医療業界向け|RPOサービスの選び方

最終更新日:2025年7月10日

医療業界は今、かつてない人材不足の危機に直面しています。少子高齢化の進行により医療需要が急激に増加する一方で、医師や看護師をはじめとする医療従事者の確保は年々困難になっています。厚生労働省の調査によると、日本の臨床医師数は人口1,000人当たり2.4人と、OECD35ヶ国中28位という低い水準にあり、G7諸国の中では最下位となっています。

このような状況下で、多くの医療機関が採用活動に苦戦しています。「応募者が集まらない」「採用活動に時間も人手も足りない」「優秀なスタッフの定着率を上げたい」といった悩みを抱える病院やクリニックは少なくありません。特に中小規模の医療機関では、専任の採用担当者を置くことが難しく、院長や事務長が本来の業務と並行して採用活動を行わざるを得ない状況が続いています。

こうした課題を解決する有効な手段として注目されているのが、RPO(採用代行)サービスです。RPOサービスは、採用活動の一部または全部を専門業者に委託することで、効率的かつ効果的な人材確保を実現するサービスです。医療業界に特化したRPOサービスも数多く登場しており、業界特有の課題に対応した専門的なサポートを提供しています。

本記事では、医療業界が直面する採用課題を詳しく分析し、RPOサービスの基本概念から選び方のポイント、成功事例まで、医療機関の採用担当者が知っておくべき情報を包括的に解説します。限られたリソースの中で最適な人材を確保し、質の高い医療サービスを継続的に提供するために、ぜひ参考にしてください。

目次

医療業界が直面する採用課題

深刻化する人材不足の現状

医療業界の人材不足は、国際的に見ても深刻な状況にあります。OECD(経済協力開発機構)の調査データによると、日本の人口1,000人当たりの臨床医師数は2.4人で、調査対象35ヶ国中28位という結果となっています。これは、ドイツの4.3人、フランスの3.2人、イギリスの2.8人と比較しても明らかに少ない数値です。

看護師についても同様の傾向が見られます。100病床当たりの看護師数を国際比較すると、イギリスが200人、アメリカが141人、イタリアが136人であるのに対し、日本はわずか38人という状況です。この数値は、日本の医療現場がいかに少ない人員で運営されているかを如実に示しています。

さらに深刻なのは、将来的な人材不足の予測です。パーソル総合研究所が発表した「労働市場の未来推計2030」によると、2030年時点で医療・福祉業界では約187万人の人材不足が生じると予測されています。これは現在の人材不足がさらに拡大することを意味しており、早急な対策が求められています。

地域格差も大きな問題となっています。都市部に医療従事者が集中する一方で、地方の医療機関では深刻な人材不足に陥っているケースが多く見られます。また、診療科による偏在も顕著で、産科や小児科、救急科などの特定の診療科では特に人材確保が困難な状況が続いています。

看護職員の高い離職率とその要因

仕事を辞めたいと思う看護職員の割合

医療業界では、人材不足と並んで高い離職率も深刻な問題となっています。公益社団法人日本看護協会の「2019年病院看護実態調査」によると、正規雇用看護職員の離職率は10.7%と横ばいで推移していますが、既卒採用者の離職率は17.7%と依然として高い水準にあります。

日本医療労働組合連合会が実施した看護職員の労働実態調査では、さらに衝撃的な結果が明らかになっています。調査対象者の74.9%、つまり約4人に3人が「仕事を辞めたい」と回答しているのです。この数値は、医療現場で働く多くの職員が強いストレスや不満を抱えながら業務に従事していることを示しています。

離職を考える理由として最も多く挙げられたのは「人手不足で仕事がきつい」で57.1%、次に「賃金が安い」が46.3%、「休暇がとれない」が36.6%となっています。これらの要因は相互に関連しており、人手不足が業務過多を招き、それが労働環境の悪化や賃金水準の相対的な低下感につながるという悪循環を形成しています。

特に注目すべきは、人手不足による業務過多が最大の離職要因となっていることです。一人当たりの業務量が増加することで、職員の身体的・精神的負担が増大し、最終的には離職という選択に至ってしまうケースが多いのです。この状況は、残された職員の負担をさらに増加させ、連鎖的な離職を引き起こす可能性もあります。

