2025年-2026年人事トレンドワード解説|労働基準法改正と、フリーランス人事活用のススメ

最終更新日:2025年12月4日

2025年、日本企業の人事領域は、賃上げ、法改正対応、そして生成AIの実務定着といった大きな変化に直面しました。これらの動きは、単なる個別の事象ではなく、2026年以降の人事戦略のあり方を占う重要な布石です。本記事では、まず2025年の主要トレンドを5つのカテゴリで総括し、そこから予測される2026年の「近未来の潮流」を提示します。その上で、特に重要となる4つのキーワード「管理職の罰ゲーム化」、「『年収の壁』緩和」、「生成AIのインフラ化」、そして「労働基準法改正」を深く掘り下げ、人事・経営者の皆様が取るべき具体的なアクションを解説します。さらに、これらの複雑な課題を乗り越えるための新たな選択肢として、外部の専門家(フリーランス人事)を活用するという視点も提案します。

目次

2025年の総括と2026年への展望:5つのメガトレンド

2025年の人事トレンドは、2026年に向けてより大きな構造変化へと進化していきます。その核心は、以下の5つのメガトレンドに集約されます。

カテゴリ2025年(実績・トレンド)2026年(予測・近未来)
AI・Tech生成AIの「実務定着」(ツールとしての利用)AIの「エージェント化」(自律的な同僚としての利用)
組織構造人的資本経営の実践、アルムナイ採用「拡張型チーム」(正社員+副業・業務委託+AIの混合)
管理職処遇改善(賃上げ)によるケア役割そのものの「リバランス」(業務削減・再定義)
法・働き方育児・介護など「個」への柔軟対応「休息と健康」の厳格管理(インターバル規制、連勤禁止)
評価・賃金防衛的なベースアップ(一律賃上げ)「AIスキル」評価と、生活防衛のためのトータルリワード

2025年の振り返り:変化への「対応」に追われた一年

2025年は、企業が外部環境の変化に対する「対応」に追われた一年でした。歴史的な物価高騰を背景とした「防衛的ベア」や初任給の高騰、育児・介護休業法改正への実務対応、そしてカスタマーハラスメント対策の義務化など、守りの人事施策が中心となりました。テクノロジー面では、生成AIがようやく一部の業務で「ツール」として定着し始め、データドリブン人事の基盤が整い始めた段階です。人的資本経営も、開示義務への対応という側面が強く、まだ実質的な企業価値向上に結びついているとは言えない状況でした。

2026年の展望:変化を「活用」する戦略的人事へ

2026年は、これらの変化を単なる対応対象から、戦略的に「活用」するフェーズへと移行します。

AIは「ツール」から「エージェント」へ
生成AIは、指示を待つ道具から、自律的に業務を遂行する「同僚」へと進化します。AIエージェントが人間のメンバーと共にプロジェクトを進める「拡張型チーム」が現実のものとなり、組織構造そのものを変革します。

管理職は「ケア」から「リバランス」へ
2025年の処遇改善は、疲弊する管理職への応急処置に過ぎませんでした。2026年は、管理職の役割そのものを見直し、権限移譲や業務削減を進める「役割のリバランス」が本格的なテーマとなります。

働き方は「柔軟性」から「健康管理」へ
個人の事情に合わせた柔軟な働き方への対応から一歩進み、2026年の労働基準法改正は、企業に対して従業員の「休息と健康」を厳格に管理する責任を課します。

賃金は「一律」から「個別最適」へ
一律のベースアップから、「AIスキル」のような市場価値の高い能力を評価する報酬制度へとシフトします。また、物価高騰から生活を防衛するため、金銭的報酬以外の福利厚生なども含めた「トータルリワード」の重要性が増します。

この大きな潮流の変化を念頭に、4つの主要トレンドワードを詳しく見ていきましょう。

管理職の罰ゲーム化:役割の「リバランス」で魅力ある役職へ

2025年に処遇改善が進められたにもかかわらず、管理職が「罰ゲーム」と揶揄される状況は続いています。これは、問題の本質が金銭的なインセンティブだけでは解決しないことを示しており、2026年に向けては、前述のメガトレンドの通り、役割そのものの「リバランス」が不可欠です。

なぜ今「罰ゲーム化」が問題視されるのか?

