
OJTとOFF-JTを組み合わせてZ世代の定着率を上げる
企業の持続的な成長において、人材の確保と育成は最も重要な経営課題の一つです。特に近年、Z世代と呼ばれる若手社員の採用と定着が多くの企業で課題となっています。厚生労働省の調査によれば、新卒入社3年以内の離職率は依然として高い水準にあり、特に中小企業においてはその傾向が顕著です。
人材育成の手法として、多くの日本企業が「OJTで育てる」と掲げています。しかし、OJTに偏った育成方法では、Z世代の若手社員の定着率向上に十分な効果を発揮できていないのが現状です。政府が発表した中小企業白書2024によれば、人材育成の取組を「増やした」企業では中核人材・業務人材の定着率が高い傾向にあり、特に社員の定着率が5割以上の企業では、「OJTのみ」よりも「OJT+OFF-JT」と回答した企業が多いという結果が出ています。

本稿では、OJTとOFF-JTの違いを明確にした上で、それぞれの特性を活かした組み合わせ方、そしてZ世代の特性を踏まえた効果的な人材育成の方法について解説します。人事担当者や経営者の方々が、若手社員の定着率向上に向けた具体的な施策を検討する際の一助となれば幸いです。
目次
- OJTとOFF-JTの違いとは
- 2. そもそも教えるとは?必要な3つの要素
- 現在の日本企業の問題点
- Z世代の特性と就労意識
- OJTとOff-JTを組み合わせて研修すると効果的
- Z世代の定着率を高めるための具体的施策
- OFF-JTで教育効果を高める研修内容
- OJTとOFFJTを組み合わせた成功事例
- まとめ
OJTとOFF-JTの違いとは

OJTの定義と特徴
OJTとはOn-the-Job Trainingの略で、文字通り「仕事をしながら学ぶ」トレーニング方法です。実際の業務を通じて、必要な知識やスキルを習得していく手法であり、日本企業で最も一般的に採用されている人材育成方法の一つです。
OJTの主な特徴として、以下の点が挙げられます。
1. 実務に即した知識・スキルの習得 OJTは座学とは異なり、実務にもとづいた知識を習得できるため、早い段階から即戦力となる人材育成が可能です。時間を費やして研修しても、学びを実務で活用できなければ意味がありません。その点、OJTは実務に即した内容をピンポイントで何度も反復できるので、試行錯誤を繰り返しながら早期に知識を習得できるメリットがあります。
2. 個別対応が可能 OJTではトレーナーと社員とのマンツーマン指導になるため、社員一人ひとりの進行状況やそれぞれの強みや弱みを把握しながら、トレーニングが可能です。個々のスキルや習得度合いに応じて柔軟に対応でき、状況によっては成長にあわせて計画を変更できるメリットがあります。新入社員のモチベーションを維持しながら教育を進められるシステムです。
3. コスト効率が良い OJTのトレーナーは基本的に上司や先輩社員が担うため、外部講師に委託するコストがかかりません。また、トレーニングは主に社内の実務を通しておこなわれるため、研修を実施するための会場手配も不要です。ゆえに、金銭的なコストや手間をかけずに人材育成を行いたい会社にとって負担が少ない点がメリットといえます。
一方で、OJTには以下のような課題もあります。
1. 論理的・体系的な指導の難しさ OJTは職場内での業務の実施と振り返りによる、経験学習的なトレーニングです。そのため、OFF-JTと比較すると、論理的・体系的な教育機会の提供が難しい傾向にあります。経験そのものだけでなく、経験を次に活かすプロセスも重視してトレーニングを進めることが重要です。
2. トレーナーによる指導の質のばらつき OJTがうまく機能するかはトレーナーの力量に影響を受けます。したがって、トレーナーのスキルによって、部下の習熟度や進捗度に差がでやすい点に注意しましょう。トレーナー教育やフォロー体制を組織全体で整備すること、企業での人材育成の視座の共有が重要です。
3. トレーナーの負担の大きさ OJTはトレーナーに負担がかかるため、教育に対する優先度が低い場合や時間的な余裕がない場合は、後回しにされ効果的な教育が行われません。すべてをトレーナー任せにせず、よりよい教育をするための環境整備や周囲の協力体制を整えましょう。
OFF-JTの定義と特徴
OFF-JTとはOff-the-Job Trainingの略で、通常業務から離れて行う研修を指します。外部セミナーへの参加や社内での集合研修などがこれにあたります。
