【第二新卒採用】ポテンシャルを最大限に引き出すオンボーディングとキャリア開発支援の仕組みとは?
「新卒採用だけでは若手人材が充足できない」「即戦力となる中途採用は競争が激化している」こうした採用課題に直面する企業にとって、第二新卒採用は今、最も注目すべき採用チャネルの一つとなっています。マイナビの最新調査によれば、8割以上の企業が2025年以降に第二新卒人材を採用する予定であり、そのニーズは年々高まっています。
しかし、第二新卒採用には独特の課題も存在します。「すぐに辞めてしまうのではないか」という早期離職への不安、「即戦力を期待したのに思うように活躍してくれない」というパフォーマンスのギャップこれらは、多くの人事担当者が直面する共通の懸念事項です。
本記事では、こうした課題を乗り越え、第二新卒者が持つポテンシャルを最大限に引き出すための「オンボーディング」と「キャリア開発支援」の具体的な仕組みを、最新の調査データと実践事例を交えながら解説します。採用成功で終わりではなく、入社後の定着と成長、そして組織への持続的な貢献を実現するための戦略的アプローチを、人事・経営層の皆様にお伝えします。
目次
なぜ今、第二新卒採用が注目されるのか?
近年、多くの企業が採用戦略の柱の一つとして「第二新卒採用」に注目しています。新卒採用やキャリア豊富な中途採用とは異なるこの採用区分は、現代の労働市場において独自の価値を持つ存在として認識されつつあります。では、なぜ今、これほどまでに第二新卒採用が重要視されているのでしょうか。その背景には、企業の採用ニーズの変化と、若手人材に対する新たな期待があります。
第二新卒採用の市場トレンドと企業の期待
企業の採用活動が多様化する中、第二新卒採用のニーズは顕著に高まっています。株式会社マイナビが実施した「企業人材ニーズ調査2024年版」によると、2025年以降に第二新卒人材を採用する予定があると回答した企業は8割以上にのぼりました。また、同調査では、調査時点で既に52.6%の企業が第二新卒採用を導入していることも明らかになっています。

この背景には、企業が第二新卒に対して抱くポジティブなイメージがあります。同調査では、実に74.7%の企業が第二新卒人材に対して「よいイメージ」を持っていると回答しています。企業が第二新卒に寄せる期待は、主に以下の4つのポイントに集約されます。
| 期待するポイント | 具体的な内容 |
| 経験 | 社会人としての基礎的なビジネスマナーや、組織で働くことへの理解が身についている点。 |
| 即戦力 | 新卒社員と比較して、早期に職場環境に適応し、戦力として活躍してくれることへの期待。 |
| 若さ・柔軟性 | 特定の企業文化に染まりきっていないため、新しい環境への適応力や、今後の成長ポテンシャルが高い点。 |
| 意欲 | 一度社会に出て自らのキャリアを見つめ直した経験から、仕事に対する高いモチベーションや学習意欲を持っていること。 |
新卒採用だけでは充足しきれない若手人材の確保、そして即戦力となる中途採用の難易度が高まる中で、第二新卒は「社会人経験」と「ポテンシャル」を併せ持つ、企業にとって魅力的な採用ターゲットとなっているのです。
第二新卒採用における企業の課題と懸念
一方で、企業が第二新卒採用に慎重になる側面も存在します。最大の懸念点は、やはり早期離職のリスクです。前述のマイナビの調査でも、第二新卒に対して「よくないイメージ」を持つ理由として、「すぐに辞めてしまうのではないか」という定着への不安を挙げる声が多数見られました。
また、「経験」の質の見極めも重要な課題です。社会人経験があるとはいえ、その期間や内容は様々です。前職での経験が自社でどのように活かせるのか、あるいはアンラーニング(学びほぐし)が必要なのかを、選考段階で正確に判断することは容易ではありません。特に、前職の退職理由については、本人の成長意欲に繋がるポジティブなものか、あるいは環境への不適応といったネガティブなものなのかを慎重に見極める必要があります。
これらの期待と懸念が交錯する中で、企業が第二新卒採用を成功させるためには、採用選考の工夫だけでなく、入社後の育成・定着支援、すなわちオンボーディングとキャリア開発の仕組みを戦略的に構築することが不可欠と言えるでしょう。
第二新卒のポテンシャルを最大限に引き出すオンボーディング戦略
第二新卒者が持つポテンシャルを最大限に引き出し、早期離職を防ぎ、組織への貢献を促進するためには、戦略的なオンボーディングが不可欠です 。新卒とも中途とも異なる特性を持つ彼らに合わせたアプローチが求められます。
なぜ第二新卒に特化したオンボーディングが必要なのか?
