人員計画を事業計画と連動させる方法とは?作成ステップから運用まで徹底解説

企業が持続的な成長を遂げるためには、事業計画と連動した精緻な「人員計画」の策定と運用が不可欠です。しかし、多くの企業では「現場からの要望をそのまま積み上げただけ」「採用計画と混同している」「策定したものの運用されずに形骸化している」といった課題を抱えています。

本記事では、人員計画の基本概念から、事業計画と連動させる重要性、具体的な作成の6ステップ、そして形骸化を防ぐ運用方法(PDCAサイクル)までを詳しく解説いたします。

目次

人員計画とは?要員計画・採用計画との違いを整理する

人員計画とは、企業の事業目標を達成するために、「いつ」「どこに」「どのような人材が」「何人必要か」を算出し、人材の確保と配置を計画することです。まずは、混同されがちな「要員計画」「採用計画」との違いを整理しておきましょう。

人員計画とは?要員計画・採用計画との違いを整理する

人員計画の定義と目的

人員計画の最大の目的は、事業計画を遂行するための「適切な人材リソースの確保」と「人件費の適正化」の両立です。単に人数を合わせるだけでなく、将来の事業展開を見据えた上で、過不足のない人員配置を実現するための羅針盤となります。

要員計画・採用計画との違い

人員計画と関連する用語の違いは、以下の表のように整理できます。

項目要員計画人員計画採用計画
計画の対象人数、スキル、配置、育成など「質と量」の両面主に必要な「人数(量)」と配置採用人数、採用チャネル、採用スケジュール
対象期間中長期(1〜5年程度)単年度〜中期(1〜3年程度)単年度、あるいは半期・四半期ごと
視点・目的経営戦略に基づく中長期的な組織づくり事業計画と連動した具体的な人員配置と予算管理人員計画を満たすための具体的な採用活動の実行

要員計画が「中長期的な組織のグランドデザイン」であるのに対し、人員計画はそれをより具体的な「人数と予算」に落とし込んだものです。そして、人員計画で生じた「不足分」を補うための具体的なアクションプランが採用計画となります。

人員計画を事業計画と連動させる重要性

人員計画は、決して人事部門だけで完結するものではありません。経営企画部門や各事業部の責任者と連携し、事業計画と密接に連動させる必要があります。その理由について解説いたします。

人員計画を事業計画と連動させる重要性

人件費が経営に与える多大なインパクト

企業経営において、人件費は販売費及び一般管理費(販管費)の中で最も大きな割合を占めるコストの一つです。例えば、従業員を1名雇用した場合、給与だけでなく、法定福利費(社会保険料など)、通勤交通費、退職金引当金、さらには採用コストや教育コストなどを含めると、最低でも年間数百万円のインパクトが生じます。

特に、解雇規制が厳しい日本においては、一度雇用すると永続的にコストが発生し続けることになります。そのため、事業計画の売上目標や利益目標と連動させず、どんぶり勘定で人員計画を立ててしまうと、たちまち経営を圧迫する要因となります。

経営と現場、双方の視点を取り入れる

人員計画は、「経営層からのトップダウン」と「現場からのボトムアップ」の双方をすり合わせるプロセスでもあります。

経営層は「利益を確保するために人件費を抑えたい」と考えがちですが、現場は「目標達成のために人員を増やしてほしい」と要望します。事業計画という共通の目標をベースに、経営と現場が対話を行い、納得感のある人員計画を策定することで、組織全体のベクトルが一致します。

中長期(2〜3年)の視点で計画する

人員計画は単年度だけでなく、2〜3年先を見据えて策定することが重要です。特に新卒採用や、専門性の高いエンジニアなどの採用は、計画から入社、そして戦力化するまでに長いリードタイムを要します。事業計画のロードマップに合わせて、先行して人員を確保・育成する視点が求められます。

人員計画の作成ステップ(6ステップ)

では、具体的にどのように人員計画を作成すればよいのでしょうか。ここでは、事業計画と連動させた人員計画の作成手順を6つのステップで解説いたします。

人員計画の作成ステップ(6ステップ)

ステップ1:事業計画の策定と落とし込み

人員計画の起点となるのは、全社の事業計画です。経営陣が策定した中長期的な売上目標、利益目標、新規事業の立ち上げ計画などを人事部門がしっかりと把握します。事業計画が明確でなければ、どの部門にどれだけのリソースを投下すべきかの判断基準が定まりません。

ステップ2:現場ヒアリングと人員計画シートの作成

次に、各部門の責任者に対してヒアリングを行い、現状の課題や来期の事業目標を達成するために必要な人員の要望を吸い上げます。この際、フォーマット化された「人員計画シート」を配布し、必要な職種、スキル要件、採用希望時期、増員理由などを具体的に記載してもらいます。

ステップ3:人件費シミュレーション

現場からの要望が出揃ったら、人事部門で人件費のシミュレーションを行います。ここでは、単純な基本給だけでなく、以下の要素をすべて含めた「総額」で算出することが重要です。

•基本給および各種手当(役職手当、家族手当など)

•想定される残業代

•法定福利費(社会保険料の会社負担分)

•通勤交通費

•賞与・退職金引当金

•採用活動費・教育研修費

ステップ4:経営協議と計画修正

算出した人件費シミュレーションを事業計画(予算)と照らし合わせ、経営層と協議を行います。現場の要望をすべて受け入れると、利益目標を達成できないケースがほとんどです。そのため、「どの部門の増員を優先するか」「正社員ではなく業務委託や派遣社員で代替できないか」「ITツールの導入で業務効率化を図れないか」といった観点から、計画の修正・調整を行います。