OFF-JTの主な特徴として、以下の点が挙げられます。
1. 同時に複数の社員への教育が可能 OFF-JTは少数のトレーナーによる講義形式で実施されるケースが多いため、同時に複数の社員に対する研修ができます。通常業務と並行して社内でトレーニングを準備する時間がない場合や、社員がトレーニングのために時間や労力を割けない状況においては特に有用です。大人数による受講であっても、OFF-JTなら効率的に学習できます。
2. 学習内容の統一が可能 OFF-JTは学習内容にムラが生じる心配がなく、統一した知識を得ることが可能です。OJTはトレーナーにより力量が異なるため、トレーニングの質が担保されない懸念がありますが、OFF-JTはトレーナーが受講者全体に向けてトレーニングするため、受講者全員が均質な指導を受けられます。
3. 新たな視点の獲得 外部から講師を招く場合、社内業務では知り得なかった新しい視点やノウハウ、技術などの習得が可能です。OJTは実務に即した知識を重点的に学べますが、知識が限定的で応用性に欠ける可能性があります。社内の知見だけに頼らず、外部からの情報を受け入れる機会を得ることで、知識や技術がアップデートされる効果も期待できます。
OFF-JTにも以下のような課題があります。
1. 実践する機会の確保の必要性 知識をインプットできても、現場でうまく活かせるとは限りません。よって、OFF-JTでの学びを現場でアウトプットする機会を別途設ける必要があります。OFF-JTの研修中に実践の機会を設け、通常業務に差し障らない形で導入することも有効です。
2. 自社での活用の難しさ 外部講師はどうしても自社の業務に精通しているわけではないため、トレーニングの内容を活かしきれない可能性があります。業務と研修内容にギャップがある場合には、実務へと応用できるような会社独自の工夫が必要です。
3. コストがかかる OFF-JTは外部講師へのトレーニングの委託や会場の確保など、金銭的なコストがかかります。ただ、近年ではeラーニングやオンライン研修など、ITを活用した人材教育の開発が進んでいるため、コストを削減しながらの実施も可能です。
SDの定義と特徴
OJTやOFF-JT以外にSDと呼ばれる教育法があります。SDとは「Self-Development」の英語の頭文字をとった略称で、社内外のセミナーへの参加や、書籍による自主学習を指します。
SDは業務に関する専門性の向上やコミュニケーションスキルなど、社員自身のモチベーションを原動力に学習を進める点が特徴的です。基本的にSDはトレーナーをつけずに社員1人で実施します。近年ではeラーニングを用いたSDの手法が開発され、社員1人でも継続しやすくなりました。
多くの場合、「教える」立場になる人は業務に精通しているベテラン社員です。しかし、業務に精通していることと、その業務を体系的に理解していることは必ずしも一致しません。自分が無意識にやっていることを、意識的に言語化し、体系立てて説明できるようになるには、自分自身の業務の進め方を客観的に見つめ直す必要があります。
2. そもそも教えるとは?必要な3つの要素
OJTとOff-JTの違いを理解した上で、そもそも「教える」という行為に必要な要素について考えてみましょう。誰かに何かを教える場合、教える人には次の3つの要素が不可欠です。
1. 体系的な理解
教えるテーマについて全体像を把握し、論理的に整理されていなければなりません。例えば営業のやり方を教えるなら、アプローチから契約、アフターフォローまでの流れ、そして各段階で必要なスキルなど、全体像をしっかり把握している必要があります。
多くの場合、「教える」立場になる人は業務に精通しているベテラン社員です。しかし、業務に精通していることと、その業務を体系的に理解していることは必ずしも一致しません。自分が無意識にやっていることを、意識的に言語化し、体系立てて説明できるようになるには、自分自身の業務の進め方を客観的に見つめ直す必要があります。
2. 言語化能力
いくら自分ができても、それを言葉にできなければ教えられません。例えばラジオ体操をやる時、音楽に合わせて体は自然と動きます。しかし「右手を上げながら、左足を45度開き、同時に……」と言葉を使って説明するのは難しいものです。こうした言語化能力も教える側には求められます。
