

リファラル採用(社員紹介制度)は、企業にとって「カルチャーフィットした優秀な人材」を獲得する有効な手段です。しかし、多くのスタンダード上場・プライム上場企業の人事責任者が、「社員がなかなか動いてくれない」「金銭的インセンティブなしでどう仕組み化すればいいのか」といった課題を抱えています。
筆者自身、長年にわたり人事コンサルタントとして企業の採用戦略に携わる中で、多くの企業がリファラル採用において一定の成果を上げられずにいる現状を見てきました。その一方で、戦略的にリファラル採用を推進し、成功を収めている企業もあります。本記事では、リファラル採用を「企業文化の一部」として根付かせ、社員が自然と紹介を行う仕組みを作るための具体的な施策を、実体験や成功事例を交えながら詳しく解説します。
【このシリーズを読んでほしい人!】
- 社内でリファラル採用の仕組み化を進めたい人事担当者
- 「社員が主体的に紹介する仕組みを作りたい」と考える経営者、人事責任者
- 本質的な採用活動を強化し、質の高い採用を実現したい企業
【このシリーズを読むことで得られるメリット】
- リファラル採用を社内文化として根付かせるための具体的施策が分かる
- リファラル採用を推進するための人事の選び方・育て方が理解できる
- 外部サービスの活用方法や成功事例を知り、自社に最適な戦略を立てられる
目次
- リファラル採用が成功しない理由と対策
- 金銭的インセンティブなしでリファラル採用を促進する方法
- リファラル成功率を高めるための継続的な仕組み
- リファラル採用を担う人事人材の選び方・育て方・外部サービスの活用
- まとめ
リファラル採用が成功しない理由と対策
(1)社員の心理的ハードル
多くの社員は、「紹介=推薦」と考え、リファラルに慎重になりがちです。筆者が過去に支援したある企業では、社員が紹介をする際に「この人が本当に会社に合うのか?」と悩み、結果的に紹介が滞ってしまうケースが頻発していました。
解決策:「紹介は推薦ではなく、つなぐだけでOK」と伝えることで心理的ハードルを下げる。
- 社員には「紹介は気軽に行ってよい」と伝え、選考の最終判断は採用チームが行う仕組みを作る。
- 紹介の段階では「適性を判断する必要はない」と周知する。
- 「カジュアル面談制度」を導入し、選考と切り離した面談を実施する。
(2)紹介の仕組みが複雑
専用フォームや申請フローが複雑で、社員が面倒に感じてしまうと、せっかく紹介したい気持ちがあっても途中で諦めてしまいます。筆者が支援した企業の中には、「紹介フォームが10項目以上あり、途中で入力をやめてしまう社員が多かった」というケースもありました。
解決策: Slack・Teamsでワンクリック紹介できる仕組みを用意する。
- 企業チャットツール(Slack・Teamsなど)にリファラル専用ボットを導入し、社員が簡単に紹介できる環境を整える。
- 「紹介したい人の名前」と「その人の簡単なプロフィール」を入力するだけで応募が完了するようにする。
- 短縮化したフォームを活用し、社員が手間なく紹介できるよう最適化する。
(3)リファラルの成功事例が社内で可視化されていない
社員が紹介してもその後どうなったのかが分からないと、モチベーションが下がってしまいます。筆者の経験では、紹介者へのフィードバックが不十分な企業では、リファラルが一度きりの行動になりやすい傾向がありました。
解決策: 紹介者への定期フィードバックと社内表彰を制度化する。
- 紹介者には「選考の進捗」や「その後の状況」を定期的に共有する。
- 成功事例を社内ニュースレターやミーティングで発表し、リファラル文化を醸成する。
- 紹介者へ感謝の意を伝える仕組みを作り、「紹介してよかった」と思える体験を提供する。
金銭的インセンティブなしでリファラル採用を促進する方法
(1)リファラルが「誇れる行動」になる環境を作る