採用活動における具体的な困りごと

医療機関が採用活動で直面する課題は多岐にわたります。まず最も基本的な問題として、応募者数の絶対的な不足が挙げられます。求人を出しても応募が集まらない、または応募があっても求める条件に合致する候補者が見つからないという状況が慢性化しています。

選考プロセスの非効率性も大きな課題です。多くの医療機関では、書面上は良さそうに見える候補者でも、実際に面接してみると期待していた人物像と大きく異なるケースが頻発しています。これにより、面接回数が増加し、採用活動が長期化してしまう傾向があります。実際にすごい人事が支援した医療機関では、面接だけで1ヶ月程度の期間を要することもあったと報告されています。

採用担当者の不在や経験不足も深刻な問題です。特に中小規模のクリニックや病院では、専任の人事担当者を配置することが困難で、院長や事務長が本来の業務と並行して採用活動を行わざるを得ない状況が一般的です。しかし、医療の専門家である彼らが必ずしも採用のプロフェッショナルであるとは限らず、効果的な採用戦略の立案や実行に苦戦するケースが多く見られます。

求人媒体の選定や求人票の作成についても、多くの医療機関が課題を抱えています。どの媒体を使えば効果的に候補者にリーチできるのか、どのような内容で求人票を作成すれば応募者の関心を引けるのかといった専門的な知識やノウハウが不足しているのが現状です。

さらに、新設ポジションの場合には、そもそもどのような人材を求めるべきかという人材要件の定義自体が曖昧になりがちです。組織の成長に伴って新たに必要となる役職や職種について、具体的なスキルや経験、人物像を明確に定義することは容易ではありません。この曖昧さが採用活動の効率性を大きく損なう要因となっています。

RPOサービスとは何か

採用代行(RPO)とは?

RPOサービスの基本概念

RPOサービスとは、企業の採用活動の一部または全部を外部の専門業者に委託するサービスです。もともとはアメリカで発展したサービス形態で、近年日本でも急速に普及が進んでいます。単なる人材紹介とは異なり、採用プロセス全体を包括的にサポートすることが特徴です。

従来の人材紹介サービスは、主に候補者の紹介に特化しており、採用が決定した時点でサービスが完了します。一方、RPOサービスは採用戦略の立案から始まり、求人票の作成、媒体選定、応募者対応、選考プロセスの管理、さらには入社後の定着支援まで、採用に関わる幅広い業務を継続的にサポートします。

RPOサービスの最大の特徴は、クライアント企業の採用チームの一員として機能することです。外部のサービス提供者でありながら、企業の内部事情や組織文化を深く理解し、その企業に最適な採用戦略を立案・実行します。これにより、単発的な人材紹介では実現できない、継続的で戦略的な採用活動が可能になります。

医療業界特化型のRPOサービスでは、医療従事者の採用に関する専門的な知識と経験を持つプロフェッショナルが、業界特有の課題に対応したサポートを提供します。医師や看護師などの有資格者の採用プロセス、医療機関特有の労働環境や勤務体系への理解、医療業界の人材市場動向の把握など、一般的なRPOサービスでは対応が困難な専門領域をカバーしています。

医療業界におけるRPOサービスの価値

医療業界におけるRPOサービスの価値は、業界特有の複雑性と専門性に対応できることにあります。医療従事者の採用は、一般的な職種の採用とは大きく異なる特徴を持っています。まず、有資格者が中心となるため、候補者の母集団が限定的です。また、医療機関の種類(病院、クリニック、介護施設など)や診療科によって求められるスキルや経験が大きく異なります。

医療業界に特化したRPOサービスでは、これらの特殊性を深く理解したプロフェッショナルが、効果的な採用戦略を立案します。例えば、特定の診療科の医師を採用する場合、その診療科の人材市場動向、競合他院の採用状況、候補者が重視する条件などを総合的に分析し、最適なアプローチを提案します。

