持株会社化(ホールディングス化)の手順とは?管理機能を集約・最適化する方法
企業が成長し、事業の多角化やM&Aによる規模拡大を進める中で、従来の単一組織体制では経営のスピードや柔軟性を維持することが困難になります。このような課題を解決するための有効な手段として、多くの企業が「ホールディングス化(持株会社体制への移行)」を選択しています。
ホールディングス化は、経営と執行を分離し、グループ全体の最適化を図るための強力な経営手法です。しかし、単に組織図を書き換えるだけでは、その真価を発揮することはできません。ホールディングス化の成功の鍵を握るのは、グループ内に分散している人事、経理、法務、ITなどの「管理機能の集約(シェアードサービス化)」です。
本記事では、ホールディングス化の基本概念から、管理機能を集約するための具体的なプロセス、そして成功に導くためのポイントまでを体系的に解説します。
目次
- ホールディングス化の基本概念と3つのスキーム
- ホールディングス化がもたらすメリットとデメリット
- 管理機能の集約(シェアードサービス)とは
- 管理機能集約のための6つの実践プロセス
- ホールディングス化と管理機能集約を成功に導くポイント
- まとめ
ホールディングス化の基本概念と3つのスキーム
ホールディングス(持株会社)とは何か
ホールディングス(持株会社)とは、自らは具体的な事業活動を行わず、傘下にある子会社の株式を保有することで、グループ全体の経営管理や戦略立案に専念する会社形態を指します。
持株会社には大きく分けて2つの種類があります。1つは、自らは一切の事業を行わず、純粋に子会社の管理のみを行う「純粋持株会社」です。もう1つは、自らも何らかの事業を行いながら、同時に子会社の管理も行う「事業持株会社」です。近年、経営の効率化やガバナンス強化を目的として設立されるケースの多くは、前者の純粋持株会社です。
ホールディングス化を実現する3つのスキーム
企業がホールディングス体制へ移行する際、主に以下の3つのスキーム(手法)が用いられます。企業の現状や目的に応じて、最適なスキームを選択することが重要です。
以下の図は、ホールディングス化を実現する3つの主要なスキームを比較したものです。

1.株式移転既存の会社の株主が保有する株式を、新設する持株会社に取得させる手法です。既存の株主構成をそのまま維持しつつ、新たな持株会社を設立したい場合に適しています。
2.株式交換既存の会社(完全子会社となる会社)の株式を、別の既存の会社(完全親会社となる会社)に取得させる手法です。すでに存在する会社を持株会社として活用し、他の会社を完全子会社化したい場合に用いられます。
3.会社分割既存の会社が営む事業の一部または全部を分割し、別の会社(新設または既存)に承継させる手法です。事業部門ごとに子会社として独立させ、元の会社を持株会社として残す場合などに有効です。
ホールディングス化がもたらすメリットとデメリット
経営効率化とリスク分散のメリット
ホールディングス化には、企業経営において以下のような大きなメリットがあります。
経営と執行の分離による意思決定の迅速化
持株会社がグループ全体の戦略立案や資源配分に集中し、各事業会社が現場の業務執行に専念することで、それぞれの役割が明確になり、意思決定のスピードが向上します。
事業リスクの分散
事業ごとに別法人として独立させることで、ある事業で発生した損失や法的トラブルが、他の事業やグループ全体に波及するリスクを最小限に抑えることができます。
M&Aや事業承継の柔軟性向上
事業単位で子会社化されているため、特定の事業の売却(カーブアウト)や、新たな企業の買収・統合が容易になります。また、後継者への事業承継においても、株式の移転や経営権の委譲がスムーズに行えます。
業績の可視化と適正な評価
事業別・子会社別に独立した会計が行われるため、各事業の収益性や効率性を客観的かつ正確に評価することが可能になります。
管理コスト増加とガバナンスのデメリット
一方で、ホールディングス化には注意すべきデメリットも存在します。
管理コストの増加
法人ごとに経理、法務、人事などの管理部門が必要となる場合があり、グループ全体での管理コストや人件費が増加するリスクがあります。
グループガバナンスの複雑化
子会社が独立した法人となるため、持株会社からの統制が効きにくくなり、グループ全体のガバナンス(企業統治)が複雑化する可能性があります。
意思決定の遅延リスク
持株会社と事業会社の間で意見の相違が生じた場合、調整に時間がかかり、結果として意思決定が遅れるリスクがあります。
これらのデメリット、特に「管理コストの増加」を克服し、ホールディングス化のメリットを最大化するために不可欠なのが、「管理機能の集約(シェアードサービス化)」です。
管理機能の集約(シェアードサービス)とは
シェアードサービスの概念と目的
シェアードサービスとは、複数のグループ企業に分散している経理・財務、人事・給与、総務、情報システム、法務などの間接業務(バックオフィス業務)を、1つの専門組織(シェアードサービスセンター)に集約し、標準化・効率化を図る経営手法です。
ホールディングス化に伴い、各子会社に管理部門を配置すると、業務の重複や非効率が発生します。これを防ぐために、持株会社内、あるいは独立したシェアードサービス専門の子会社に管理機能を集約することで、グループ全体のコスト削減と業務品質の向上を同時に実現します。
管理機能集約がもたらす3つの効果
管理機能を集約することで、企業は以下の図に示すような3つの大きな効果を得ることができます。