特に熟練した社員ほど、多くの業務を無意識のうちに「暗黙知」として処理しています。これを新人に伝えるためには、「形式知」に変換する必要があります。この変換プロセスが言語化能力であり、教える側に最も求められるスキルの一つです。
3. 教え方の技術
どんな順序で、どんな例を使い、どのように伝えれば相手が理解しやすいか。特に「順序」が最も重要な要素です。ある程度の基礎的な知識・スキルが身に付いてもいないのに、次のレベルのことを教えてはなりません。
実績のある上司でも、教え方が下手な人は多いものです。相手の理解度に合わせて説明の仕方を変える柔軟性も必要です。また、教え方の技術には「フィードバックの仕方」も含まれます。単に「ダメだ」と言うのではなく、何がどう良くなかったのか、どうすれば改善できるのかを具体的に伝えることが重要です。
現在の日本企業の問題点
教育担当者の経験不足
多くの企業では、新入社員の教育担当(OJTトレーナー)として2〜3年目の若手社員が任命されることが一般的です。しかし、彼ら自身もまだ十分な経験を積んでおらず、前述した「教える」ために必要な3つの要素(体系的理解、言語化能力、教え方の技術)が不足していることが多いのが現状です。
教育担当者自身が体系的な理解を持っていなければ、新入社員に対して断片的な知識しか提供できません。また、言語化能力が不足していれば、「見て覚えろ」「とりあえずやってみろ」といった指導になりがちです。さらに、教え方の技術がなければ、新入社員の理解度に合わせた指導ができず、結果として新入社員の成長を阻害してしまいます。
通常業務との両立の難しさ
OJTの最大の課題の一つは、教育担当者が通常業務をこなしながら指導を行わなければならない点です。特に繁忙期には教育が後回しになりがちで、新入社員は放置されることもあります。
ある新入社員は次のように悩みを打ち明けています。「入社してから3カ月、上司から『OJTで育てるから』と言われましたが、実際には何も教えてもらえません。たまに『誰に教えてもらった?』『そんなことも分からないのか?』とダメ出しされますが、あれがOJTなんでしょうか?」
このような状況では、新入社員は必要な知識やスキルを習得できないだけでなく、モチベーションも低下し、最終的には離職につながる可能性が高まります。
OJTという名のダメ出し文化
日本企業では「OJT」という言葉が多用されていますが、その本来の意味が誤解され、形骸化している企業も少なくありません。上司の最も大きな勘違いは「OJTさえやっていれば、部下は育つ」という思い込みです。
「とりあえずやってみて」「自分なりに考えてみて」というような言葉を上司から投げかけられた経験は、誰でもあるでしょう。何の基礎知識も技術も教えないまま現場で実践させようとするやり方は、今なお多くの職場にまん延しています。
このようなOJTという名のダメ出し文化は、特にZ世代の若手社員には受け入れられにくいものです。彼らは「まずはやってみろ」と言われても、「やり方を先に教えてほしい」と考える傾向があります。
Z世代の特性と就労意識
Z世代とは
Z世代とは、一般的に1990年代後半から2010年代前半に生まれた世代を指します。デジタルネイティブとも呼ばれ、生まれた時からインターネットやスマートフォンが身近にある環境で育ってきました。彼らは情報収集能力が高く、自分で調べる力に長けています。
Z世代の就労意識の特徴
Z世代の就労意識には、以下のような特徴があります。
1. 明確な指示と体系的な説明を求める Z世代は「とりあえずやってみて」という曖昧な指示よりも、明確な手順や方法を示してほしいと考える傾向があります。彼らはインターネットで検索すれば詳細な情報が得られる環境で育ってきたため、職場でも同様に具体的な情報提供を期待します。
2. 成長実感とフィードバックを重視 Z世代は自己成長や学びの機会を重視します。定期的なフィードバックを通じて自分の成長を実感したいと考えており、長期的なキャリアパスよりも短期的な成長実感を重視する傾向があります。
3. 目的や意義の理解を重視 「なぜそれをするのか」という目的や意義を理解したいと考えるのもZ世代の特徴です。単に「これをやれ」と言われるだけでは納得せず、その業務が組織や社会にどう貢献するのかを知りたいと思っています。
4. ワークライフバランスの重視 Z世代は前の世代と比べて、ワークライフバランスを重視する傾向があります。仕事だけでなく、プライベートの充実も大切にしたいと考えています。