管理職が「罰ゲーム」と化している背景には、3つの構造的要因が存在します。

1.マネジメントの難易度の急上昇
ハラスメントへの意識の高まり、部下の価値観の多様化、キャリアパスの個別化などにより、従来の一律的な指導は通用しなくなりました。個々のメンバーに寄り添った丁寧なコミュニケーションが求められる一方で、管理職自身のプレイング業務は減らず、負担は増大する一方です。

2.賃金の伸び悩み
近年の賃上げトレンドにより、若手や一般社員の給与は上昇傾向にありますが、管理職の報酬は伸び悩んでいます。その結果、昇進による金銭的メリットが薄れ、「責任だけが増えて割に合わない」という認識が広がっています。

3.働き方改革の副作用
時間外労働の上限規制やワークライフバランス重視の風潮は、部下に仕事を任せにくい状況を生み出しました。結果として、管理職が多くの業務を抱え込み、長時間労働を強いられるケースが後を絶ちません。

これらの要因が重なり、専門職やエキスパート職といったマネジメント以外のキャリアパスが整備されると、管理職は「割に合わない役割」と見なされる土壌が形成されるのは自然な流れだと言えるでしょう 1。

企業が取るべき4つの処方箋

この危機的状況を打開するため、パーソル総合研究所は4つのアプローチを提唱しています。これらはまさに、管理職の役割を「リバランス」するための具体的な手法です。

アプローチ名概要具体策
ワーク・シェアリング評価・育成・業務管理といったマネジメント業務を分散させ、複数人で担う1on1を専門部署が担当、チーム内での役割分担
キャリア・アプローチ優秀な人材を早期に選抜し、戦略的に投資・育成する次世代リーダー候補への重点的な研修、挑戦的な機会の提供
ネットワーク・アプローチ縦・横・外部のつながりを強化し、管理職の孤立を防ぐ管理職同士のコミュニティ形成、社外メンター制度の導入
フォロワーシップ・アプローチ部下側にも主体的に上司を支える意識とスキルを育むフォロワーシップ研修の実施、チーム目標達成への貢献を評価

これらの施策を組み合わせ、管理職という役割を再定義し、魅力あるキャリアパスとして再生させることが、企業の未来を左右します。しかし、こうした制度設計や研修の企画・実行には高度な専門性が求められ、内部リソースだけでは限界がある場合も少なくありません。ここで外部の専門家の視点を取り入れることが、改革を成功に導く鍵となります。

「年収の壁」緩和と賃金制度の未来

2025年の「年収の壁」対策は、労働力不足への対応という側面が強いものでした。しかし2026年に向けては、この動きを一歩進め、AI時代に即した新たな評価・賃金制度を構築する好機と捉えるべきです。

「年収の壁」の緩和とその影響

「年収の壁」とは、パートタイム労働者などが一定の年収を超えると、税金や社会保険料の負担が発生し、かえって手取りが減ってしまう「逆転現象」を引き起こす収入基準額のことです。2025年度の税制改正では、配偶者控除の適用要件が大きく見直され、「103万円の壁」が実質的に「160万円の壁」へと引き上げられました。これにより、これまで就業調整を行っていた層が、より長時間働くインセンティブを持つことが期待されます。

2026年を見据えた評価・賃金制度の再構築

2025年の一律的な「防衛的ベア」から、2026年はより戦略的な賃金制度への移行が求められます。具体的には、以下の2つの視点が重要です。

1.「AIスキル」の評価
生成AIを使いこなす能力は、今後あらゆる職種で生産性を左右する重要なスキルとなります。プロンプトエンジニアリング能力やAIを活用した業務改善実績などを評価項目に組み込み、報酬に反映させる仕組みが必要です。

