IT業界向け|人事業務委託サービスの選び方

最終更新日:2025年7月9日

現代のIT業界は、DXの加速により急速な成長を遂げている一方で、深刻な人材不足という課題に直面しています。経済産業省の調査によると、2030年には最大で79万人のIT人材が不足すると予測されており、この状況はIT企業の事業成長に大きな影響を与えています。

特にスタートアップや急成長企業においては、限られたリソースの中で優秀な人材を確保し、組織を拡大していく必要があります。しかし、多くのIT企業では人事担当者の数が限られており、採用活動から人材育成、労務管理まで幅広い人事業務を少数の担当者で対応しなければならない状況が続いています。

このような背景から、外部の専門家による人事支援サービスの活用が注目を集めています。人事支援サービスを適切に選択し活用することで、IT企業は限られたリソースを最大限に活用し、競争力のある組織づくりを実現することができます。本記事では、IT企業が人事支援サービスを選ぶ際のポイントや成功事例を詳しく解説し、実践的な選び方をご紹介します。

目次

IT企業における人事支援サービスの必要性

IT企業特有の採用課題

IT企業特有の採用課題

IT企業が直面する採用課題は、他の業界とは大きく異なる特徴を持っています。まず最も顕著なのが、技術的専門性の高い人材への需要です。プログラミング言語、フレームワーク、クラウド技術、AI・機械学習など、急速に進歩する技術領域において、実務経験を持つエンジニアやデータサイエンティストの確保は極めて困難な状況となっています。

さらに、IT業界では競合他社との人材獲得競争が激化しています。GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)をはじめとする大手テック企業や、豊富な資金力を持つユニコーン企業が高額な報酬を提示することで、優秀な人材の争奪戦が繰り広げられています。このような環境下で、中小規模のIT企業やスタートアップが人材を確保するためには、従来の採用手法だけでは限界があります。

特にスタートアップや急成長企業では、人事専任の担当者を置く余裕がないケースが多く、創業者や経営陣が採用活動を兼務している場合も少なくありません。しかし、事業の成長とともに採用ニーズが急激に増加し、本来注力すべき事業戦略や製品開発に十分な時間を割けなくなるという課題が生じています。

また、IT企業では技術的な知見を持たない人事担当者が、エンジニアの技術力を適切に評価することが困難という問題もあります。履歴書や職務経歴書だけでは判断できない実際のスキルレベルや、チーム開発における協調性、新しい技術への適応力などを見極めるためには、専門的な知識と経験が必要です。

人事支援サービスが解決できる課題

IT企業|人事支援サービスが解決できる課題

人事支援サービスの活用により、これらのIT企業特有の課題を効果的に解決することができます。まず、採用プロセスの最適化という観点では、専門的な知識を持つプロフェッショナルが、企業の採用要件に基づいて最適な採用戦略を立案し、実行することができます。

ダイレクトリクルーティング、リファラル採用、技術コミュニティでの採用活動など、IT業界に特化した多様な採用手法を組み合わせることで、従来の求人媒体だけでは接触できない潜在的な候補者にアプローチすることが可能になります。

専門知識の補完という面では、IT業界での採用経験が豊富な人事プロフェッショナルが、技術的なスキル評価から企業文化とのマッチング、キャリア志向の把握まで、包括的な候補者評価を行うことができます。これにより、企業側は技術的な専門知識がなくても、適切な人材を見極めることができるようになります。

業務効率化とコスト削減の観点では、人事支援サービスの活用により、社内の人事担当者がより戦略的な業務に集中できるようになります。採用活動の実務部分をアウトソーシングすることで、人材要件の策定、採用戦略の立案、組織開発など、より付加価値の高い業務に時間とリソースを投入することができます。

また、正社員として人事担当者を新たに採用する場合と比較して、必要な期間だけサービスを利用できる柔軟性や、即戦力として活用できるメリットがあります。特に採用ニーズが季節的に変動する企業や、プロジェクトベースで人材が必要な企業にとっては、コスト効率の良い選択肢となります。

人事業務委託サービスの特徴

IT業界に強い人事業務委託サービスでできること

人事業務委託サービス

人事業務委託サービスは、採用活動だけでなく、人事業務全般を外部の専門家に委託するサービスです。給与計算、勤怠管理、社会保険手続き、人事制度設計、人材育成など、幅広い人事業務をカバーしています。