5. フラットなコミュニケーションを好む Z世代は上下関係よりもフラットなコミュニケーションを好みます。「先輩だから」「上司だから」という理由だけで意見を押し付けられることを嫌う傾向があります。
Z世代が定着しない理由
これらのZ世代の特性を踏まえると、OJTに偏った従来型の人材育成では彼らの定着率が低くなる理由が見えてきます。
1.明確な指示や体系的な説明がないOJTでは、Z世代は不安や不満を感じやすい
2.定期的なフィードバックや成長実感が得られないと、モチベーションが低下する
3.業務の目的や意義が理解できないまま作業を続けることに疑問を感じる
4.長時間労働や過度な残業を伴うOJTはワークライフバランスを重視するZ世代には受け入れられにくい
5.上下関係を重視した指導方法に違和感を覚える
OJTとOff-JTを組み合わせて研修すると効果的
OJTとOff-JTの特性の違い
OJTとOFF-JTはそれぞれ異なる特性を持っています。OJTは実務に即した実践的なスキルを習得できる一方で、体系的な知識の習得には不向きです。一方、OFF-JTは体系的な知識を効率的に習得できますが、実践的なスキルの習得には限界があります。
これらの特性の違いを理解した上で、両者を効果的に組み合わせることで、より効果的な人材育成が可能になります。
効果的な組み合わせ方
1. 入社時にOFF-JTで基礎知識を習得 新入社員が入社した直後は、まずOFF-JTで業界知識、会社の歴史・理念、基本的なビジネスマナーなどの基礎知識を体系的に学ぶことが効果的です。この段階で全体像を把握することで、その後のOJTでの学びがスムーズになります。
2. 現場配属後にOJTで実践的スキルを習得 基礎知識を習得した後は、実際の現場に配属し、OJTを通じて実践的なスキルを習得します。この際、上司や先輩からのフィードバックを受けながら成長していくことが重要です。
3. 定期的なOFF-JTで知識のアップデート 現場での経験を積んだ後は、定期的にOFF-JTを実施し、最新の業界動向や専門知識を習得します。また、他部署の社員との交流を通じて視野を広げることも重要です。
4. SDによる自己啓発の支援 OJTとOFF-JTに加えて、社員の自己啓発(SD)を支援する仕組みも整えることで、より効果的な人材育成が可能になります。eラーニングなどのデジタルツールを活用することで、社員が自分のペースで学習を進められる環境を整えましょう。
近年では「研修(OFF-JT)で学んだことを現場で実践し、OJTトレーナーがフィードバックを行う(OJT)」など、異なる特徴をもつトレーニング同士を組み合わせた活用が注目されています。それぞれのシステムの弱みを補完し合うことで教育の効果を高められます。
制度面の整備ポイント
OJTとOFF-JTを効果的に組み合わせるためには、以下のような制度面の整備が必要です。
1. OJTとOFF-JTが連動する教育プログラムの設計 OJTとOFF-JTが互いに補完し合うような教育プログラムを設計しましょう。例えば、OFF-JTで学んだ内容をOJTで実践し、その結果をOFF-JTで振り返るというサイクルを作ることが効果的です。
2. OJTトレーナー研修の実施 OJTトレーナーに対しても、教え方のスキルや知識の体系化方法を習得させるための研修を実施しましょう。トレーナー自身が「教える」ために必要な3つの要素(体系的理解、言語化能力、教え方の技術)を身につけることが重要です。
3. SD制度の整備 社員が自発的に学べるようSD制度を整備しましょう。例えば、業務に関連する書籍の購入補助や、外部セミナーへの参加費用の補助などが考えられます。
4. 人材育成の優先度や重要度の共有 企業として人材育成の優先度や重要度を共有し、全社的な取り組みとして推進することが重要です。特に経営層からのメッセージは、社員の意識改革に大きな影響を与えます。
Z世代の定着率を高めるための具体的施策
教育・研修面での施策
1. 明確な育成計画の提示 Z世代は明確な指示や体系的な説明を求める傾向があるため、入社から一定期間の育成ロードマップを明示することが効果的です。習得すべきスキルや知識を具体的に提示し、いつまでに何ができるようになるかを明確にしましょう。