中途入社社員、特に第二新卒のオンボーディングがうまくいかない背景には、いくつかの特有の課題が存在します。アルー株式会社の記事によると、中途入社社員の3年以内離職率は約3割に上り、その一因として入社後のオンボーディングの不備が挙げられています。
主な課題は以下の3点です。
1.期待と現実のギャップ
企業は「即戦力」を期待しますが、新しい環境や人間関係、企業文化への適応には時間が必要です。このギャップが、入社者のプレッシャーや孤立感につながります。
2.組織社会化の壁
企業独自の価値観や暗黙のルール、業務プロセスに適応する「組織社会化」は、新卒以上に難しい場合があります。前職のやり方が通用せず、混乱を招くことも少なくありません。
3.アンラーニングの必要性
前職で得た知識やスキルが、新しい環境では通用しない、あるいは阻害要因になることがあります。過去の成功体験を一旦手放し、新しいやり方を学ぶ「アンラーニング」が求められますが、これには本人と受け入れ側の双方に意識的な努力が必要です。
これらの課題を乗り越え、第二新卒者がスムーズに組織に溶け込み、能力を発揮するためには、彼らの状況に寄り添った丁寧なオンボーディング設計が不可欠なのです。
成功に導くオンボーディングの設計図
効果的なオンボーディングは、単なる研修プログラムの実施に留まりません。人事部、受け入れ現場、そして本人という3つの主体が連携し、入社後のフェーズごとに適切なサポートを提供していく体系的な仕組みが重要です。
| 主体 | 役割と取り組み |
| 人事部 | 全体設計と機会提供: オンボーディング全体のプロセスを設計し、第二新卒者と現場の双方に必要な研修や交流の機会を提供します。 |
| 受け入れ現場 | 実践的なサポートと環境づくり: OJTや1on1ミーティングを通じて、具体的な業務指導やフィードバックを行います。また、質問しやすく、挑戦を歓迎する心理的安全性の高い職場環境を整えます。 |
| 本人 | 主体的な学習と行動: 会社からの支援を受けつつも、自ら積極的に知識を吸収し、新しい環境に適応しようとするプロアクティブな姿勢が求められます。 |
この3者が一体となってオンボーディングに取り組むことで、第二新卒者は組織の一員としての自覚を持ち、ポジティブなサイクルで成長していくことができます。
オンボーディングを成功させるための具体的な施策
オンボーディングの施策は、入社後の期間に応じて段階的に実施することが効果的です。アルー株式会社の事例では、オンボーディング期間を大きく3つに分けて、それぞれのフェーズで目標を設定しています 5。
フェーズ1:入社後~3ヶ月(適応と関係構築の期間)
この時期の目標は、新しい環境への適応と、信頼できる人間関係の構築です。
メンター制度の導入
業務上の指導役であるOJT担当者とは別に、年齢の近い先輩社員をメンターとして配置します。業務の悩みだけでなく、キャリアパスや人間関係など、気軽に相談できる相手がいることは、心理的な大きな支えとなります。
企業文化・ビジョンの共有
経営層や他部署の社員との対話の機会を設け、企業が大切にしている価値観や目指す方向性を深く理解してもらいます。これにより、組織への帰属意識を高めます。
同期ネットワーキング
同じ時期に入社した第二新卒者同士の交流会などを定期的に開催し、横のつながりを構築します。悩みを共有し、互いに高め合える仲間がいることは、定着率の向上に大きく貢献します。
フェーズ2:4ヶ月~1年(実践と価値発揮の期間)
組織に慣れ始めたこの時期は、本格的に業務スキルを向上させ、自身の強みを発揮していくことが目標です。
経験学習サイクルの実践支援
OJTを通じて、具体的な業務経験(Do)→上司や先輩からのフィードバック(Check)→振り返りと改善(Action)というサイクルを回す支援を行います。これにより、実践的なスキルを着実に習得できます。
1on1ミーティングの定着
上司と部下が定期的に1対1で対話する時間を設けます。業務の進捗確認だけでなく、本人のキャリア志向やコンディションを把握し、個別の成長支援につなげます。
ストレッチアサインメント
本人の能力よりも少し難易度の高い業務や役割を任せることで、成長を促します。成功体験を積むことで、自信と仕事へのやりがいを高めます。
フェーズ3:2年目以降(キャリア形成と影響力発揮の期間)
入社から2年目以降は、組織の中核メンバーとして活躍し、後輩の育成にも関わる時期です。この段階では、将来を見据えたキャリア形成と、組織への影響力発揮が目標となります。