このサービスの最大の特徴は、対応可能な業務範囲の広さと柔軟性です。企業のニーズに応じて、特定の業務のみを委託することも、人事部門全体の機能を外部化することも可能です。IT企業では、急速な成長に伴って人事業務が複雑化することが多いため、段階的にサービスを拡張できる柔軟性は大きなメリットとなります。

専門性と柔軟性の両立という観点では、人事業務委託サービスは特に優れています。労働法規の改正への対応、人事制度の最新トレンドの導入、データ分析に基づく人事戦略の立案など、専門的な知識が必要な業務を、経験豊富なプロフェッショナルに任せることができます。

IT企業特有のニーズとしては、リモートワーク制度の設計、エンジニアのキャリアパス設計、技術者向けの評価制度構築などがあります。これらの領域では、IT業界での経験を持つ人事プロフェッショナルの知見が特に価値を発揮します。

人事業務委託サービスでは、採用活動においても包括的なサポートが提供されます。求人票の作成から候補者のスクリーニング、面接の調整、内定者フォローまで、採用プロセス全体を一貫してサポートします。特にIT企業では、技術的なスキル評価が重要になるため、エンジニア出身の人事プロフェッショナルが技術面接を実施したり、コーディングテストの設計・評価を行ったりするケースもあります。

また、GitHubやStack Overflow、技術系コミュニティなど、エンジニアが活動するプラットフォームでの採用活動や、技術カンファレンスでのネットワーキングを通じた人材発掘など、IT業界特有の採用チャネルを活用できる点も大きなメリットです。これにより、社内の人事担当者や経営陣が本来の業務に集中できるようになり、特にスタートアップでは限られた人的リソースを製品開発や事業戦略に集中させることで、競争力の向上につながります。

IT企業向け|人事業務委託サービスの選び方

自社の課題と目的の明確化

人事支援サービスを選択する前に、まず自社が抱える具体的な課題と、サービス導入によって達成したい目的を明確にすることが重要です。現状分析の重要性は、適切なサービス選択の基盤となるためです。

現状分析では、採用活動の効率性、人事業務の負荷、組織の成長段階、予算制約など、多角的な視点から自社の状況を評価する必要があります。例えば、「月に何件の応募があり、そのうち何人が面接に進み、最終的に何人が入社しているか」といった定量的なデータと、「採用活動にどれだけの時間を費やしているか」「どの工程で最も負荷がかかっているか」といった定性的な情報を整理します。

優先順位の設定方法については、緊急性と重要性の両方を考慮したマトリックスを活用することが効果的です。例えば、「即座に解決が必要な採用活動の効率化」と「中長期的な組織開発」では、アプローチ方法が大きく異なります。限られた予算とリソースの中で最大の効果を得るためには、まず最も緊急性が高く、かつ事業への影響が大きい課題から取り組むことが重要です。

また、成長段階に応じた課題の特定も重要です。創業期のスタートアップでは採用活動の効率化が最優先となることが多い一方、成長期の企業では組織体制の整備や人事制度の構築が重要になります。自社の成長段階を正確に把握し、それに応じた課題設定を行うことで、より効果的なサービス選択が可能になります。

サービス提供会社の評価ポイント

人事支援サービスを提供する会社を評価する際には、複数の重要なポイントを総合的に判断する必要があります。

IT業界への理解度は、最も重要な評価ポイントの一つです。IT業界特有の技術トレンド、エンジニアのキャリア志向、業界の給与水準、競合他社の動向などを深く理解している会社を選ぶことが重要です。具体的には、過去にIT企業での支援実績があるか、担当者がIT業界での経験を持っているか、最新の技術動向について理解しているかなどを確認します。

専門性と実績については、提供会社の過去の成功事例や、類似する規模・業界での支援経験を詳しく確認することが重要です。特に、自社と同様の課題を抱えていた企業に対して、どのような解決策を提供し、どのような成果を上げたかを具体的に聞くことで、その会社の実力を判断できます。

柔軟性と対応力は、IT業界の変化の速さを考慮すると特に重要な要素です。事業環境の変化に応じて採用要件が変更されたり、急に採用ニーズが増加したりする場合に、迅速かつ柔軟に対応できる体制があるかを確認します。また、企業の成長に合わせてサービス内容を拡張できるかどうかも重要なポイントです。