2. 体系的な教育プログラムの構築 OFF-JTで基礎知識を習得→OJTで実践→OFF-JTで振り返りという循環型の学習設計を行いましょう。また、段階的な難易度設定と適切なフィードバックを組み込むことで、Z世代の成長実感を高めることができます。
3. 教える側の育成 OJTトレーナー向けの研修プログラムを実施し、教え方のスキルや知識の体系化方法を習得させましょう。特に若手のOJTトレーナーには、「教える」ために必要な3つの要素(体系的理解、言語化能力、教え方の技術)を重点的に教育することが重要です。
4. デジタルツールの活用 Z世代はデジタルネイティブであるため、eラーニングやオンライン研修などのデジタルツールを積極的に活用しましょう。また、学習管理システムを導入することで、進捗確認と適切なサポートが可能になります。
コミュニケーション面での施策
1. 定期的なフィードバック機会の設定 Z世代は成長実感とフィードバックを重視するため、週次・月次での1on1ミーティングを実施しましょう。その際、具体的な成長ポイントと改善点を提示することが重要です。
2. メンター制度の導入 直属の上司とは別にメンターを設定し、キャリア相談や悩み相談ができる環境を整えましょう。特に入社1〜3年目は不安や悩みが多い時期であるため、気軽に相談できる相手がいることは重要です。
3. 成長実感を得られる仕組み スキル習得度の可視化や、小さな成功体験の積み重ねを重視する仕組みを作りましょう。例えば、スキルマップを作成し、習得したスキルを可視化することで、成長実感を高めることができます。
組織文化・環境面での施策
1. 学びを重視する組織文化の醸成 経営層からの人材育成の重要性発信や、学びの時間を確保する仕組み作りを行いましょう。例えば、週に半日は学習時間として確保するなどの取り組みが考えられます。
2. 柔軟な働き方の提供 Z世代はワークライフバランスを重視するため、リモートワークやフレックスタイム制などの柔軟な働き方を提供しましょう。また、長時間労働や過度な残業を是正することも重要です。
3. キャリアパスの明確化 複数のキャリアパスを提示し、スキル習得と昇進・昇格の関連性を明示しましょう。Z世代は自分のキャリアに対する関心が高いため、将来のビジョンを示すことが定着率向上につながります。
4. 目的・意義の共有 業務の意義や会社のビジョンを共有し、自分の仕事が組織にどう貢献しているかの理解を促進しましょう。Z世代は「なぜそれをするのか」という目的や意義を理解したいと考えるため、この点を明確にすることが重要です。
OFF-JTで教育効果を高める研修内容

効果的なOFF-JT研修の設計ポイント
OFF-JT研修を設計する際には、以下のポイントを押さえることが重要です。
1. 明確な学習目標の設定 研修の冒頭で「この研修で何を学ぶのか」「どんなスキルが身につくのか」を明確に伝えましょう。特にZ世代は目的や意義の理解を重視するため、この点を明確にすることで学習効果が高まります。
2. インプットとアウトプットのバランス 講義形式のインプットだけでなく、グループワークやディスカッションなどのアウトプットの機会も設けましょう。アウトプットを通じて理解度を確認し、定着を図ることが重要です。
3. 実務との関連性の明示 研修内容が実際の業務にどう活かせるのかを具体的に示しましょう。「この知識やスキルを使うと、こんな場面で役立つ」という例を示すことで、学習意欲が高まります。
4. 段階的な難易度設定 基礎から応用へと段階的に難易度を上げていくことで、学習者の理解度に合わせた研修が可能になります。特に新入社員向けの研修では、基礎的な内容から丁寧に教えることが重要です。
Z世代に効果的なOFF-JT研修の例
1. ビジネス基礎研修 ビジネスマナー、コミュニケーション、タイムマネジメントなどのビジネス基礎スキルを習得する研修です。特に新入社員にとっては、社会人としての基本的なスキルを身につける重要な機会となります。
2. 業界・業務知識研修 自社の業界や業務に関する基礎知識を体系的に学ぶ研修です。業界の歴史や動向、主要プレイヤー、ビジネスモデルなどを理解することで、自社の位置づけや戦略を理解することができます。
3. 専門スキル研修 営業、マーケティング、財務、人事など、各部門に必要な専門スキルを習得する研修です。実務に直結する内容を扱うため、OJTとの連携が特に重要になります。
