2025年使える「採用補助金」を徹底解説

最終更新日:2025年9月1日

新しい人材を採用する際には、求人広告の掲載、採用ホームページの制作、選考など、さまざまなコストが発生します。これらの採用コストが負担となり、採用活動に十分な予算を割くことが難しい場合、国や自治体が運用する雇用関係助成金を活用することも一つの有効な手段です。

この記事では、数ある雇用関係助成金の中から、特に人材採用に関連する採用補助金の種類、受給要件、そして基本的な申請方法について、厚生労働省の公式情報に基づいて詳しく解説します。

目次

採用活動に使える補助金・助成金とは

採用補助金とは、雇用の促進や職場環境の改善などを目的として、国や地方公共団体から支給されるお金のことです。これらの制度は、企業の人材確保を支援し、労働市場の活性化を図ることを目的として設計されています。

補助金と助成金の違い

補助金と助成金は、どちらも国や地方公共団体などから支給されるお金で、原則として返済は不要です。補助金は、採択件数や予算があらかじめ決められていることが多く、申請しても受給できない場合があります。一方、助成金は、要件を満たせば基本的に受給できます。

雇用関係助成金の概要

厚生労働省が運用する雇用関係助成金は、雇用の安定、職場環境の改善、仕事と家庭の両立支援、人材開発の促進などを目的として、事業主に対して支給される制度です。これらの助成金は、労働者の雇用機会の拡大と雇用の安定を図ることを目的としています。

採用補助金を活用するメリット

採用コストの軽減効果

採用活動には多額の費用が必要となります。求人広告費、人材紹介会社への手数料、面接や選考にかかる人件費、新入社員研修費用など、これらのコストは企業経営に大きな負担となることがあります。助成金制度を活用することで、限られた予算の中でもより効果的な採用活動を展開することができます。

人材育成・定着への効果

補助金・助成金の中には従業員の継続的な教育や訓練を支援するものもあるため、従業員のスキルアップや職場定着にもつながります。企業は質の高い人材育成を行うことができ、安定した人材基盤を構築できます。

企業の社会的責任の実現

助成金制度を活用することで、高齢者、障害者、母子家庭の母などの就職困難者の雇用促進に貢献できます。これにより、企業の社会的責任(CSR)の実現にもつながります。

企業存続と雇用を守る補助金・助成金

雇用調整助成金

雇用調整助成金は、経営状況の悪化により従業員の雇用調整(休業や出向など)を行った事業主に対し、休業手当や賃金の一部を助成する制度です。

主な支給要件は以下の通りです。雇用保険の適用事業主であることが基本的な要件となります。売上高や生産量などの事業活動を示す指標が、直近3ヶ月の月平均で前年同期より10%以上減少していることが必要です。

産業雇用安定助成金

産業雇用安定助成金は、新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、在籍型出向により労働者の雇用維持を図る場合に、出向元と出向先の双方の事業主に対して助成する制度です。

○ 産業連携人材確保等支援コース

景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされたため、生産性向上に資する取組等を行い、当該生産性向上に資する取組等に必要な新たな人材を雇い入れる事業主に対して助成されます。

○ スキルアップ支援コース

労働者のスキルアップを在籍型出向により行い、出向から復帰した際の賃金を出向前と比較して5%以上上昇させる事業主に対して助成されます。

再就職をサポートする補助金・助成金

早期再就職支援等助成金

早期再就職支援等助成金は、企業が離職を促す労働者の再就職支援を委託することで、早期の雇い入れや生産性向上を実現した際に支給される助成金です。

○ 再就職支援コース

離職を余儀なくされる労働者の再就職支援を民間職業紹介事業者に委託して行う事業主に対して助成されます。

○ 雇入れ支援コース

離職を余儀なくされた労働者を早期に雇い入れ、雇い入れ後の賃金と比較して5%以上上昇させる事業主に対して助成されます。

○ 中途採用拡大コース

中途採用者の雇用管理制度を整備した上で中途採用者の採用を拡大する事業主に対して助成されます。

○ UIJターンコース

東京圏から移住者を雇い入れる事業主に対して助成されます。地方創生の推進と東京一極集中の是正を目的としています。

雇用促進に役立つ補助金・助成金

特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金は、高齢者や母子家庭の母といった就職困難者を雇い入れる際に利用できる助成金です。