1.コスト削減と生産性向上
業務の集約と標準化により、重複業務が排除され、規模の経済が働きます。また、ITシステムやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入効果が高まり、大幅な生産性向上が期待できます。
2.専門性の向上と業務品質の均一化
専門知識を持った人材が一箇所に集まることで、業務の専門性が高まります。また、グループ全体で統一された業務プロセスと基準が適用されるため、業務品質のばらつきが解消されます。
3.経営資源の戦略的シフト
各事業会社は煩雑な管理業務から解放され、本来のコア業務(営業、開発、製造など)に経営資源を集中させることができます。
管理機能集約のための6つの実践プロセス
管理機能の集約(シェアードサービス化)は、単に人を一箇所に集めるだけでは成功しません。以下の図に示す6つのステップに沿って、計画的かつ段階的に進めることが重要です。

STEP1:統合対象業務と拠点の洗い出し
まずは、グループ各社で行われている管理業務の現状を正確に把握します。どの業務を、どの拠点で、誰が、どのように行っているのかを棚卸しします。その上で、シェアードサービス化に適した業務(定型的・反復的な業務)と、各事業会社に残すべき業務(事業に密着した非定型業務)を切り分けます。
STEP2:業務フローの再設計と標準化
各社で異なっていた業務プロセス、ルール、フォーマットを統一し、標準的な業務フローを再設計します。このプロセス標準化が不十分なまま集約を進めると、シェアードサービスセンター内で混乱が生じ、かえって非効率になります。同時に、ガバナンスや内部統制の観点から、承認権限やチェック体制も整備します。
STEP3:組織体制と人員スキルのプランニング
シェアードサービスセンターの組織体制を設計します。持株会社の一部門とするか、独立した子会社とするかを決定し、必要な人員規模を算定します。また、各事業会社から異動する人材のスキル評価を行い、不足するスキルについては教育・研修計画を策定します。
STEP4:ITシステム・デジタルツールの選定と統合
業務の標準化と効率化を支えるIT基盤を整備します。グループ各社でバラバラだったERP(統合基幹業務システム)、人事システム、経費精算システムなどを統合・刷新します。また、RPAやAI-OCRなどのデジタルツールを積極的に活用し、業務の自動化を推進します。
STEP5:段階的な移行スケジュールの策定
すべての業務や対象会社を一度に移行するのはリスクが高いため、段階的な移行(フェーズドアプローチ)を計画します。例えば、まずは経理業務の一部から始め、徐々に対象業務を拡大していく、あるいは特定のモデル企業から先行して導入し、成功事例を作ってから他社へ展開するなどの方法が有効です。
STEP6:立ち上げ後のKPI管理と継続的改善
シェアードサービスセンターが稼働した後は、提供するサービスの品質や効率性を測定するためのKPI(重要業績評価指標)を設定します。例えば、処理件数、エラー率、コスト削減額、事業会社からの満足度などを定期的にモニタリングし、継続的な業務改善(PDCAサイクル)を回し続けます。
ホールディングス化と管理機能集約を成功に導くポイント
ホールディングス化と管理機能の集約を成功させるためには、以下の図に示す3つのポイントを押さえることが不可欠です。

経営トップの強力なコミットメント
ホールディングス化および管理機能の集約は、グループ全体の組織風土や働き方を根本から変える全社的な変革プロジェクトです。各事業会社からの抵抗や反発(「自分たちのやり方を変えたくない」「権限を奪われたくない」など)が必ず発生します。これを乗り越えるためには、経営トップが変革の目的と意義を繰り返し発信し、強力なリーダーシップを発揮することが不可欠です。
チェンジマネジメントと丁寧なコミュニケーション
変革に対する従業員の不安や抵抗を和らげるための「チェンジマネジメント」が重要です。プロジェクトの初期段階から、各事業会社のキーパーソンを巻き込み、意見を吸い上げながら進めることで、納得感を醸成します。また、シェアードサービスセンターへ異動する従業員に対しては、キャリアパスや評価基準を明確に示し、モチベーションを維持する工夫が求められます。
「コスト削減」だけでなく「価値創造」を目指す
管理機能の集約を単なる「コスト削減策」として位置づけると、現場の疲弊を招きかねません。シェアードサービスセンターを、グループ全体のデータを集約・分析し、経営の意思決定を支援する「価値創造の拠点(CoE:Center of Excellence)」へと進化させる視点を持つことが、真の成功につながります。
まとめ
ホールディングス化と管理機能の集約は、企業が次なる成長ステージへ飛躍するための強靭なプラットフォーム(基盤)を構築するプロセスです。
経営と執行を分離し、事業会社がコアビジネスに専念できる環境を整えること。そして、標準化・効率化された管理機能がグループ全体を強力にバックアップすること。この両輪が機能して初めて、ホールディングス体制は真の競争力を生み出します。
本記事で解説したプロセスとポイントを参考に、自社にとって最適なグループ経営体制の構築に向けて、第一歩を踏み出してください。

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