コストパフォーマンスについては、単純な料金の安さではなく、提供される価値に対する適正性を評価することが重要です。初期費用、月額費用、成功報酬など、料金体系を詳しく確認し、自社の予算と期待する成果に見合った投資かどうかを判断します。また、契約期間中の追加費用の発生可能性についても事前に確認しておくことが重要です。

契約形態と期間の検討

人事支援サービスの契約形態には、業務委託と正社員採用という大きく異なる選択肢があります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、自社の状況に応じた適切な選択が重要です。

業務委託の場合、必要な期間だけサービスを利用できる柔軟性があり、即戦力として活用できるメリットがあります。また、社会保険料や福利厚生費などの固定費を抑えることができ、コスト効率が良い場合が多いです。一方で、長期的な関係構築が困難な場合があり、企業文化の深い理解や、継続的な改善活動には限界がある可能性があります。

正社員採用の場合、長期的な視点での人事戦略構築が可能であり、企業文化への深い理解と継続的な改善が期待できます。しかし、採用プロセスに時間がかかり、固定費が増加するというデメリットがあります。

短期契約と長期契約の選択については、自社の課題の性質と緊急性を考慮して決定します。緊急性の高い採用課題がある場合は短期契約から始めて効果を確認し、その後長期契約に移行するという段階的なアプローチが効果的です。一方、組織開発や人事制度構築など、中長期的な取り組みが必要な場合は、最初から長期契約を検討することが適切です。

契約期間中の見直し条項や、成果に応じた契約延長・短縮の可能性についても事前に確認し、柔軟性を確保しておくことが重要です。

すごい人事が支援した成功事例から学ぶ導入のポイント

事例1: ソフトウェア開発企業の採用内製化成功事例

株式会社ソニックガーデン様は、「納期のない受託開発」という独自のビジネスモデルで事業を展開するソフトウェア開発企業です。同社では、「親方と弟子の関係でプログラマを育てていく徒弟制度」という独自の採用スタイルを重視しており、企業文化に適合する人材の採用が重要な課題となっていました。

◾️導入の背景と課題

ソニックガーデンが人事支援サービスの導入を検討した背景には、既存の採用手法の限界がありました。同社では従来、リファラル採用を中心とした採用活動を行っていましたが、「リファラル採用でリーチできる層へのアプローチはやり切った」という状況に直面していました。

新しい採用手法を取り入れたいという意向がある一方で、「一般的な手法も試したいがどれを選べばいいのか分からない」「新しい手法を取り入れたい一方で、これまでの採用方針も尊重してほしい」という課題を抱えていました。また、採用プロセスが属人的になっており、特定の人しか採用に携われない状況も問題となっていました。

◾️解決策と成果

ソニックガーデンでは、弊社の「すごい人事パートナー」を導入し、段階的な採用改善を実現しました。まず、ダイレクトリクルーティングの導入から着手し、検討開始から1ヶ月という短期間で施策を開始することができました。

プロ人事の経験値を活用することで、最初は良い数字が出なかった施策も、翌月にはテコ入れにより良い成果が出るようになり、「こうすれば弊社で結果が出せそうだね」という成功パターンを確立することができました。成功パターンが見えた段階で、社内メンバーに引き継いで内製化を実現しています。

さらに、ダイレクトリクルーティングの成功によりカジュアル面談の件数が増加したことを受けて、カジュアル面談の進め方についてもプロ人事からアドバイスを受けました。候補者目線での客観的な提案を得ることで、自己流になりがちなプロセスを改善することができました。

具体的な成果として以下が挙げられます。

✔︎ 検討開始から1ヶ月での施策開始という迅速な導入を実現

✔︎ ダイレクトリクルーティングという新たな採用手法の習得

✔︎ 採用プロセスの仕組み化による属人化の解消

✔︎ 年間スケジュールの策定による計画的な採用活動の実現

✔︎ 担当者の負荷軽減により、採用戦略により注力できる体制の構築

◾️ポイント

ソニックガーデンの事例から学べる重要なポイントは、段階的なアプローチの有効性です。いきなり大規模な変革を行うのではなく、まず一つの手法(ダイレクトリクルーティング)から始めて成功パターンを確立し、その後段階的に他の領域に展開していくアプローチが功を奏しています。

また、内製化を前提とした支援という点も重要です。外部サービスに依存し続けるのではなく、ノウハウを社内に蓄積して最終的には内製化を実現することで、持続可能な採用体制を構築しています。