また、医療業界では候補者の転職動機や価値観が他の業界と異なることが多いため、それに応じたコミュニケーション戦略が必要です。医療従事者の多くは、単純な給与条件だけでなく、医療の質、患者への貢献、専門性の向上、ワークライフバランスなどを重視する傾向があります。医療業界特化型のRPOサービスでは、こうした候補者の価値観を理解した上で、適切なアプローチを行います。

さらに、医療機関の採用活動には法的な制約や業界特有の慣習も存在します。医師の応召義務、看護師の夜勤体制、医療法による人員配置基準など、採用計画を立てる際に考慮すべき要素は多岐にわたります。専門的なRPOサービスでは、これらの制約を十分に理解した上で、実現可能で効果的な採用戦略を提案します。

継続的なパートナーシップも医療業界におけるRPOサービスの重要な価値の一つです。医療機関の組織は常に変化しており、新しい診療科の開設、病床数の変更、新規事業の立ち上げなど、様々な変化に応じて人材ニーズも変動します。長期的なパートナーシップを築くことで、こうした変化に迅速かつ柔軟に対応し、継続的な組織強化を支援することが可能になります。

医療業界向けRPOサービスの選び方

サービス選定の基本ポイント

医療業界向けRPOサービスを選定する際の最も重要なポイントは、医療業界での実績と専門性です。一般的なRPOサービスとは異なり、医療業界特有の課題や制約を理解し、適切に対応できる能力が求められます。サービス提供会社の過去の実績を詳しく確認し、自院と同規模・同業種での成功事例があるかどうかを検証することが重要です。

対応可能な職種の範囲も重要な選定基準です。医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、医療事務など、医療機関には多様な職種が存在します。自院で採用予定の職種について、十分な経験と実績を持つサービス提供会社を選ぶことが成功の鍵となります。また、将来的に採用が必要になる可能性のある職種についても対応可能かどうかを確認しておくことが望ましいでしょう。

サービス範囲の確認も欠かせません。RPOサービスといっても、提供される内容は会社によって大きく異なります。採用戦略の立案のみを行う会社もあれば、実際の応募者対応や面接設定まで行う会社もあります。自院の現状と課題を踏まえ、どの範囲のサポートが必要かを明確にした上で、それに対応できるサービスを選定することが重要です。

地域性への対応も考慮すべき要素です。医療機関の多くは地域密着型の事業を展開しており、地域の人材市場や競合状況を理解したサポートが必要です。全国展開している大手サービスと地域特化型のサービスのどちらが自院に適しているかを慎重に検討する必要があります。

料金体系の比較検討

RPOサービスの料金体系は大きく分けて、成果報酬型、月額固定制、混合型の3つに分類されます。それぞれにメリットとデメリットがあるため、自院の状況に応じて最適な料金体系を選択することが重要です。

成果報酬型
採用が成功した場合のみ費用が発生する仕組みです。初期費用やランニングコストを抑えることができるため、予算に制約がある医療機関にとって魅力的な選択肢です。また、サービス提供会社にとっても採用成功が直接的な収益につながるため、高いモチベーションでサポートを受けることができます。

一方で、成果報酬型にはいくつかの注意点もあります。採用単価が比較的高く設定されることが多く、大量採用を行う場合には総コストが高額になる可能性があります。また、短期的な採用成功を重視するあまり、長期的な定着性や組織適合性が軽視される可能性もあります。

月額固定制
毎月一定の料金を支払うことで、継続的なサポートを受けられる仕組みです。採用活動の成果に関わらず一定の費用が発生するため、予算計画を立てやすいというメリットがあります。また、採用成功の有無に関わらず継続的なサポートを受けられるため、長期的な採用戦略の構築や組織強化に適しています。

月額固定制の場合、サービス提供会社は採用成功だけでなく、クライアントとの長期的な関係構築を重視する傾向があります。そのため、単発的な採用支援だけでなく、組織の成長に合わせた継続的な人事戦略の提案や、採用プロセスの改善提案なども期待できます。

混合型
基本的な月額料金に加えて、採用成功時に成果報酬を支払う仕組みです。固定制と成果報酬制の両方のメリットを享受できる一方で、総コストは最も高くなる可能性があります。しかし、継続的なサポートと成果に対するインセンティブの両方を確保できるため、バランスの取れた料金体系と言えるでしょう。

