フォロワーシップとは?リーダーシップとの違いやサッカー日本代表に学ぶ実践方法

現代のビジネス環境は、変化が激しく予測困難な「VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)」の時代と呼ばれています。このような環境下では、一人の強力なリーダーがすべての意思決定を行い、トップダウンで指示を出す従来の組織モデルは限界を迎えつつあります。

そこで近年、人事担当者や経営者の間で急速に注目を集めているのが「フォロワーシップ(Followership)」という概念です。組織の成果の多くは、実はリーダーではなく、フォロワー(部下やメンバー)の行動によってもたらされていると言われています。

本記事では、フォロワーシップの基本概念やリーダーシップとの違い、ロバート・ケリーが提唱した「5つのフォロワータイプ」について解説します。さらに、サッカー日本代表の森保一監督のマネジメント事例を交えながら、自律的な組織を作るための具体的な実践方法をご紹介します。

目次

フォロワーシップとは? リーダーシップとの明確な違い

フォロワーシップとは? リーダーシップとの明確な違い

フォロワーシップの定義

フォロワーシップとは、組織の目標達成に向けて、リーダーを自律的に補佐し、チーム全体に主体的に貢献する影響力のことを指します。

アメリカのカーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授の調査によれば、「組織が達成した成果のうち、リーダーの貢献度は10〜20%に過ぎず、残りの80〜90%はフォロワーの貢献によるもの」とされています。つまり、優れたリーダーシップが存在しても、優れたフォロワーシップが伴わなければ、組織は本来の力を発揮できないのです。

フォロワーシップは単なる「従順さ」や「指示待ち」ではありません。リーダーの指示に対して自ら考え、必要であれば建設的な意見や提言を行い、チームの成功のために自律的に動くことが求められます。

リーダーシップとフォロワーシップの相互補完関係

リーダーシップとフォロワーシップは、対立する概念ではなく、「車の両輪」のような相互補完の関係にあります。

項目リーダーシップフォロワーシップ
主な役割ビジョンの提示、方向性の決定、最終責任の遂行実行のサポート、現場の課題解決、リーダーへの提言
視点組織全体を俯瞰し、未来を見据える現場の実態を把握し、具体的な行動に落とし込む
求められる行動決断力、影響力の行使、メンバーのモチベーション向上批判的思考、主体的な行動、リーダーの盲点の補完

リーダーが示す方向性に対して、フォロワーが現場の視点からフィードバックを行い、実行を支えることで、組織は初めて高いパフォーマンスを発揮します。全員がフォロワーシップを発揮する組織では、結果として「次世代のリーダー」が育ちやすくなるというメリットもあります。

サッカー日本代表・森保一監督に学ぶフォロワーシップの極意

フォロワーシップが機能している組織の好例として、サッカー日本代表を率いる森保一監督のマネジメント手法が挙げられます。森保監督は、従来の「絶対的な権力を持つ監督(トップダウン)」とは異なるアプローチで、選手たちの主体性(フォロワーシップ)を最大限に引き出しています。

サッカー日本代表・森保一監督に学ぶフォロワーシップの極意

ティーチングからコーチングへの転換

かつてのスポーツ界では、監督が戦術を細かく指示し、選手はそれに従う「ティーチング(教えること)」が主流でした。しかし、森保監督は選手に対して一方的に指示を出すのではなく、選手自らが考え、判断する「コーチング(引き出すこと)」を重視しています。

ビジネスにおいても同様です。上司が手取り足取り指示を出す環境では、部下は「指示されたことしかやらない(=消極的フォロワー)」になってしまいます。リーダーが「答え」を与えるのではなく、メンバー自身に「答え」を考えさせる余白を作ることが、フォロワーシップを育む第一歩です。

選手(フォロワー)の主体性を引き出す「問いかけ」

森保監督は、試合中やハーフタイムにおいて、選手たちに「今、ピッチの中で何が起きているか?」「どうすれば解決できると思うか?」と問いかけます。これにより、選手たちは自らの頭で状況を分析し、解決策を提案するようになります。

これはまさに、フォロワーシップにおける「批判的思考(クリティカルシンキング)」の体現です。経営者や管理職は、会議や1on1ミーティングの場で、メンバーに対して「あなたはどう思うか?」という問いを投げかけ、意見を引き出すファシリテーターとしての役割が求められます。

心理的安全性が生み出す「模範的フォロワー」

選手たちが監督に対して率直な意見を言えるのは、チーム内に高い「心理的安全性」が構築されているからです。「意見を言っても否定されない」「失敗しても次につながる」という安心感があるからこそ、選手はリスクを恐れずに主体的な行動をとることができます。

森保監督の姿勢は、「リーダーはすべてを知っている完璧な存在ではない」という前提に立っています。リーダーが自らの弱さや限界を認め、メンバーの力を借りる姿勢を見せることで、メンバーは「自分がチームを支えなければ」という強いフォロワーシップを発揮するのです。

ロバート・ケリーによる「フォロワーの5つのタイプ」

フォロワーシップ研究の第一人者であるロバート・ケリー教授は、フォロワーを「批判的思考(自ら考えて意見を持てるか)」と「積極的関与(主体的に行動できるか)」の2つの軸を用いて、以下の5つのタイプに分類しました。