事例2: 外資IT企業の承諾率2倍達成事例

Vistex Japan合同会社様は、SAPソリューションを提供する外資系IT企業として、日本市場での事業拡大を進めている企業です。同社では、高度な専門性を要求される人材の採用において、承諾率の向上という具体的な成果を実現しています。

◾️導入の背景と課題

Vistex Japanが人事支援サービスの導入を検討した背景には、深刻な人手不足がありました。日本での事業開始から5年目という時期に、受注はあるものの任せられる人材が不足しており、今後会社の核となる人材を採用する必要に迫られていました。

特に困難だったのは、業界経験やSAPの専門知識といった高い採用要件を満たす人材の確保でした。ITスキルやコンサルティング経験のある人材は引く手数多であり、大手の外資コンサルティング企業が採用競合となることも多く、莫大な採用予算をかける競合他社との差別化が課題となっていました。

さらに、グローバル本社からは「エージェントを使わず自社で採用しなさい」というプレッシャーもあり、採用活動に制限がかかる社内事情も抱えていました。

◾️解決策と成果

Vistex Japanでは、営業段階から提案型のアプローチを提供する「すごい人事パートナー」を選択しました。決め手となったのは、「タレントマネジメント以外の人事を全て任せられる方をお願いしたい」という漠然とした依頼に対して、きちんとスコープ整理から入り、要件だけでなくその背景まで理解した上で人事業務委託の候補者を提案してくれた点でした。

最終的に選んだ人事業務委託の担当者は、同じ外資系IT業界での採用経験や人材エージェントでの経験があり、候補者のキャリア志向に合わせて会社を訴求できる専門性を持っていました。

具体的な成果として以下が実現されました。

✔︎ 内定後のオファー承諾率が25%から50%へと倍増

✔︎ 離職率が半減

✔︎ 採用プロセスを安心して委託できることによる業務効率化

✔︎ オファー面談や入社後フォローが社内に良い影響を与え、マネージャー陣の人材ケアに対する意識変化

✔︎ 「20人の壁」を超える組織成長の実現

また、ダイレクトリクルーティングの強化においても成果を上げており、「興味を持ってもらう」最初のポイントを強化することで、選考への進行確率を向上させています。

◾️ポイント

Vistex Japanの事例から学べる重要なポイントは、専門性の高い人材による支援の価値です。同じ業界での経験を持つ担当者を選択することで、候補者の心理や業界の特性を深く理解した採用活動が可能になりました。

また、承諾率2倍という具体的な数値成果が示すように、適切な人事支援サービスの活用により、定量的に測定可能な改善を実現できることも重要なポイントです。

事例3: 金融×IT企業のリソース・知見課題同時解決事例

東京ハッシュ株式会社様は、アジア地域におけるフィンテックおよびデジタルアセットマネジメント分野で事業展開する企業の日本法人として、ブロックチェーン技術のソリューション、デジタルアセット市場のインフラ、ベンチャー投資の3つの事業を展開しています。

◾️導入の背景と課題

東京ハッシュが直面していた課題は、リソース不足と専門知識不足の両方でした。日本法人のグループ2社の管理部門業務を社員2名で担うという限られた体制の中で、「採用にもっと時間を掛けたいのにリソースが足りない」という状況に陥っていました。

さらに、採用の優先度が変わりやすく、都度状況に対応しきれないという業務の変動性も課題となっていました。ビジネス戦略上の変化により急に採用ポジションが増えることもあり、柔軟な対応が求められていました。

特に困難だったのは、専門性の高い業界ゆえに採用ターゲットへの知見が足りないという点でした。ブロックチェーンなどの技術的な話題に対応できる人材の確保や、カジュアル面談での技術的な質問への対応が課題となっていました。

◾️解決策と成果

東京ハッシュでは、複数のRPO会社と比較検討した結果、弊社の「すごい人事パートナー」を選択しました。決め手となったのは、一番外注できる業務の幅が広かったことです。母集団形成戦略から実行に加えて、カジュアル面談も含めて一貫して同じ担当者にお願いできる点が評価されました。

導入後は、エンジニア経験者による技術的な対応により、ブロックチェーンの専門的な話題にも対応できるようになりました。技術的なスキルの見極めまで実施し、その場での回答により候補者の安心感向上も実現しています。

