み出すことができます。

この記事が、貴社の人材育成活動を推進する一助となれば幸いです。

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