2.トータルリワードの充実
物価高騰から従業員の生活を防衛するためには、基本給のアップだけでは限界があります。住宅手当、食事補助、自己啓発支援といった金銭以外の報酬や、柔軟な働き方の提供など、総合的な「トータルリワード」の観点から従業員満足度を高める戦略が求められます。

「年収の壁」緩和をきっかけに、多様な働き方を許容しつつ、AI時代に求められるスキルを正当に評価する、先進的な賃金・評価制度へのアップデートが急務です。

生成AIのインフラ化からエージェント化へ

2025年に「ツール」として実務に定着した生成AIは、2026年、自律的に思考・行動する「AIエージェント」へと進化し、組織と個人の関係を根底から変えます。

「ブーム」から「インフラ」へ変わる生成AI

総務省の調査によれば、生成AIサービスを「使ったことがある」と回答した個人の割合は、2023年度の9.1%から2024年度には26.7%へと約3倍に急増しました。2025年は、生成AIが一部の先進的な試みから、「社会的に不可欠な基盤」へと移行する転換点になると予測されています。

2026年の「拡張型チーム」と人事の役割

2026年には、正社員、副業・業務委託人材、そしてAIエージェントが協働する「拡張型チーム」が一般化します。このような組織では、人事部門の役割も大きく変わります。

活用フェーズ具体的な活用例
定型業務の自動化採用候補者への連絡メール作成、求人票のドラフト作成、社内規定に関する問い合わせ対応
分析・意思決定支援従業員データの分析による離職予兆の検知、面接評価の客観的分析、最適な人員配置のシミュレーション
個別化・高度化個々の従業員に最適化されたキャリアプランの提案、パーソナライズされた研修コンテンツの生成
AIエージェントの管理AIエージェントの採用・評価・配置、人間とAIの協業ルールの策定、AIの倫理的監督

人事部門は、もはや人間だけをマネジメントする組織ではありません。AIという新たな「知性」をいかに組織に組み込み、そのパフォーマンスを最大化するかという、全く新しいミッションを担うことになるのです。

人事が取り組むべき3つの挑戦

AIのエージェント化が進む中、人事部門には3つの挑戦が求められます 1。

1.仕事の再設計
AI活用を前提として、既存の業務プロセスや役割分担を根本から見直す。人間にしかできない、より創造的で付加価値の高い業務は何かを定義し直す必要がある。

2.スキル開発
全従業員がAIを効果的に使いこなすためのリテラシー教育(プロンプトエンジニアリングなど)を推進する。

3.倫理・ガバナンスの確立
AIの判断にバイアスが含まれるリスクや、個人情報の取り扱いなど、倫理的な課題に対応するための明確なガイドラインを策定し、運用する。

これらの戦略的な取り組みには、最新のテクノロジー知見と人事制度設計の経験を併せ持つ人材が不可欠です。しかし、そのような人材を内部で確保・育成するのは容易ではありません。

労働基準法改正:「休息と健康」の厳格管理時代へ

2025年が育児・介護といった「個」の事情への柔軟な対応に焦点が当たったのに対し、2026年の法改正は、全ての労働者の「休息と健康」を企業が厳格に管理する時代の幕開けを告げるものです。

約40年ぶりの大改正、その背景とは

今回の改正議論の背景には、過労死問題や、多様な働き方の普及に伴う現行法の限界があります。特に、IT業界などで問題視された長期間の連続勤務や、不十分な休息時間が、労働者の心身の健康を脅かすとして、規制強化の必要性が叫ばれていました。

主な改正点の解説

現在議論されている主な改正ポイントは以下の通りです。

連続勤務の上限規制
現行法では事実上可能だった14日以上の連続勤務が禁止される方向で検討されています。これにより、企業は従業員の休日を確実に確保するシフト管理が求められます。

法定休日の特定義務化
これまで就業規則で「週1日」などと定めるだけで特定義務のなかった法定休日を、あらかじめ具体的に特定することが義務付けられます。これにより、休日労働の管理がより厳格になります。