コストパフォーマンスを評価する際は、単純な料金の安さだけでなく、採用成功率、定着率、採用期間の短縮効果なども総合的に考慮することが重要です。安価なサービスを選んでも、採用に時間がかかったり、早期離職が多発したりすれば、結果的に高いコストを支払うことになりかねません。

サポート体制の評価

RPOサービスの品質を左右する重要な要素の一つが、サポート体制です。専任担当者の配置状況は、サービスの継続性と品質を判断する重要な指標です。担当者が頻繁に変更されるようなサービスでは、自院の事情や採用方針の理解が浅くなり、効果的なサポートを期待することが困難になります。

対応スピードとコミュニケーションの質も重要な評価ポイントです。医療業界では、優秀な候補者は複数の医療機関から引く手あまたの状況にあることが多く、迅速な対応が採用成功の鍵を握ります。応募者からの問い合わせに対する返答の速さ、面接日程の調整の柔軟性、急な変更への対応力などを事前に確認しておくことが重要です。

アフターフォローの充実度も見逃せないポイントです。採用活動は候補者の入社で終わりではありません。新入職員の早期定着を支援するためのフォローアップ、定期的な満足度調査、離職防止のための施策提案など、入社後のサポートまで含めて提供しているサービスを選ぶことで、長期的な組織強化を実現できます。

実績と成功事例の確認

サービス提供会社の実績と成功事例の確認は、選定プロセスにおいて最も重要なステップの一つです。採用成功率は最も基本的な指標ですが、単純な数値だけでなく、その背景にある要因も詳しく確認することが重要です。どのような職種で、どの程度の期間で、どのような条件の候補者を採用できているのかを具体的に把握することで、自院のニーズとの適合性を判断できます。

定着率も重要な評価指標です。採用に成功しても、短期間で離職してしまっては意味がありません。入社後6ヶ月、1年、3年といった期間での定着率を確認し、長期的な組織強化に貢献できるサービスかどうかを評価することが重要です。

具体的な成功事例の内容も詳しく確認しましょう。どのような課題を抱えた医療機関が、どのようなアプローチで課題を解決し、どのような成果を得られたのかを具体的に把握することで、自院での活用イメージを明確にできます。また、成功事例だけでなく、困難だった事例やその対処方法についても聞くことで、サービス提供会社の対応力や誠実性を評価することができます。

成功事例から学ぶRPOサービス活用法

医療×IT企業の幹部候補採用成功事例

成長率130%を誇る株式会社SSFホールディングス様の事例では、RPOサービスの効果的な活用方法を示す優れた成功例です。この企業は「医療に係わる100の新事業と100人の社長を輩出する」という壮大なビジョンを掲げており、第二創業期における急速な組織拡大を目指していました。

同社が直面していた主な課題は、幹部候補となる優秀な人材の採用でした。新設ポジションが多く、従来の採用手法では適切な候補者を見つけることが困難な状況にありました。特に、書面上は良さそうに見える候補者でも、実際に面接してみると期待していた人物像と大きく異なるケースが頻発し、面接だけで1ヶ月程度の期間を要することもありました。

また、事業の成長に伴って組織構造が頻繁に変化するため、当初想定していた採用方針を柔軟に見直す必要がありました。例えば、最初はCMOやディレクターなど職種別に募集していましたが、新設ポジションのため社内でも明確な職務定義が確立できず、試行錯誤を重ねることになりました。

このような状況を受けて、同社は「すごい人事採用おまかせパック」と「すごい人事パートナー」というRPOサービス+即戦力プロ人事人材の導入をしました。これらのサービスは、戦略立案から実務執行まで包括的なサポートを提供する点が特徴でした。

成功要因の分析

この事例における成功要因を詳しく分析すると、5の重要なポイントがあります。

第一の成功要因|採用戦略の根本的な見直し
RPOサービスの支援により、職種を細かく区切った従来のアプローチから、事業部のリーダー・マネージャー候補として幅広く募集をかける方針に転換しました。この変更により、職種よりもカルチャーマッチを重視した採用が可能になり、組織の成長に柔軟に対応できる人材の確保に成功しました。