○ 特定就職困難者コース

高年齢者・障害者・母子家庭の母などの就職困難者を雇い入れる事業主に対して助成されます。支給額は、労働者のタイプや企業の規模によって異なります。

○ 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

発達障害者または難治性疾患患者を雇い入れる事業主に対して助成されます。

○ 中高年齢者安定雇用支援コース

いわゆる就職氷河期世代を含む中高年齢者のうち、正規雇用の機会を逸したことなどにより十分なキャリア形成がなされず、正規雇用に就くことが困難な者を正規雇用労働者として雇い入れた事業主に対して助成されます。

○ 生活保護受給者等雇用開発コース

自治体からハローワークに就労支援の要請があった生活保護受給者等を雇い入れる事業主に対して助成されます。

○ 成長分野等人材確保・育成コース

特定求職者雇用開発助成金の対象労働者を成長分野等の業界に従事する者として雇い入れる、または未経験の特定求職者雇用開発助成金の対象労働者を雇い入れ、一定の訓練を実施して育成する事業主に対して助成されます。

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金は、無期雇用を前提とした「トライアル雇用」を実施する事業主に対して支給される助成金です。

○ 一般トライアルコース

職業経験の不足などから就職が困難な求職者を試行的に雇い入れる事業主に対して助成されます。支給額は、対象者1人につき月額最大4万円で、最長3ヶ月間支給されます。

○ 障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース

障害者を試行的・段階的に雇い入れる事業主に対して助成されます。

○ 若年・女性建設労働者トライアルコース

建設業の中小事業主が若年者(35歳未満)又は女性を建設技能労働者として試行雇用する場合に助成されます。

地域雇用開発助成金

地域雇用開発助成金は、雇用機会が特に不足している地域等において、事業所の設置・整備を行い、併せて地域求職者等を雇い入れる事業主に対して助成を行う制度です。

○ 地域雇用開発コース

雇用情勢が特に厳しい地域で、事業所の設置整備をして従業員を雇い入れる事業主に対して助成されます。

○ 沖縄若年者雇用促進コース

沖縄県内で事業所の設置整備をして35歳未満の若年者を雇い入れる事業主に対して助成されます。

職場環境改善に役立つ補助金・助成金

人材確保等支援助成金

人材確保等支援助成金は、雇用管理改善、生産性向上などの取組により、従業員の職場定着の向上等を図る事業主に対して助成する制度です。

○ 雇用管理制度・雇用環境整備制度助成コース

雇用管理制度(賃金制度制度、評価・処遇制度、人事評価制度、就業活性化制度、健康づくり制度)や業務負担軽減機器等の導入を通じて、従業員の職場定着を支援する事業主に対して助成されます。

○ テレワークコース

適正な労務管理下における良質なテレワークの導入・実施を通じて従業員の離職率の低下を図る事業主に対して助成されます。

65歳超雇用推進助成金

65歳超雇用推進助成金は、高齢者の雇用安定や就業促進を目的として設けられた助成金です。

○ 65歳超継続雇用促進コース

65歳以上への定年引上げ等を実施する事業主に対して助成されます。

○ 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース

高年齢者の雇用管理制度を整備する事業主に対して助成されます。

○ 高年齢者無期雇用転換コース

高年齢の有期契約労働者を無期雇用に転換する事業主に対して助成されます。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。

○ 正社員化コース

有期雇用労働者等(契約社員・パート・派遣社員など)を正社員化する事業主に対して助成されます。

○ 賃金規定等改定コース

すべてまたは一部(職種別や雇用形態別)の有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を改定し、3%以上増額させる事業主に対して助成されます。