キャリアパスの明示
本人の志向や適性に応じて、専門性を深めるスペシャリスト路線か、マネジメントを担うゼネラリスト路線かなど、具体的なキャリアパスを示します。将来のビジョンが明確になることで、日々の業務への意味づけが深まります。
リーダーシップ機会の提供
プロジェクトリーダーや後輩のOJT担当など、小規模でもリーダーシップを発揮する機会を意図的に提供します。責任ある役割を経験することで、マネジメントスキルや組織視点を養います。
定期的なキャリア面談
人事部や上司との定期的なキャリア面談を通じて、本人の成長実感や今後の希望を丁寧にヒアリングします。会社が長期的な成長を支援する姿勢を示すことが、エンゲージメントの維持に繋がります。
受け入れ側の準備:OJT担当者と現場マネージャーの育成
オンボーディングの成否は、第二新卒者本人への施策だけではなく、受け入れる側の現場がどれだけ準備されているかにも大きく左右されます。特に、OJT担当者やメンター、直属上司の指導スキルやコミュニケーション能力が、第二新卒者の早期戦力化と定着に直結します。
受け入れ側が理解しておくべきポイントは以下の通りです。
第二新卒の特性を理解する
新卒とは異なり、一定の社会人経験を持つ一方で、自社のやり方には未習熟であることを認識します。「経験者だから大丈夫だろう」と放置するのではなく、丁寧なサポートが必要です。
心理的安全性を確保する
第二新卒者は、「前職を辞めた」という経緯から、周囲の目を気にしたり、失敗を恐れたりする傾向があります。気軽に質問でき、失敗を成長の機会と捉えられる雰囲気づくりが重要です。
具体的なフィードバックを行う
曖昧な表現ではなく、「どこが良かったか」「どこを改善すればより良くなるか」を具体的に伝えるスキルが求められます。これにより、第二新卒者は自分の成長を実感できます。
多くの企業では、第二新卒者の受け入れ前に、OJT担当者や現場マネージャー向けの研修を実施しています。研修では、コーチングスキル、フィードバックの仕方、1on1ミーティングの進め方などを学び、第二新卒者を効果的に育成するための土台を整えます。受け入れ側のスキル向上に投資することで、第二新卒者の定着率とパフォーマンスが大きく向上するのです。
実践事例:通信業O社の第二新卒オンボーディングプログラム
ここで、実際に第二新卒向けのオンボーディングを成功させた企業の事例を紹介します。通信業のO社では、社会人経験4年以下の第二新卒採用を開始するにあたり、体系的なオンボーディング施策を導入しました。
このプログラムの最大の特徴は、「自分の成長戦略を描く」というゴールを明確に設定した点にあります。単に業務スキルを教えるだけでなく、第二新卒者が自律的にキャリアを築いていける土台を作ることを重視したのです。
具体的には、以下の3つのポイントを軸に、3日間の集中研修プログラムを実施しました。
| ポイント | 内容 |
| 自社の構造的理解 | 企業のビジョン、事業構造、各部門の役割を体系的に学び、自分がどこに位置づけられ、何を期待されているかを理解する。 |
| 業務遂行スタイルの確認 | ロジカルシンキングや仕事の進め方など、自社で求められる業務の進め方を具体的に習得する。 |
| 経験学習サイクル | 経験から学び、成長し続けるための「振り返り」の習慣を身につけ、自律的な成長の基盤を作る。 |
研修では、講義だけでなく、現場での実践を想定した演習(ノック)を豊富に取り入れることで、知識の定着と実践力の向上を図りました。また、主体性やヒアリング力といった、ビジネスパーソンとして不可欠なスキルも幅広くカバーしています。
この取り組みの結果、第二新卒者は入社早期から自社のやり方を理解し、主体的に業務に取り組む姿勢を示すようになりました。受け入れ側の現場からも、「即戦力として期待できる」という評価が得られ、オンボーディングの成功事例として社内で共有されています。
第二新卒の未来を拓くキャリア開発支援
効果的なオンボーディングによって組織に定着した第二新卒者が、その後も継続的に成長し、企業に貢献し続けるためには、長期的な視点に立ったキャリア開発支援の仕組みが不可欠です 。特に、自身のキャリアについて主体的に考える意欲の高い第二新卒者にとって、成長機会の有無はエンゲージメントを大きく左右します。
なぜキャリア開発支援がエンゲージメントを高めるのか?