多くの企業では、社員にリファラルを促す際に「紹介してください」と単にお願いするだけで終わってしまいます。しかし、それでは社員のモチベーションは高まりません。紹介をすること自体が「会社への貢献」として誇れるものであり、企業文化の一部として根付くことが重要です。
事例:大手メーカーA社 では、リファラルで入社した社員の「活躍ストーリー」を社内報で共有。紹介者が「会社の成長に貢献した」と実感できる環境を作ることで、紹介数が前年比150%に向上しました。
実践策:
- 紹介者に「社内リクルーター」「リファラルアンバサダー」称号を付与
- 一定の紹介数を達成した社員に、社内での「リファラルチャンピオン」的な役割を持たせ、本人の評価にも反映。
- 成功事例を社内で共有し、紹介の重要性を浸透させる
- 社員が紹介した候補者が入社し、活躍している様子を社内ニュースレターや全社会議で発信。
- 社員が「会社の魅力」を自分の言葉で伝えられるよう、簡単なトレーニングを実施
- 企業のビジョンや成長戦略を社員が理解し、自然と紹介しやすくする環境を作る。
(2)紹介しやすい導線を設計する
リファラル採用を仕組み化するためには、社員が「手間なく、自然に」紹介できる仕組みを整えることが不可欠です。筆者が支援した企業の多くで、社員の紹介プロセスが煩雑であるがゆえにリファラルが伸び悩んでいるケースを見てきました。
事例:IT企業B社 では、リファラル専用のSlackボットを導入し、社員が「この人どう?」と入力するだけで候補者情報がリクルーターに送信される仕組みを導入。その結果、紹介の総数が半年で2倍に増加しました。
実践策:
- Slack・Teamsでワンクリック紹介できるフォームを設置
- 「候補者の名前と簡単なプロフィールを入力するだけで完了」するフローを用意。
- カジュアル面談制度を導入し、「まずは話すだけOK」の仕組みに
- リファラル候補者が気軽に参加できるオンラインミーティングを月1回実施。
- 社員が友人に簡単に送れる「紹介用コンテンツ」を作成
- 企業紹介ページ、社員インタビュー動画などを整備し、ワンクリックで共有可能に。
リファラル成功率を高めるための継続的な仕組み
リファラル採用は一度仕組みを作っただけでは継続しません。長期的な成功のためには、定期的なフォローと改善が必要です。
紹介後のフォロー体制を整える
紹介者がモチベーションを維持するためには、リファラル後のフィードバックが欠かせません。紹介した社員が「どうなったのか分からない」と感じると、次の紹介に繋がりにくくなります。
- 紹介者には選考の進捗をリアルタイムでフィードバックする。
- 採用された場合は、紹介者に直接感謝のメッセージを伝え、社内表彰を行う。
- 社員が「自分の紹介が会社に貢献している」と実感できる環境を作る。
事例:IT企業B社では、Slackを活用してリファラルのステータスを可視化するシステムを導入し、紹介者のエンゲージメントが向上。結果として、社員が継続的にリファラルに関与するようになった。
リファラル候補者リストを作成する
社員が紹介を思い出しやすいよう、「元同僚・前職の上司・学生時代の友人」などカテゴリ別リストを作成すると効果的です。
- 人事チームが定期的に「紹介しやすい職種・スキルセット」について社員に情報提供。
- 「リファラル対象リスト」を作成し、社員が候補者を思い出しやすくする。
- 過去にリファラルが成功した職種やスキルセットを共有し、紹介のハードルを下げる。
採用チームがリファラルを「巻き取る」体制を作る
リファラル採用を組織全体で支えるためには、人事だけでなく全社的な協力が必要です。
- 「どんな人を紹介すべきか?」を定期的に社内発信し、紹介の精度を高める。
- 社員が「気軽に相談できる」窓口を設置し、紹介前の不安を解消する。
- 採用チームが積極的に社員とコミュニケーションを取り、紹介を促進する。
事例:大手メーカーC社では、リファラル専用のカジュアル相談会を定期的に開催。社員が候補者を気軽に相談できる場を設けたことで、紹介のハードルが下がり、紹介数が増加。