具体的な成果として以下が実現されました。

✔︎ リソース不足の解消とノウハウ・スキル面での大幅な支援

✔︎ 状況に応じた細やかな柔軟性を実現

✔︎ カジュアル面談と1次面接を合体したフロー変更によりリードタイムを1週間短縮

✔︎ 採用難易度の高いポジションで前年1年かかったポジションを4ヶ月で採用成功

✔︎ 的を絞った採用媒体選定による母集団形成体制の増強

◾️ポイント

東京ハッシュの事例から学べる重要なポイントは、技術的専門性と業務の柔軟性を両立させることの価値です。エンジニア経験者による支援により、技術的な深い議論にも対応できる体制を構築しています。

また、採用スピードの大幅な改善(1年→4ヶ月)が示すように、適切な専門家による支援により、採用効率を劇的に向上させることが可能であることも重要なポイントです。

導入時の注意点とリスク管理

よくある失敗パターン

人事支援サービスの導入において、多くの企業が陥りがちな失敗パターンを理解しておくことは、成功確率を高めるために重要です。

目的の不明確さは、最も頻繁に見られる失敗要因の一つです。「とりあえず採用活動を外部に任せたい」「人事業務の負荷を軽減したい」といった漠然とした目的では、適切なサービス選択ができず、期待した成果を得ることができません。具体的には、「3ヶ月以内にエンジニア5名を採用する」「採用業務にかかる時間を50%削減する」「内定承諾率を30%向上させる」といった定量的な目標設定が必要です。

期待値の設定ミスも深刻な問題となります。人事支援サービスは万能ではなく、市場環境や企業の魅力度、予算制約などの要因により、達成可能な成果には限界があります。特にIT業界では人材不足が深刻であるため、短期間で大量の優秀な人材を確保することは現実的ではありません。サービス提供会社との事前の十分な相談により、現実的で達成可能な目標を設定することが重要です。

コミュニケーション不足は、サービス導入後の継続的な問題となりがちです。外部サービスに業務を委託した後、「任せっきり」になってしまい、定期的な進捗確認や戦略の見直しを怠ることで、期待した成果が得られないケースが多く見られます。また、社内の関係者への情報共有が不十分で、現場の協力が得られないという問題も発生します。

契約条件の曖昧さも重要な失敗要因です。業務範囲、成果指標、報告頻度、契約期間、料金体系などが曖昧なまま契約を締結すると、後々トラブルの原因となります。特に成果報酬型の契約では、何をもって「成果」とするかの定義が曖昧だと、認識の齟齬が生じる可能性があります。

リスク回避のための対策

これらの失敗パターンを回避するためには、計画的で段階的なアプローチが効果的です。

段階的な導入アプローチでは、まず小規模な範囲でサービスを試験導入し、効果を確認してから本格的な展開を行います。例えば、特定の職種の採用のみを委託して成果を確認し、その後他の職種や業務領域に拡張するという方法です。これにより、リスクを最小限に抑えながら、自社に最適なサービス活用方法を見つけることができます。

定期的な効果測定は、継続的な改善のために不可欠です。月次または四半期ごとに、設定したKPIに基づいて成果を評価し、必要に応じて戦略や手法の調整を行います。効果測定では、定量的な指標(応募数、面接実施数、内定数、承諾率など)だけでなく、定性的な評価(候補者の質、企業ブランドへの影響、社内満足度など)も含めて総合的に判断することが重要です。

契約条件の明確化では、業務範囲、責任分担、成果指標、報告体制、契約期間、料金体系、契約変更・終了条件などを詳細に定義します。特に重要なのは、期待する成果と、それを達成するための具体的な手法や期間を明確にすることです。また、市場環境の変化や企業の事業戦略変更に応じて、契約内容を柔軟に調整できる条項を含めることも重要です。

社内体制の整備も成功のための重要な要素です。人事支援サービスを活用する際には、社内の担当者を明確に定め、外部サービスとの窓口となる体制を構築します。また、経営陣、人事部門、現場マネージャーなど、関係者全員が導入の目的と期待する成果を共有し、協力体制を築くことが重要です。

リスク管理計画では、想定されるリスクとその対応策を事前に検討しておきます。例えば、担当者の変更、サービス品質の低下、契約期間中の事業環境変化などのリスクに対して、具体的な対応手順を定めておくことで、問題が発生した際に迅速に対処することができます。