勤務間インターバル制度の義務化
現在は努力義務である、終業から次の始業までに一定の休息時間(原則11時間)を設ける「勤務間インターバル制度」が義務化される見込みです。これにより、従業員の十分な休息時間を確保する必要が出てきます。

有給休暇取得時の賃金算定ルールの見直し
有給休暇を取得した日の賃金計算方法について、より労働者に不利にならないような見直しが検討されています。

詳細についてはこちらの記事を参考にしてください。

企業に求められる準備と対応

これらの改正は、特にシフト制勤務が多い小売業、飲食業、宿泊業、医療・介護業界などに大きな影響を与える可能性があります。企業は以下の準備を早期に進める必要があります。

1.勤怠管理システムの確認・改修
新しい規制(連続勤務日数、インターバル時間)に対応できるかを確認し、必要に応じてシステムの改修や入れ替えを検討する。

2.就業規則の改定
法定休日の特定や勤務間インターバル制度の導入に伴い、就業規則の全面的な見直しと届出が必要となる。

3.人員配置と採用計画の見直し
規制強化によって必要な人員数が増加する可能性を見込み、採用計画や人員配置を再検討する。

4.管理職への教育
新しい労働時間管理のルールについて、現場の管理職に徹底した教育を行い、法令違反のリスクを防ぐ。

法改正の施行まで時間はありますが、就業規則の改定や勤怠システムの刷新といった対応は専門的な知識を要し、相応の準備期間が必要です。ここでも、専門家のサポートがスムーズな移行を後押しします。

フリーランス人事の活用:「すごい人事パートナー」

ここまで見てきたように、2026年に向けて人事部門が取り組むべき課題は、「高度化」と「複雑化」の一途をたどっています。

•管理職の役割再定義と研修制度の刷新

•AI時代に対応した新たな評価・賃金制度の設計

•AIエージェントの導入と倫理ガバナンスの確立

•複雑な法改正への確実な対応

これらの課題は、いずれも付け焼き刃の対応では乗り切れず、深い専門知識と実行力が求められます。しかし、全てを正社員で構成される内部の人事部門だけで完結させようとすると、リソース不足やスキルセットのミスマッチといった壁に直面しがちです。

そこで今、注目されているのが「すごい人事パートナー」、すなわち業務委託(フリーランス)のプロフェッショナル人事を戦略的に活用するアプローチです。

フリーランス人事活用のメリット

専門性の確保: 制度設計、労務、HRテック、組織開発など、特定の分野で高い専門性を持つ人材を、必要な期間だけ確保できる。

柔軟性とスピード: 正社員採用にかかる時間やコストをかけずに、プロジェクト単位で即戦力となる人材を迅速にチームに迎え入れられる。

客観的な視点: 社内のしがらみにとらわれない第三者の視点から、客観的で効果的な解決策の提案が期待できる。

例えば、「管理職の役割リバランス」という課題に対しては組織開発の専門家を、「法改正対応」には特定社会保険労務士の資格を持つ労務の専門家を、といった形で、課題に応じて最適な「すごい人事パートナー」と協働する。これが、変化の激しい時代を乗り切るための、新しい人事組織のあり方です。

まとめ

2025年の「対応」の年から、2026年は変化を「活用」する年へと、人事の役割は大きくシフトします。本記事で提示した5つのメガトレンド「AIのエージェント化」、「拡張型チーム」、「管理職のリバランス」、「休息と健康の厳格管理」、「AIスキル評価」は、その変化の核心です。

これらの変革を成功に導くためには、社内のリソースや知見に固執するのではなく、外部の専門知識を柔軟に取り入れる視点が不可欠です。「すごい人事パートナー」のようなプロフェッショナル人材との協働は、もはや特別な選択肢ではなく、これからの戦略的人事を実現するためのスタンダードとなりつつあります。

本記事が、その変化の波を乗りこなし、未来の企業価値を創造するための一助となれば幸いです。

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