リファラル採用を担う人事人材の選び方・育て方・外部サービスの活用
リファラル採用を成功させるためには、それを推進できる適切な人事人材の選定と育成が不可欠です。ここでは、適任者の選び方、育て方、そして外部サービスの活用方法について解説します。
(1)リファラル採用を担える人事人材の選び方
リファラル採用は単なる採用業務ではなく、「社内の信頼関係を活かした採用活動」です。そのため、担当者には以下のようなスキルと適性が求められます。

適性要件
- 社内ネットワークを広く持ち、コミュニケーション力が高い
- 部署横断的な動きができ、社員と自然に関わることができる人材が最適。
- 採用ブランディングや社内文化の理解が深い
- 社員が紹介したくなるような「企業の魅力」を伝えられる力がある。
- データ分析やPDCAを回せる
- リファラルのデータを分析し、改善策を講じるスキルが求められる。
推奨する人材の例
- 社内広報担当者が兼務(社員と日常的に接点があるため)
- 採用担当者+社内エバンジェリストの組み合わせ
- 「リファラル採用推進リーダー」を社内で新設
(2)リファラル採用を推進できる人事の育成方法
リファラル採用の推進には、単に採用ノウハウを持つだけでなく、「社員を巻き込むスキル」が必要です。具体的には以下の育成施策が有効です。
育成方法
- 社内エバンジェリスト育成プログラム
- 社内でリファラルを促進するメンバーに、採用・ブランディング・コミュニケーションのトレーニングを実施。
- 他社事例共有とベストプラクティスの学習
- 定期的に他社の成功事例を研究し、社内に適用する方法を考える。
- 社員との1on1を通じた紹介促進
- すごい人事コンサルティングが提供する「社外1on1」を活用し、社員の意識を高める。
(3)外部サービスの活用方法
自社だけでリファラル採用を推進することが難しい場合は、外部サービスを活用することでスムーズに制度を構築できます。
外部サービスの活用ポイント
- リファラル採用支援ツールの導入
- Slack連携や紹介しやすいプラットフォームを活用して、社員の負担を軽減。
- 採用コンサルティングサービスの利用
- すごい人事コンサルティングでは、リファラル採用の企画支援を提供。
- リファラル採用専門の研修やワークショップを活用
- リファラル成功企業のベストプラクティスを学べる場を設ける。
導入事例
- A社(製造業):Slack連携のリファラルシステムを導入し、紹介数が前年比180%増加
- B社(IT企業):採用コンサルを活用し、3ヶ月でリファラル入社率を30%向上
- C社(IT企業):社外1on1を通じて、リファラル候補の掘り起こしを強化
まとめ
リファラル採用を成功させるカギ
✔︎ 紹介しやすい環境を整備する(簡単なフォーム、カジュアル面談の仕組み)
✔︎ リファラルの成功体験を可視化し、紹介を「誇れる行動」にする
✔︎ リファラル活動を評価制度やイベントに組み込み、社内の文化に根付かせる
✔︎ 紹介後のフォローを徹底し、社員のモチベーションを維持する
✔︎ リファラル採用を担える人事人材を選び、育成し、外部サービスを適切に活用する
リファラル採用を成功させるには、「社員が楽しく、自然に紹介できる環境」を作ることが鍵です。本記事の施策を参考に、貴社に最適なリファラルの仕組みを設計してみてください!
「すごい人事」情報局運営元:株式会社Crepe
Crepeでは、「人事が変われば、組織が変わる」というコンセプトのもと、⚫︎各種業界1300名の人事が在籍。工数・知見を補う「即戦力」レンタルプロ人事マッチングサービス
⚫︎1日2時間〜使えるマネージャークラスのレンタル採用チーム。オンライン採用代行RPOサービス
⚫︎人事にまつわる課題を解決へ導く、伴走型人事コンサルティングサービス
などのサービスを通して、人事課題を解決する支援を行っています。