4. リーダーシップ・マネジメント研修 将来のリーダー育成を目的とした研修です。リーダーシップの基礎理論、チームマネジメント、問題解決などのスキルを習得します。若手のうちからリーダーシップの素養を育むことで、将来の幹部候補を育成することができます。
5. デジタルスキル研修 データ分析、プログラミング、デジタルマーケティングなど、デジタル時代に必要なスキルを習得する研修です。Z世代はデジタルネイティブとはいえ、ビジネスにおけるデジタルスキルは別途習得する必要があります。
OJTとOFFJTを組み合わせた成功事例
事例1:IT企業A社の新入社員育成プログラム
IT企業A社では、新入社員の定着率向上を目指して、OJTとOff-JTを組み合わせた育成プログラムを導入しました。
入社後1ヶ月間:Off-JTによる基礎研修
•ビジネスマナー、コミュニケーション、IT基礎知識など
•グループワークを多く取り入れ、チームビルディングも兼ねる
2〜3ヶ月目:OJTとOff-JTの併用期間
•週4日は各部署でのOJT
•週1日はOFF-JTによる振り返りと追加学習
4〜6ヶ月目:本格的なOJT期間
•各部署での実務経験を積む
•月1回のOFF-JTで振り返りと課題解決
7〜12ヶ月目:プロジェクト参加と定期的なOFF-JT
•実際のプロジェクトにジュニアメンバーとして参加
•四半期に1回のOff-JTで専門知識のアップデート
成果
•新入社員の3年以内離職率が30%から10%に低下
•1年目終了時点でのスキル習得度が従来比で20%向上
•新入社員の満足度調査でも高評価を獲得
成功の要因
•OJTとOff-JTの明確な役割分担と連携
•定期的な振り返りによる成長実感の醸成
•段階的な難易度設定による適切な成長曲線の設計
事例2:製造業B社のOJTトレーナー制度改革
製造業B社では、OJTトレーナーの質のばらつきが課題となっていました。そこで、OJTトレーナー制度を改革し、Off-JTとの連携を強化しました。
改革の概要
OJTトレーナー育成のためのOff-JT研修の実施
•教え方の基本スキル、フィードバックの方法など
•業務の体系化・言語化の訓練
OJTトレーナー用マニュアルの整備
•教える内容の標準化
•チェックリストやフィードバックシートの提供
OJTトレーナー同士の定期的な情報交換会
•成功事例や課題の共有
•相互フィードバック
OJTとOff-JTの連携強化
•Off-JTで学んだ内容をOJTで実践する仕組み
•OJTでの課題をOff-JTで解決する仕組み
成果
•新入社員の技能習得期間が平均30%短縮
•OJTトレーナーの負担感が軽減
•部署間のスキル習得のばらつきが減少
成功の要因
•OJTトレーナー自身の教育を重視
•標準化されたツールの提供による質の均一化
•トレーナー同士の横のつながりによる相互学習
まとめ
本稿では、OJTとOFF-JTの違いを明確にした上で、それぞれの特性を活かした組み合わせ方、そしてZ世代の特性を踏まえた効果的な人材育成の方法について解説しました。
OJTは実務に即した実践的なスキルを習得できる一方で、体系的な知識の習得には不向きです。一方、OFF-JTは体系的な知識を効率的に習得できますが、実践的なスキルの習得には限界があります。これらの特性の違いを理解した上で、両者を効果的に組み合わせることで、より効果的な人材育成が可能になります。
特にZ世代の若手社員は、明確な指示や体系的な説明を求める傾向があり、成長実感とフィードバックを重視します。また、業務の目的や意義の理解を重視し、ワークライフバランスを大切にする傾向があります。これらの特性を踏まえた人材育成を行うことで、Z世代の定着率向上につながります。
人材育成は一朝一夕に成果が出るものではありませんが、継続的な取り組みによって確実に組織の競争力を高めることができます。本稿が、人事担当者や経営者の方々の人材育成戦略の一助となれば幸いです。

「すごい人事」情報局運営元:株式会社Crepe
Crepeでは、「人事が変われば、組織が変わる」というコンセプトのもと、⚫︎各種業界1300名の人事が在籍。工数・知見を補う「即戦力」レンタルプロ人事マッチングサービス
⚫︎1日2時間〜使えるマネージャークラスのレンタル採用チーム。オンライン採用代行RPOサービス
⚫︎人事にまつわる課題を解決へ導く、伴走型人事コンサルティングサービス
などのサービスを通して、人事課題を解決する支援を行っています。