ステップ5:経営承認と人員予算の確定

経営協議を経て、最終的な人員計画と人件費予算が確定します。この段階で、経営陣からの正式な承認を得ることで、採用活動や配置転換を実行するための予算権限が人事部門に付与されます。

ステップ6:全社展開と要員管理表の配布

確定した人員計画は、各部門の責任者にフィードバックされます。要望が通らなかった部門に対しては、その理由(経営的な判断基準)を丁寧に説明し、納得を得ることが重要です。また、各部門には、現在の在籍人数と採用予定人数、退職予定人数などを一元管理できる「要員管理表」を配布し、運用フェーズへと移行します。

必要人員数の算出方法

人員計画を策定する際、適正な人員数を算出するためのアプローチには、大きく分けて「トップダウン方式」と「ボトムアップ方式」の2つがあります。

人員計画|必要人員数の算出方法

トップダウン方式(マクロ的手法)

トップダウン方式は、企業の売上高や利益目標、許容できる人件費総額から逆算して適正人員数を割り出す手法です。

•計算式: 適正要員数 =(売上高 - 人件費以外の全経費 - 目標利益)÷ 一人あたりの平均人件費

この手法は、経営の財務的な安全性を確保できるメリットがありますが、現場の実態(業務量や個人のスキル)が反映されにくいというデメリットがあります。

ボトムアップ方式(ミクロ的手法)

ボトムアップ方式は、現場の業務量や必要な作業時間から積み上げて適正人員数を割り出す手法です。

•計算式: 適正要員数 = 部門の総労働時間 ÷ 一人あたりの標準労働時間

この手法は、現場の実態に即した人員配置が可能になりますが、各部門の要望をそのまま積み上げると、人件費予算を大幅にオーバーしてしまうリスクがあります。

2つを組み合わせた実践的アプローチ

実際の運用では、どちらか一方の手法に偏るのではなく、両方を組み合わせることが推奨されます。まずはトップダウン方式で「経営として許容できる人件費の上限(枠)」を設定し、その枠の中で、ボトムアップ方式で吸い上げた現場の要望に優先順位をつけて人員を割り当てていくのが現実的なアプローチです。

人員計画のPDCAを回す運用方法

人員計画は、「作って終わり」ではありません。事業環境の変化や、想定外の退職、採用の遅れなどに柔軟に対応するため、継続的にPDCAサイクルを回して運用することが重要です。

予実管理の頻度と方法

人員計画と実績のズレ(予実管理)は、理想的には毎月、少なくとも四半期に1度は確認する必要があります。

•Plan(計画): 期初に策定した人員計画と人件費予算

•Do(実行): 採用活動の実施、配置転換、退職者の発生

•Check(評価): 計画人数と実際の在籍人数の差異、人件費予算の消化状況の確認

•Action(改善): 採用計画の見直し、業務の効率化、人員の再配置

要員管理表の活用

予実管理を効率的に行うためには、「要員管理表」の活用が不可欠です。要員管理表には、部門ごとに「期初の計画人数」「現在の在籍人数」「入社予定人数」「退職予定人数」「過不足数」を可視化します。これにより、どの部門で欠員が生じているのか、採用活動を急ぐべきポジションはどこか、が一目で把握できるようになります。

乖離が大きい場合の対応

事業計画の大幅な変更や、大量の退職者が発生した場合など、期初の人員計画と実績に大きな乖離が生じた場合は、半期に1度のタイミングなどで「修正計画(修正予算)」の策定を検討します。現場の疲弊(残業の増加など)を放置せず、機動的に計画を見直す柔軟性が求められます。

人員計画を失敗させない5つの注意点

最後に、人員計画を策定・運用する上で陥りがちな失敗を防ぐための5つの注意点をお伝えいたします。

1. 近視眼的にならない(中長期視点)

目の前の欠員補充ばかりに気を取られると、組織の年齢構成がいびつになったり、将来の幹部候補が育たなくなったりします。常に事業計画と連動させ、2〜3年先を見据えた中長期的な視点を持つことが重要です。

2. 現場の声を反映させる

経営層の意向だけで人員計画を押し付けると、現場のモチベーション低下や、業務過多による離職を招きます。ヒアリングを通じて現場の課題を正確に把握し、双方が納得できる着地点を見出す対話のプロセスを重視してください。

3. 退職・休職リスクを織り込む

計画通りに人員が推移することは稀です。過去の離職率データなどを参考に、一定数の退職者や産休・育休・私傷病による休職者が発生することをあらかじめリスクとして織り込んでおく必要があります。

4. 採用計画と連携する

人員計画で「〇月に〇名増員」と定めても、採用市場の動向を無視した非現実的な計画であれば実現できません。採用難易度やリードタイムを考慮し、採用担当者と密に連携しながら、実現可能な計画を立てることが求められます。

5. 柔軟性を持ちつつ安易に変更しない

事業環境の変化には柔軟に対応すべきですが、現場からの「人が足りない」という場当たり的な要望に流されて安易に計画を変更すると、人件費が高騰してしまいます。増員が必要な場合は、本当に業務効率化の余地がないのか、外部リソースを活用できないのかを厳しく精査する姿勢が必要です。

まとめ

人員計画は、単なる「人数合わせ」の作業ではなく、事業計画を実現するための「戦略的なリソース配分」です。経営と現場のハブとなり、中長期的な視点で適正な人員配置と人件費のコントロールを行うことは、人事部門に求められる極めて重要な役割です。

本記事でご紹介した6つの作成ステップや、PDCAを回す運用方法を参考に、ぜひ自社の人員計画の策定・見直しに取り組んでみてください。精緻な人員計画が、企業の持続的な成長を支える強固な基盤となるはずです。

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