若手社員の定着と活躍において、「この会社で成長できる」という実感は極めて重要です。株式会社オールディファレントの調査によると、キャリア形成支援のある企業の若手社員は、8割超が「今の会社で働き続けたい」と回答しているのに対し、支援がないと感じる若手社員の勤続意向は半数以下に留まっています 5。
第二新卒者は、一度目のキャリア選択で何らかの課題を感じ、新たな成長の場を求めて転職を決意しています。だからこそ、企業が自身のキャリア形成に真摯に向き合い、具体的な支援策を提示することは、彼らのエンゲージメントとロイヤリティを飛躍的に高める要因となるのです。
キャリア開発支援は、単に社員の満足度を上げるだけでなく、以下のような好循環を生み出します。
モチベーション向上: 自身の成長が会社の成長に繋がることを実感し、仕事への意欲が高まる。
スキルアップ: 会社が提供する学習機会を活用し、より高度な業務に挑戦できるようになる。
主体性の発揮: 自らのキャリアを他人任せにせず、主体的に目標を設定し、行動するようになる。
組織への貢献: 新たなスキルや視点を活かし、組織全体の生産性向上やイノベーションに貢献する。
第二新卒向けキャリア開発支援の仕組み
第二新卒者のキャリア開発を効果的に支援するためには、画一的なプログラムではなく、個々の志向や成長段階に合わせた多角的なアプローチが求められます。
1. キャリアビジョンを描く機会の提供
まずは、本人が自身のキャリアについて深く考える機会を提供することが出発点です。
キャリアデザイン研修
入社1年後などの節目で、これまでの経験を棚卸し、自身の強みや価値観を再認識する研修を実施します。その上で、会社の中でどのようなキャリアを築いていきたいか、中長期的な視点でキャリアビジョンを描くことを支援します。
社内キャリアカウンセリング
専門のキャリアコンサルタントや経験豊富な人事担当者が、定期的にキャリアに関する相談に応じる窓口を設置します。第三者の客観的な視点からアドバイスを受けることで、新たな可能性に気づくことができます。
2. 多様なキャリアパスの提示と選択肢の提供
描いたキャリアビジョンを実現するための具体的な道筋を示すことも重要です。
社内公募制度・FA制度
希望する部署やポジションに自ら応募できる制度を設けることで、キャリアの選択肢を広げ、挑戦意欲を刺激します。
ジョブローテーション
本人の希望や適性に応じて、複数の部署を経験する機会を提供します。これにより、多角的な視点と幅広いスキルを習得し、自身のキャリアの可能性を広げることができます。
多様なロールモデルの紹介
社内で活躍する様々なキャリアを持つ先輩社員との座談会などを企画し、多様なキャリアパスが存在することを示します。これにより、固定観念にとらわれず、自分らしいキャリアを考えるきっかけになります。
3. 継続的な学習と挑戦の支援
キャリアの実現には、継続的な学習が不可欠です。企業は、社員が学び続けられる環境を整備する必要があります。
スキルアップ支援制度
資格取得支援や外部研修への参加費用補助、オンライン学習プラットフォームの提供など、自己啓発を金銭的・環境的にサポートします。
1on1でのキャリア対話
定期的な1on1ミーティングの中で、上司が部下のキャリア志向を理解し、日々の業務を通じて成長できるようフィードバックやアドバイスを行います。目先の業務だけでなく、長期的なキャリアの視点から対話することが重要です。
コーチングの活用
外部のプロコーチや社内の認定コーチとの対話を通じて、本人の内省を促し、目標達成に向けた主体的な行動を引き出します。HQ社が提供するような法人向けコーチングサービスを福利厚生として導入する企業も増えています 5。
これらの仕組みを組み合わせることで、第二新卒者は「この会社にいれば、自分のキャリアを主体的に築き、成長し続けられる」と実感し、組織への貢献意欲を一層高めていくでしょう。
まとめ
本記事では、第二新卒採用の最新トレンドから、彼らのポテンシャルを最大限に引き出すためのオンボーディングとキャリア開発支援の仕組みについて、具体的な施策を交えながら解説してきました。
第二新卒採用は、もはや単なる人材不足の解消策ではありません。社会人としての基礎を持ちながらも、特定の企業文化に染まりきっていない彼らは、まさに「金の卵」と言える存在です。彼らが持つ高い学習意欲と成長ポテンシャルに戦略的に投資することは、企業にとって短期的な戦力補強に留まらず、次世代のリーダー育成や組織文化の変革といった、長期的な価値創造に繋がります。
成功の鍵は、「採用」「オンボーディング」「キャリア開発」という3つのプロセスを一気通貫で設計し、連携させることにあります。

「すごい人事」情報局運営元:株式会社Crepe
Crepeでは、「人事が変われば、組織が変わる」というコンセプトのもと、⚫︎各種業界2,000名の人事が在籍。工数・知見を補う「即戦力」レンタルプロ人事マッチングサービス
⚫︎1日2時間〜使えるマネージャークラスのレンタル採用チーム。オンライン採用代行RPOサービス
⚫︎人事にまつわる課題を解決へ導く、伴走型人事コンサルティングサービス
などのサービスを通して、人事課題を解決する支援を行っています。