第二の成功要因|PDCAサイクルの高速化
RPOサービスの専門チームが、採用ターゲットの選定、媒体選定から求人票作成、スカウト運用まで、一連の施策をPDCAサイクルを回しながら継続的に改善していきました。この結果、徐々に成果が上がり、コンスタントに有効応募が得られる状態を実現できました。

第三の成功要因|密なコミュニケーションと迅速な軌道修正
社内の変化が多い中で、RPOサービスの担当者と密にコミュニケーションを取りながら、変化に合わせてどんどん軌道修正していくことができました。採用の市況感やトレンドに基づくヒントを継続的に提供してもらうことで、効果的な採用戦略を維持できました。

第四の成功要因|採用実務の改善
面接でのノウハウや候補者に対して見るべきポイントのアドバイスを受けることで、次の面接から即座に実践することができました。この結果、面接の回数が大幅に減少し、有意義な面接に工数を絞ることができるようになりました。

第五の成功要因|採用資産の蓄積
改善プロセスでのアウトプットが適切に記録・整理されることで、後から採用過程を見直すことができ、将来の人事部構築に向けた貴重な資産を蓄積することができました。

他の医療機関への応用ポイント

この成功事例から得られる知見は、他の医療機関でも応用可能な重要なポイントを含んでいます。

規模別の活用方法について考えると、大規模病院では組織の複雑性に対応した戦略的なアプローチが重要です。複数の診療科や部門を抱える大規模病院では、それぞれの特性に応じた採用戦略を立案し、全体最適を図る必要があります。一方、中小規模のクリニックでは、限られたリソースの中で最大の効果を得るため、重点的な職種に絞った集中的なサポートが効果的です。

職種別の注意点も重要です。

医師の採用では、専門性や経験年数、研究実績などが重視される傾向があります。
看護師の採用では、勤務体系への適応性や患者対応スキルが重要な要素となります。
医療事務や技術職では、資格の有無や実務経験が主要な選考基準となります。

それぞれの職種の特性を理解した上で、適切なアプローチを選択することが重要です。

段階的な導入アプローチも成功の鍵となります。いきなり全ての採用活動をRPOサービスに委託するのではなく、まずは特定の職種や部門から始めて、効果を確認しながら段階的に範囲を拡大していく方法が推奨されます。これにより、組織内での理解と協力を得やすくなり、スムーズな導入が可能になります。

また、RPOサービスの活用は単なる採用代行ではなく、組織の人事機能強化の機会として捉えることが重要です。外部の専門知識を活用しながら、内部の人事担当者のスキル向上を図り、将来的には自立した採用活動ができる体制を構築することを目指すべきです。

RPOサービス導入の進め方

導入前の準備

RPOサービスの導入を成功させるためには、事前の準備が極めて重要です。まず最初に行うべきは、現状の採用課題の詳細な整理です。単に「人が足りない」という漠然とした認識ではなく、どの職種で何人不足しているのか、なぜ採用がうまくいかないのか、現在の採用プロセスのどこに問題があるのかを具体的に分析することが必要です。

過去の採用実績を振り返り、応募者数、面接実施数、内定者数、入職者数、定着率などの数値を整理しましょう。また、採用にかかった期間、使用した求人媒体、かかった費用なども詳しく記録します。これらのデータは、RPOサービス提供会社との相談時に現状を正確に伝えるための重要な資料となります。

目標設定と成功指標の定義も欠かせません。RPOサービスを導入することで何を達成したいのかを明確にし、それを測定可能な指標として設定します。例えば、「3ヶ月以内に看護師3名を採用する」「採用期間を現在の平均6ヶ月から3ヶ月に短縮する」「1年後の定着率を80%以上にする」といった具体的な目標を設定します。

予算と期間の設定も重要な準備項目です。RPOサービスにかけられる予算の上限を明確にし、期待する成果が得られるまでの期間を設定します。また、予算には直接的なサービス料金だけでなく、内部の人件費や機会損失なども含めて総合的に検討することが重要です。

組織内での合意形成も忘れてはいけません。RPOサービスの導入は、採用プロセスの大きな変更を伴います。院長、事務長、現場の責任者など、関係者全員が導入の必要性と期待効果を理解し、協力体制を築くことが成功の前提条件となります。