ワークライフバランスを支援する補助金・助成金

両立支援等助成金

両立支援等助成金は、職業生活と家庭生活が両立できる職場環境づくりのための取組を行う事業主を支援する制度です。

○ 出生時両立支援コース

中小企業が男性の育児休業取得促進に取り組む場合に助成されます。

○ 介護離職防止支援コース

中小企業が仕事と介護の両立支援に取り組む場合に助成されます。

○ 育児休業等支援コース

中小企業が労働者の円滑な育児休業取得・職場復帰に取り組む場合に助成されます。

○ 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース

不妊治療、女性の健康課題(月経、更年期)に対応するための雇用環境整備に取り組む事業主に対して助成されます。

人材のスキルアップを支援する補助金・助成金

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、労働者の職業生活設計の全期間を通じて段階的かつ体系的な職業能力開発を効果的に促進するため、事業主等が雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。

○ 人材育成支援コース

職務に関連した10時間以上の訓練、OJTとOff-JTを組み合わせた訓練を実施する事業主に対して助成されます。

○ 人への投資促進コース

デジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自発的に行う訓練、定額制訓練(サブスクリプション型)等を実施する事業主に対して助成されます。

○ 事業展開等リスキリング支援コース

新規事業の立ち上げなどの事業展開等に伴い、新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練を実施する事業主に対して助成されます。

補助金・助成金の受給要件

補助金・助成金を受給するためには、制度ごとに定められた要件を満たす必要があります。

1. 雇用保険の適用事業所であること

ほぼすべての雇用関係助成金において、雇用保険の適用事業所であることが基本的な要件となっています。

2. 過去5年以内に不正受給がないこと

助成金制度の信頼性と公正性を確保するため、過去5年以内に雇用関係助成金の不正受給を行った事業主は、原則として支給対象外となります。

3. 労働関連法令を遵守していること

助成金の申請事業主は、労働基準法、労働安全衛生法、雇用機会均等法などの労働関係法令を遵守していることが求められます。

4. 審査に必要な書類を適切に作成・保管していること

助成金の申請には多数の書類が必要となり、これらの書類を適切に作成・保管していることが支給要件となります。

5. 労働局の審査に協力すること

助成金の申請後は、労働局による審査が実施されます。この審査に協力することも支給要件の一つとなっています。

補助金・助成金申請のステップ

1. 制度の確認と計画策定

まず、自社の状況に適した助成金制度を確認し、申請計画を策定します。厚生労働省の公式サイトで最新の制度情報を確認することが重要です。

2. 申請に必要な書類の準備

助成金申請には多数の書類が必要となるため、事前の準備が不可欠です。基本的な書類として、登記事項証明書、労働保険概算・確定保険料申告書の写し、雇用保険適用事業所設置届の写し、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿、就業規則などが挙げられます。

3. 申請書類の作成と提出

申請書類を正確に作成し、管轄の労働局またはハローワークに提出します。書類に不備があると申請が却下される可能性があるため、十分な確認が必要です。

4. 審査と支給決定

申請後は、労働局による審査が実施されます。審査に通過すると支給決定通知が送付され、その後助成金が支給されます。

5. 事後報告と監査対応

助成金の支給後も、事後報告や監査への対応が必要となる場合があります。適切な記録保管と報告体制を整備しておくことが重要です。

申請時の注意点

申請期限の厳守

助成金制度には申請期限が設定されており、期限を過ぎると申請できません。余裕を持った申請スケジュールを組むことが重要です。

書類の正確性

申請書類に虚偽の記載や不備があると、申請が却下されるだけでなく、不正受給として処罰される可能性があります。

専門家の活用

助成金申請の専門性と複雑性を考慮すると、社会保険労務士などの専門家への依頼を検討することが有効です。専門家への依頼により、申請書類の作成品質が向上し、書類不備による申請却下のリスクを大幅に軽減できます。

まとめ

採用補助金・助成金制度は、企業の人材確保と労働者の雇用安定を両立させる重要な政策ツールです。厚生労働省が運用する雇用関係助成金は、雇用の安定、職場環境の改善、仕事と家庭の両立支援、人材開発の促進など、多岐にわたる目的で設計されています。

人事責任者や経営者の皆様におかれては、採用補助金・助成金制度を戦略的な人材マネジメントツールとして位置づけ、積極的な活用を検討されることをお勧めします。

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