ロバート・ケリーによる「フォロワーの5つのタイプ」

1. 模範的フォロワー(理想的な姿)

特徴:高い批判的思考と、高い積極的関与を併せ持つタイプ。

行動:リーダーの指示の意図を深く理解し、自ら考えて行動します。必要があればリーダーに対して建設的な批判や提案を行い、チームの目標達成に大きく貢献します。組織が最も育成すべき理想の姿です。

2. 孤立型フォロワー(批判的だが行動しない)

特徴:高い批判的思考を持つが、積極的関与が低いタイプ。

行動:問題点や改善点に気づく能力は高いものの、それを解決するための行動を起こしません。組織やリーダーに対する不満を抱えやすく、「評論家」になりがちです。彼らの意見を吸い上げ、行動に移すためのサポートが必要です。

3. 順応型フォロワー(イエスマン)

特徴:批判的思考は低いが、積極的関与が高いタイプ。

行動:リーダーの指示に対して疑問を持たず、素直に一生懸命取り組みます。一見すると扱いやすい部下ですが、リーダーが間違った方向へ進んだ際に止めることができず、組織にとって大きなリスクとなる場合があります。

4. 消極的フォロワー(指示待ち)

特徴:批判的思考も積極的関与も低いタイプ。

行動:自ら考えることをせず、指示された最低限のことしか行いません。モチベーションが低く、組織の生産性を低下させる要因となります。彼らの意識を変えるための働きかけが急務です。

5. 実務型フォロワー(バランス型)

特徴:批判的思考と積極的関与が中程度にあるタイプ。

行動:与えられた役割はそつなくこなしますが、それ以上のリスクを取ったり、現状を打破したりすることには消極的です。多くの組織で最も割合が多い層であり、彼らをいかに「模範的フォロワー」へと引き上げるかが重要です。

組織でフォロワーシップを育成・実践する4つのステップ

では、組織内で「模範的フォロワー」を増やし、フォロワーシップを機能させるためには、人事や経営者はどのような施策を打つべきでしょうか。具体的な4つのステップを解説します。

組織でフォロワーシップを育成・実践する4つのステップ

1. 心理的安全性の構築

フォロワーが自らの意見を自由に発信し、主体的に行動するためには、土台となる「心理的安全性」が不可欠です。リーダーは、メンバーの意見を頭ごなしに否定せず、まずは傾聴する姿勢を示しましょう。「どんな意見でも歓迎される」という文化を作ることが、すべての始まりです。

2. 目的とビジョンの共有

フォロワーシップは、向かうべき方向が明確であって初めて機能します。「何をやるか(What)」だけでなく、「なぜやるのか(Why)」という目的やビジョンをチーム全体で深く共有することが重要です。目的が腹落ちしていれば、メンバーは自律的に最適な手段を考えて行動できるようになります。

3. 権限委譲と自律的な行動の促進

マイクロマネジメント(過度な干渉)は、フォロワーシップの芽を摘んでしまいます。リーダーは、メンバーの能力を信じて権限を委譲し、ある程度の裁量を持たせることが大切です。失敗を許容し、それを学びの機会と捉える環境を提供することで、メンバーは自律的に行動する力を身につけます。

4. 評価制度への組み込みとフィードバック

フォロワーシップを発揮した行動を正当に評価する仕組みが必要です。個人の売上や成果だけでなく、「チームへの貢献」「リーダーへの建設的な提言」「他メンバーへのサポート」といったプロセスや行動(コンピテンシー)を評価基準に組み込みましょう。また、定期的な1on1ミーティングを通じて、フォロワーシップに関するフィードバックを行うことも効果的です。

フォロワーシップがもたらす組織への3つの効果

フォロワーシップが組織に根付くことで、企業は以下のような大きなメリットを得ることができます。

1. チームの生産性と意思決定スピードの向上

リーダー一人で全てを抱え込む必要がなくなり、現場の状況を最もよく知るメンバーが主体的に動くことで、業務のスピードと質が劇的に向上します。リーダーはより大局的な戦略立案に集中できるようになります。

2. イノベーションの創出

多様な視点を持つフォロワーが、リーダーに対して積極的にアイデアを提案することで、従来の枠組みにとらわれない新しい発想やイノベーションが生まれやすくなります。順応型(イエスマン)ばかりの組織では決して得られない効果です。

3. 次世代リーダーの育成

フォロワーシップを発揮し、組織全体を見渡しながら自律的に行動する経験は、リーダーシップを養う最高のトレーニングとなります。優れたフォロワーは、やがて優れたリーダーへと成長し、組織の持続的な発展を支える人材となります。

まとめ

「リーダーが引っ張り、フォロワーがそれに従う」という単純な構図は、もはや過去のものとなりました。組織の成果の8割以上はフォロワーの力にかかっており、リーダーシップとフォロワーシップは車の両輪として機能しなければなりません。

サッカー日本代表の森保監督のように、メンバーの主体性を引き出し、意見を言い合える心理的安全性を築くことが、これからのリーダーに求められる役割です。

人事担当者や経営者の皆様は、ぜひ本記事で紹介した「5つのフォロワータイプ」や育成のステップを参考に、自社のメンバー一人ひとりが主役となって活躍できる「自律型組織」の構築に取り組んでみてください。それが、予測困難な時代を勝ち抜くための最強の組織戦略となるはずです。

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