サービス選定プロセス

効果的なサービス選定を行うためには、複数のサービス提供会社に相談し、提案を受けることが重要です。最低でも3社以上から提案を受け、比較検討することを推奨します。各社に対しては、同じ条件で相談を行い、公平な比較ができるようにします。

提案依頼時には、自院の基本情報、現在の採用課題、目標、予算、期間などを詳しく伝えます。また、特に重視するポイント(例:採用スピード、定着率、コストパフォーマンスなど)も明確に伝えることで、より具体的で有用な提案を受けることができます。

比較検討のポイントとしては、提案内容の具体性、実現可能性、費用対効果、サポート体制、実績などを総合的に評価します。単純に料金の安さだけで判断するのではなく、自院の課題解決にどれだけ貢献できるかという観点で評価することが重要です。

契約条件の確認も慎重に行う必要があります。サービス範囲、料金体系、契約期間、解約条件、成果保証の有無、追加費用の発生条件などを詳しく確認し、後々のトラブルを避けるために書面で明確にしておきます。

特に医療業界では、候補者の個人情報の取り扱いや守秘義務について厳格な管理が求められます。サービス提供会社が適切な情報管理体制を整えているか、必要な認証や資格を取得しているかも重要な確認ポイントです。

導入後の運用ポイント

RPOサービスの継続的な改善サイクル

RPOサービスの導入後は、密なコミュニケーションが成功の鍵となります。定期的な進捗報告会を設定し、採用活動の状況、課題、改善点などを共有します。週次または月次での定期ミーティングに加えて、必要に応じて随時相談できる体制を整えることが重要です。

効果測定も継続的に行う必要があります。事前に設定した成功指標に基づいて、定期的に成果を評価し、必要に応じて戦略や手法の調整を行います。数値的な成果だけでなく、採用プロセスの改善、組織内の採用ノウハウの蓄積、採用担当者のスキル向上なども評価対象に含めます。

継続的な改善も重要な運用ポイントです。採用市場の変化、組織の成長、新たな課題の発生などに応じて、柔軟にアプローチを調整していきます。RPOサービス提供会社からの提案を積極的に取り入れ、より効果的な採用活動を追求します。

内部の採用担当者のスキル向上も忘れてはいけません。RPOサービスを単なる外注として捉えるのではなく、外部の専門知識を学ぶ機会として活用し、将来的には自立した採用活動ができる体制を構築することを目指します。

長期的な視点での関係構築も重要です。単発的な採用支援ではなく、組織の成長に合わせた継続的なパートナーシップを築くことで、より大きな成果を得ることができます。組織の変化や新たなニーズに応じて、サービス内容を柔軟に調整していくことが、長期的な成功につながります。

まとめ

医療業界における人材不足は、単なる一時的な課題ではなく、少子高齢化の進行とともにさらに深刻化していく構造的な問題です。2030年には約187万人の人材不足が予測される中、従来の採用手法だけでは限界があることは明らかです。このような状況下で、RPOサービスは医療機関にとって極めて有効な解決策となり得ます。

RPOサービスの選び方において最も重要なのは、医療業界での実績と専門性です。一般的な採用代行サービスとは異なり、医療従事者特有の価値観や転職動機、業界特有の制約や慣習を深く理解したサービスを選ぶことが成功の前提条件となります。料金体系、サポート体制、実績などを総合的に評価し、自院のニーズに最も適したパートナーを選択することが重要です。

今後の医療業界では、デジタル化の進展、働き方改革の推進、新たな医療技術の導入などにより、求められる人材像も変化していくことが予想されます。このような変化に対応するためには、外部の専門知識を活用しながら、継続的に採用戦略を進化させていくことが不可欠です。

RPOサービスの導入は、医療機関にとって単なるコスト削減手段ではなく、質の高い医療サービスを継続的に提供するための戦略的投資として位置づけるべきです。適切なパートナーとの協力により、人材不足という課題を乗り越え、持続可能な組織運営を実現していくことが、これからの医療機関に求められる重要な取り組みと言えるでしょう。

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