人事支援サービス導入後の効果測定

KPIの設定方法

人事支援サービスの効果を適切に測定するためには、導入前に明確なKPIを設定することが重要です。KPIの設定では、定量的指標と定性的指標の両方をバランス良く組み合わせることで、包括的な評価が可能になります。

定量的指標の設定では、数値で明確に測定できる指標を中心に構成します。採用関連の主要な定量的指標には以下があります

◾️採用効率に関する指標

・応募数(月次・四半期)
・書類選考通過率
・面接実施数
・最終面接進出率
・内定数
・内定承諾率
・採用決定数

◾️採用スピードに関する指標

・応募から内定までの平均期間
・各選考段階での平均所要時間
・内定から入社までの期間

◾️コスト効率に関する指標

・一人当たり採用コスト
・採用活動にかかる総時間
・人事担当者の業務負荷軽減時間
・ROI(投資収益率)

定性的効果の評価では、数値では表現しにくいが重要な要素を評価します。

◾️候補者の質に関する評価

・採用した人材のスキルレベル
・企業文化とのマッチング度
・入社後のパフォーマンス評価
・早期離職率

◾️組織への影響に関する評価

・社内の採用に対する意識変化
・人事プロセスの改善度
・組織全体の生産性向上
・企業ブランドへの影響

KPI設定の際には、SMART原則(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性、Time-bound:期限設定)に基づいて、現実的で測定可能な目標を設定することが重要です。

継続的な改善のポイント

効果測定は一度実施すれば終わりではなく、継続的な改善サイクルを回すことで、より大きな成果を実現することができます。

定期的な見直しでは、設定したKPIに基づいて月次または四半期ごとに成果を評価し、必要に応じて戦略や手法の調整を行います。見直しの際には、単に数値の良し悪しを判断するだけでなく、その背景にある要因を分析することが重要です。

例えば、応募数は増加しているが内定承諾率が低下している場合、候補者の質やオファー条件、面接プロセスなどに問題がある可能性があります。このような分析により、具体的な改善策を立案することができます。

フィードバックの活用では、関係者からの意見や提案を積極的に収集し、改善に活かします。フィードバックの収集対象には以下が含まれます:

◾️社内関係者からのフィードバック

・人事担当者の業務負荷や満足度
・面接官からの候補者に関する評価
・経営陣からの戦略的な観点での評価
・新入社員からの採用プロセスに関する感想

◾️外部関係者からのフィードバック

・サービス提供会社からの改善提案
・候補者からの採用プロセスに関する評価
・業界動向や競合他社の採用活動に関する情報

データドリブンな改善では、収集したデータを詳細に分析し、客観的な根拠に基づいた改善策を実施します。例えば、特定の採用チャネルからの候補者の質が高い場合は、そのチャネルへの投資を増やし、効果の低いチャネルは見直しを行います。

ベンチマーキングでは、業界標準や競合他社の採用指標と比較することで、自社の位置づけを客観的に把握します。IT業界では、職種や企業規模によって採用指標が大きく異なるため、類似する企業との比較が特に重要です。

継続的な学習と適応では、市場環境の変化や新しい採用手法の登場に応じて、柔軟にアプローチを調整します。IT業界は変化が激しいため、定期的に最新のトレンドや手法を学習し、必要に応じて導入することが競争力の維持につながります。

効果測定と改善のサイクルを継続することで、人事支援サービスの価値を最大化し、企業の成長を支える強固な採用基盤を構築することができます。

まとめ

IT業界における人材不足が深刻化する中、人事支援サービスの戦略的な活用は、企業の競争力向上と持続的な成長を実現するための重要な手段となっています。本記事で紹介した3つの成功事例が示すように、適切なサービス選択と効果的な活用により、具体的で測定可能な成果を実現することが可能です。

今後のIT業界では、AI・機械学習、クラウド技術、サイバーセキュリティなど、新しい技術領域での専門人材の需要がさらに高まることが予想されます。このような環境変化に対応するためには、従来の採用手法だけでは限界があり、専門的な知見を持つ人事支援サービスの活用がますます重要になるでしょう。

人事支援サービスの導入を検討している企業は、まず自社の現状を正確に把握し、明確な目標設定を行うことから始めることをお勧めします。そして、複数のサービス提供会社と詳細な相談を行い、自社のニーズに最も適したパートナーを選択してください。適切な人事支援サービスの活用により、IT企業の成長を支える強固な人材基盤を構築し、競争力のある組織づくりを実現していきましょう。

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